感染症とは限らない発熱の原因
症状がある場合は医療機関の受診を
クリニックプラス高円寺
(杉並区/高円寺駅)
最終更新日:2023/06/08
- 保険診療
風邪をひいてしまい熱が出たという経験は、誰でもしたことがあるだろう。そして、「発熱の原因は感染症だけに限らず、特に1〜2週間以上続く場合は疾患によっては命に関わることもありますので、医療機関を受診することをお勧めします」と話すのが「クリニックプラス高円寺」の城川泰司郎院長だ。実際に、発熱の原因は新型コロナウイルスをはじめとする感染症のほかにも、膠原病やがん、薬剤性のものなどがあり、その鑑別をした上で適切に対処することが重要になってくると言う。そこで、総合内科に加え、発熱と強く関係する感染症や膠原病などにも専門的な知識を持つ城川院長に、発熱の原因やその対処法などについて、詳しく教えてもらった。
(取材日2023年5月16日)
目次
発熱の診療は、問診で病歴を確認し、原因をしっかりと突き止めることが大切
- Q発熱があった際の医療機関の受診について教えてください。
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A
新型コロナウイルス感染症が流行して以降、発熱があった時には発熱者専用の外来を行っている医療機関に事前に連絡をしてから受診するのが基本的な流れとなっていました。しかし、新型コロナウイルス感染症が5類感染症になったことに伴い、まだ準備が整っていないところもあるかもしれませんが、どの医療機関でも診察が受けられるように変わってきています。また、5類になったことで、これまで公費で受けられていたPCR検査なども1~3割負担となりました。当院は、発熱患者さんも事前連絡なしでいつでも受診していただけますし、抗原検査やPCR検査も行える体制を整えています。
- Q発熱の原因としては、どのようなものが考えられますか?
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A
発熱の原因は、感染症や膠原病、悪性腫瘍、薬剤性、原因不明など大きく5つに分けられます。感染症であれば、発熱に加えて咳や痰、喉の痛み、くしゃみなどがあれば上気道炎の可能性が高くなります。また、上気道症状がないのに発熱および皮疹などが出現する場合では、例えば海外渡航歴がある場合には、デング熱、マラリアや腸チフスなど、渡航関連感染症の可能性を想起します。また、急性HIV感染症や最近増えている梅毒などの性感染症も発熱を伴う場合があります。さらに悪寒戦慄という自分で止めることができないような震えがある場合などは菌血症が想起され、命に関わることもありますので必ず受診していただきたいと思います。
- Q膠原病による発熱についても教えてください。
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A
膠原病でも発熱を伴うものは少なくありません。つまり、高齢者では巨細胞性動脈炎などの血管炎、若年層では発熱、咽頭痛、関節痛、皮疹が続く成人スティル病や発熱、口内炎、関節痛、皮膚症状、蛋白尿など体のさまざまな部位に症状が出る全身性エリテマトーデス(SLE)などさまざまなものがあります。膠原病は決して珍しい病気ではありませんが、適切な治療を受けられないとADL低下や命に関わることもありますので、長期間にわたる発熱などの場合には膠原病の知識がある医師の診察を受けることが大切です。
- Q先生は、感染症や膠原病について専門的に学んできたそうですね。
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A
まずは総合内科、感染症について専門的に学びました。発熱の診察では感染症や膠原病など、その原因をしっかりと突き止めることが重要です。検査は当然大切ですが、まずは病歴などをしっかりと確認して、そこから何の病気が疑わしいのかを見極めて追求する「問診力」を疎かにせずにトレーニングを積んできました。また、最近では耐性菌の問題もあり、例えば風邪に抗菌薬(抗生物質)は不要なように、抗菌薬の適正使用についていわれています。当院では本当に必要な時に適切な抗菌薬しか使用しないようにしています。
- Q発熱の際に気をつけたほうが良いことはありますか?
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A
発熱がある時に、盲目的に抗菌薬を処方されるケースが散見されます。感冒症状がないにもかかわらず、1〜2週間以上続く発熱の場合は、血液中に菌が入ってしまう菌血症などの可能性があり、血液培養検査を行う必要性もあります。ですが、症状が持続しているにもかかわらず抗菌薬を継続し、病状が悪化してから大きな病院を受診することが少なくありません。私は勤務医時代に、発熱が続いていたものの適切な精査加療が受けられず感染性心内膜炎になって脳内出血を起こした方や、繰り返す尿路感染症と誤診され、感染性大動脈瘤に至っていた方など診てきました。熱が続くときなどは発熱の原因をしっかり診てくれる医師を受診することをお勧めします。