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独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO) 東京山手メディカルセンター 副院長 高添 正和先生

こちらの記事の監修医師
独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO) 東京山手メディカルセンター
副院長 高添 正和先生

くろーんびょうクローン病

概要

潰瘍性大腸炎の一種であり、医療費助成の申請が可能な厚生労働省指定の特定疾患。免疫異常が関与して生じるが、根本原因発見、根治療法確立は成されていません。病態としては、主に小腸末端や大腸に慢性的な炎症や潰瘍が発現し、口腔から肛門まで広く症状が出ることも。症状が強い活動期と、落ち着く寛解期をゆっくり反復するという特徴を有しており、治療ではいかに早く寛解期に導き、活動期に入るのを防ぐかに焦点が当てられます。また医学の世界においてクローン病は、同じく免疫異常が生じる膠原病と類比され、膠原病も属する慢性炎症性疾患に位置づけられています。さらに、クローン病は発症年齢が若く、男性は20~24歳、女性は15~19歳がおおよそ発症のピーク。人生設計に大きく関わる時期に罹患することは、社会・経済的な困難につながり得るのです。

原因

最近になって、遺伝子的素因に食事成分・腸内細菌などの環境因子が重なり、リンパ球などの免疫担当細胞の反応に異常が生じることでクローン病が発症するのではないか、と考えられるようになりましたが、現状、その根本原因は明らかではありません。ただし、遺伝的素因という点と関連して、血縁者にクローン病患者がいる場合は、いない場合よりも発症しやすいことはわかっています。また、もともと欧米先進国に罹患者が多く見られ、遅れて日本でも増加していることから、この疾患は、食生活の欧米化に代表される環境の変化に体が追いつかずに生じるミスマッチ症候群の一種なのではないか、という生物学的進化論の観点からの示唆も存在します。そのほか、欧米では10~20%程度のクローン病患者にNOD2という遺伝子異常が見つかっているが、日本人の発症に、この異常との関わりは認められていません。

症状

代表的な自覚症状は、半数以上の患者に現れる腹痛と下痢。発熱、下血、腹部のしこり、体重減少、全身倦怠感、貧血などもよく見られ、こういった症状が若年者に数日~数週間続くときはクローン病の可能性があります。自覚症状は自然に治まる場合があるが、クローン病であれば何度も再発を繰り返し、まるでカタツムリが歩むようにゆっくりと悪化。重症化すると腸閉塞や、腸せん孔、さらには大出血を来すこともあり、生物製剤や免疫調整剤などを用いても病態が改善しない、もしくは術後に再手術となるケースも珍しくありません。またクローン病に伴って肛門にも病変が現れることがあり、病変部が悪化すると、治りにくい痔ろうが生じることも。また消化器症状以外に、関節炎、虹彩炎、結節性紅斑などの合併症が出る場合があるので注意が必要となります。

検査・診断

持続的な腹痛・下痢の訴えがある場合、クローン病をはじめとする炎症性腸疾患が疑われるため、便検査で出血の有無を確認。その後、便培養検査を行い、次に血液検査と内視鏡検査を実施します。血液検査では貧血や炎症状態の有無と併せて、炎症による栄養の消耗がないか、タンパク質・ビタミンB12などの状態を含めて評価し、内視鏡検査では、胃、小腸、大腸など消化管の状態を精査。上記各検査の結果を受け、さらに、エックス線造影検査やCT検査、MRI検査などを行います。画像診断の結果、好発部位である小腸末端・大腸などに、深い縦長の潰瘍や、腸粘膜がぼこぼこと隆起して石を敷き詰めたような状態、といった特徴的な所見が見つかればクローン病と診断されるのです。こうした特徴がない場合は、内視鏡検査時に採取した組織の病理検査を行うことも。ただし、クローン病とよく似た腸病変を示す疾患もいくつかあるため、確定診断に時間を要することがあります。

治療

クローン病を根治させる方法は現状ありません。そのため炎症、潰瘍が頻発する活動期を、なるべく早く、症状が比較的落ち着く寛解へと導き、寛解期に入ったら、状態を持続しつつ活動期に戻るのを防ぐ、というのが一般的な治療方針となります。手法は大きく、薬物療法・栄養管理・外科手術の3種。活動期には、普通食を絶食し、経腸栄養や静脈栄養で腸を休ませる栄養管理や、5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、生物学的製剤などを用いた薬物療法で炎症を抑えていきます。それでも症状を抑制できない場合、免疫細胞である白血球中の顆粒球を減らすために、血球成分除去療法という治療法が選択肢に挙がることも。また、内科的治療では改善が難しいレベルの、腸閉塞、腸管狭窄、腸せん孔、腸ろう孔といった異常が生じたときは外科手術を行い、病変部の腸管を切除するなどして対応するほか、狭窄部を内視鏡バルーンで広げる外科的処置が取られることもあります。そして寛解期には、5-アミノサリチル酸製剤、免疫調節薬、生物学的製剤を用いた薬物療法や栄養管理で寛解状態維持をめざしていきます。また治療中は、適宜、血液・血球検査を実施し、CRP(C反応性蛋白)の値から、治療への反応と改善度を評価します。

予防/治療後の注意

クローン病発症の予防手段も現状では存在しません。しかし、症状の再発や悪化には喫煙や動物性脂肪が関係すること、クローン病に伴う腸管狭窄がある場合、食物繊維の多い食事が消化管に負担をかけることはわかってきました。そのため、クローン病患者には低脂肪食を取ることが推奨されています。「生体外物質トランスポーターMDR1」と呼ばれるタンパク質の一種が持つ、胆汁酸が引き起こす腸管炎症を抑制する働きの補助が目的です。また腸管狭窄があるなら、食物繊維の少ない低残渣食を勧められます。他方、クローン病の活動期には、下痢や腹痛で食事が取れなくなってしまう場合も。そういった事態に備え、医師と相談の上、自分に合った栄養管理の方法を見つけておくことが大切です。

独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO) 東京山手メディカルセンター 副院長 高添 正和先生

こちらの記事の監修医師

独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO) 東京山手メディカルセンター

副院長 高添 正和先生

1977年大阪医科大学卒業後、国立病院医療センター(現・国立国際医療研究センター)へ入職。1982年より社会保険中央総合病院(現・東京山手メディカルセンター)に勤務し、1998年に内科部長を、2006年からは炎症性腸疾患センター長を務めた。2008年、副院長に就任し現在に至る。専門分野は在宅栄養療法、クローン病の診断・治療。