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大藤 佳子 院長の独自取材記事

ゆりかごファミリークリニック

(新居浜市/新居浜駅)

最終更新日:2023/12/06

大藤佳子院長 ゆりかごファミリークリニック main

2023年1月に新居浜市東田1丁目に正式開業となった「ゆりかごファミリークリニック」。同院では通常の小児科外来診療に加えて、大藤佳子院長の先導のもと、東予・新居浜に暮らすさまざまな障害や病気を抱えた子どもたちの診療・サポートにも重きを置いている。専門の機関や施設が極めて少なく、これまで小児医療や障害児支援の分野において大きな課題を抱えていた東予地域。「今回の開院で少しでも多くの子どもたちやご家族の生活を支援できたら」と大藤院長は語る。医療と福祉、2つの側面から地域の課題解決に挑もうとする大藤院長に、さまざまな話を聞かせてもらった。

(取材日2023年4月13日)

多彩な診療内容で障害のある子どもとその家族を支援

今年の1月に開院したばかりだと伺っています。

大藤佳子院長 ゆりかごファミリークリニック1

2022年4月から仮施設での診療を先行して行っていたのですが、2023年1月に現在の場所へと移転し、正式にクリニックとして開院することができました。当院のコンセプトとして、大きな「ゆりかご」に乗っているように、子どもから大人までどんな方も安心して日々を過ごすお手伝いをする場所になる、という目標を掲げています。大きな問題もなく成長していく子どもたちはもちろん、たとえ病気や障害があっても、住み慣れた街でいつも通りの生活をしたいという患者さんの希望をかなえていくのが、当院の使命だと思っていますね。

先生が医師を志した理由や、これまでの経歴について教えていただけますか。

医師の道をめざし始めたのは高校生の頃です。もともと母が小学校の教員をしていた影響もあり、子どもに関わる仕事をしたいと思うようになりました。中でも特別支援を必要とする障害のある子どもたちの支援に携わりたいと考え、教育や福祉の道も候補にする中で、母や先生に「病気を治す道はどう?」と助言をもらったことも、小児科医の道を選んだきっかけでしょうか。生まれも育ちも松山市だったので、愛媛大学の医学部を卒業後は、県内あちこちの市や町で大規模病院を中心に勤務して研鑽を積ませていただきました。愛南町にある南宇和病院の移転開院時に小児科医として立ち上げに加わったり、愛媛大学の大学病院に勤務していた際には小児骨髄移植に関わらせていただいたりした後、縁あって新居浜市で今回の開業に至った次第です。

こちらではどのような治療・診療分野に力を入れているのでしょうか。

大藤佳子院長 ゆりかごファミリークリニック2

通常の小児科外来診療はもちろんですが、さまざまな障害がある支援の必要な子どもたちを、母親や周囲の人も含めてサポートすることに最も注力しています。大きな病気や重篤な障害で通院の難しい子どもたちをサポートする訪問診療・訪問看護や、日中もしくは宿泊を伴う形で医療的ケアを行う医療型短期入所といった、医療と福祉2つの面から患者さんやそのご家族を支援している点が他の小児科との大きな違いでしょうか。小児科外来は、加藤先生にも担当してもらっています。待合室にある鉄道のジオラマは、実は加藤先生の手作りなんですよ。加えて、当院では育児に奮闘するお母さんたちを支える産後ケアにも力を入れています。誰よりも子どもたちと接する時間の多いお母さんの心身の健康を守ることが、ひいては子どもたちの心身の健康を守ることにもつながりますからね。

行き届かない障害児へのケア、地域医療の大きな課題

新居浜という土地の地域医療・小児医療についての考えをお聞かせください。

大藤佳子院長 ゆりかごファミリークリニック3

この新居浜市には、小児科のクリニックが現在当院を含め2ヵ所。大規模病院はもちろんありますが、患者さんにとってより身近に頼れて、かつ何かあった際気軽に駆け込めるクリニックの存在はやはり地域に必要です。また、心身障害のあるお子さんのケアを行う短期入所のできる場所に関しては、東予地域は大きな課題を抱えていました。そういったケアを必要とする方々は、かなり離れた中予まで足を運ぶか、あるいはケアを受けられない状況だったんです。その状態が子どもたちはもちろん、生活を支えるお母さんやご家族にも大きな負担のかかる環境でした。地域医療の課題解決の一歩となるよう、引き続き当院が尽力していきたいですね。

障害のある子どもたちへの支援として、特に重視しているのはどのような点なのでしょう。

「どんな子どもも当たり前の生活を送れるための支援」が当院の注力するポイントです。それをかなえるための柔軟な選択肢として、医療型短期入所や訪問看護といった複数の取り組みを行っているんです。短期入所の予定が「体調を崩したため外出できない」となれば訪問看護に切り替えますし、短期入所の際も普段訪問診療を利用されていて、生活や家庭環境をよく知る患者さんを預かるケースが多いです。状況に応じ臨機応変な対応が可能で、かつ、どちらの場合も患者さんの見知ったスタッフが対応するので、患者さんの心的負担を減らせる点も大きいですね。さらにお子さんのみならずお母さんにも心身のケアが必要な際に、当院でサポートができるよう産後ケアも開設しました。最後には必ず子どもたちがお家へ帰り、当たり前の生活ができるように。その支援が、私たちの役目だと感じています。

患者および周囲の人々への包括的支援には、各所や多くのスタッフとの連携も重要かと思うのですが。

大藤佳子院長 ゆりかごファミリークリニック4

行政や専門機関との連携のみならず、当院の場合はより身近なスタッフ同士、あるいは近隣施設とのつながりも大切にしています。一例を挙げると、医院に近接する調剤薬局の薬剤師さんとの密な連携や、また近隣の介護施設とも協力し、お子さんのみならず高齢者介護を必要とするご家族の生活を支援するケースも想定しています。重ねて当院自体もさまざまな取り組みを行う分、部署も多く、30人近くのスタッフを抱える大所帯となります。そのため、スタッフ一人ひとりにパソコンを1台ずつ支給し、業務に必要な情報検索・確認やスタッフ間のやりとりを円滑に行える環境を整えています。まだ試行錯誤の段階ではありますが、業務効率化のための便利なツールやシステムも積極的に取り入れていきたいですね。

新型コロナウイルス感染症流行下での、子育ての支えに

患者さんと接する際に意識されていることなどはありますか。

大藤佳子院長 ゆりかごファミリークリニック5

当院だけでなく地域全体で協力して患者さんを支えることや、お子さんだけでなくお母さんやご家族の様子も気にかけるなど、広い視点を持って患者さんにできることを考えるようにしています。特に私自身が3人の子育てを経験した母であることもあって、病気や障害のあるお母さんの心身のサポートは非常に大事であるとも感じていますね。今子育てをされているお母さんの多くは、新型コロナウイルス感染症の流行による生活環境の変化で同じように子育てをする他のお母さんとの接点が非常に少なくなっています。そのため自分の子育てが正しいのか、自分の子どもがきちんと成長しているのか不安に感じる方も多いことでしょう。日々の生活や子育ての中で生まれる小さな不安や悩みを、お母さんたちが気軽に立ち寄って相談できる、そんな場所に当院がなれたら、とも思っています。

多忙な日々かと思いますが、先生のご趣味やプライベートについてもお聞かせください。

趣味として長年楽器を続けています。高校の頃に吹奏楽部、大学ではオーケストラに所属していたこともあり、当時からフルートを吹き続けていますね。現在も休日は知人とユニットを組んでミニコンサートを開いたり、機会があれば慰労会のような形で患者さんの前で披露させていただくこともありますよ。フルートは大仰な公演やコンサートでなくてもちょっとした機会に手軽に吹いて見せることができますし、生の楽器演奏を見る機会は子どもたちにとってもすごくいい体験になりますから。いろいろなタイミングがあればぜひ、多くの子どもたちにそういった機会をつくっていってあげたいですね。

最後に、今後の抱負や読者の方へのメッセージをお願いします。

大藤佳子院長 ゆりかごファミリークリニック6

まだ開院して日も浅いので、まずはこの東予・新居浜市に当院のような、障害がある子どもたちへの診療・生活サポートを手厚く行える場所ができたことをより大勢の方に知っていただければと思います。これまでは頼れる施設や機関が遠く、大変な思いをしながらお子さんのお世話をしていた方もおそらくいらっしゃることでしょう。そういった方々の手助けをすることで、少しでも負担の少ない普通の暮らしを送ることのできるご家族を増やしていけたらと思います。子育てや日常の中の些細なお困り事から障害や病気のケア、リハビリテーションといった専門的な相談事まで、ぜひ気軽に私たちの事を頼っていただければうれしいです。

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