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井上 統夫 院長の独自取材記事

井上産婦人科クリニック

(北九州市八幡西区/黒崎駅)

最終更新日:2023/12/12

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック main

黒崎駅から徒歩5分の場所に位置する「井上産婦人科クリニック」。主要道路である国道3号線からのアクセスも良好だ。長きにわたり、長崎や北九州の病院で勤務してきた井上統夫(いのうえ・つねお)院長。婦人科系の内分泌を専門としており、数多の患者を診てきた産婦人科のスペシャリストだ。2022年7月に父から同院を継承し、気持ちを新たに、これまで行ってこなかった診療もしていくとのこと。「産婦人科は行きづらいという患者さんのイメージを払拭し、もっと気軽に足を運べるクリニックをめざしたいですね」と優しい笑顔で話す井上院長。月経困難症や月経不順などの悩みや更年期障害、不育症さらには性同一性障害の相談にも対応し、その守備範囲は広い。終始穏やかな口調で話す井上院長に、これまでの経緯や同院の診療内容について聞いた。

(取材日2023年9月4日)

年々減少していく産婦人科を守りたい

まずはクリニックの歴史を教えてください。

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック1

1941年に祖父が開業して以来、場所を少しずつ変えながらこれまで続いているクリニックです。最初は八幡西区藤田で開業し、戦争で建物がなくなった後は八幡西区田町で再度開業。数年後に現在のこの場所に移り、落ち着いています。1950年からこの場所で診療を続けていますから、もう70年以上になりますね。昔からこの地域にあるせいか、当クリニックは親子代々通われている患者さんも多いんですよ。最近は、10代や20代の若年層の患者さんも増えてきて、月経困難症やPMS(月経前症候群)で悩んでいる人が多いですね。約10年前まではお産もやっていたのですが、父が高齢になったタイミングでやめました。今でもクリニック内には、お産をやっていた名残があるんですよね。私が院長になってからもお産を扱う予定はありません。お産以外の診療に力を入れて、女性の健康をサポートしていきたいんです。

お父さまからクリニックを引き継ごうと思われた理由は何だったのでしょう。

一番の理由は、地域住民のために産婦人科を続けたいと思ったからです。父は高齢ですので、この先もずっと続けるわけにいきません。近年、産婦人科医になる人が減っているため、既存の病院やクリニックの後継者もいなくなっています。それが原因で廃業するところが増えてきているんです。そんな中、せっかく祖父の代から築き上げたクリニックをなくすわけにいかないと思いました。私が子どもの頃は黒崎地区にも産婦人科は10軒くらいはあった記憶ですが、今は大幅に減っています。女性が体調の面で困って受診したり、妊婦健診を受けたりしたいのに、その受け皿がなくなると困りますよね。当クリニックは地域密着型なので、地元の人たちのためにも受け継いでいく決断をしました。また、妊婦健診に関しては、里帰り分娩や公立の大きな病院などで分娩を希望する妊婦さんのみ受けつけるという父の方針を引き継いでいます。

産婦人科そのものが減りつつあるのですね。

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック2

そうなんです。もともと産婦人科医は過酷な勤務になりがちなので、なり手が少なかったんですね。24時間365日、妊婦さんを受け入れる体制を整えておかなければなりません。産婦人科は基本的に休む暇がないんです。それに加えて少子化が進み、この北九州でも年々子どもの数が減っています。新しく産婦人科を開業する人もほとんどいなければ、既存の病院の後継者すら探すのが困難な状況です。なので、黒崎地区では特に数少ない産婦人科である当クリニックは残しておくべきだと感じています。そして、時代に合った診療に移行するために分娩は取り入れず、月経不順、月経困難症やPMS(月経前症候群)、更年期障害の治療、あとは不育症・不妊症や性同一性障害の相談にも力を入れていこうと思っています。

まずは窓口として、行き場に迷う患者と接点を持ちたい

なぜ性同一性障害に力を入れようと?

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック3

北九州市では、性同一性障害の診療を行っている医療機関が少ないからです。昔に比べ、今は「性の多様化」が進んできています。しかし実際に医師に診てもらいたくても患者さんはどこに行けばいいかわからないことがほとんどで、路頭に迷っている患者さんも多いのではないかと思います。なので、当クリニックで相談を受けつけていることを大々的にお伝えしたいですね。性同一性障害の人は一定数いると思うので、一人で悩まず気軽に訪ねてきてほしいです。

性同一性障害に産婦人科で対応してもらえるという認識がありませんでした。

性同一性障害とは、自分の産まれ持った「体の性」と、自分自身が自分の性をどう感じているかという「心の性」が一致しない状態のことをいい、その診療には、精神科、形成外科、泌尿器科、産婦人科の各医師、このほか必要に応じて内分泌を専門とする医師、小児科など各領域の医師が関わります。診断が下って、かつ性別違和の持続をはじめとするいくつかの条件を満たした場合、乳房切除、性別適合手術といった身体的治療に移行する流れです。ですが、まずは最初の診断を精神科でしてもらう必要があり、診断書がないとどこの医療機関でも治療できません。なぜなら、むやみやたらに治療するのは倫理的に問題があるからです。先に挙げた身体的治療は「性同一性障害」という診断があるからこそ許される医療行為だということをまず知っておいてください。

そういったことを知らない当事者の方も多いのでしょうね。

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック4

そうですね。ですので、そういった診断や治療の流れについてもわかりやすく説明させていただきます。精神科での診断書がなくてもまずご相談に来ていただいても構いません。その際、私が知っている北九州市内の医療機関をご紹介します。私は以前、長崎大学で10年ほど性同一性障害の研究をしてきました。精神科とも連携を取りながら数々の症例を見てきましたし、勤務していた北九州市立八幡病院でも、性同一性障害の患者さんをたくさん診療してきました。これまでの経験から、一定の人数を診てきて、いろんな症状がわかりますから、まずは相談に来ていただければと思います。

月経のトラブルは我慢せずに病院を受診してほしい

月経困難症で受診される患者さんは多いのでしょうか。

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック5

私が院長になってから、最近は10代や20代の若年層の患者さんが増えてきました。特に20代の患者さんの中に、月経困難症を訴える方が多いですね。生理痛は月経の時の痛みのことを指しますが、月経困難症はそれにより日常生活に支障が出る「病気」として捉えます。痛みの程度は、あくまでも主観で構いません。痛みが気にならないのであれば大丈夫ですが、ご本人が不快と感じれば月経困難症の可能性があります。また、月経困難症の原因の一つに「子宮内膜症」も挙げられます。万が一、子宮内膜症を持っていてそのまま放置すると、将来不妊症になる危険性もありますので、月経時に不快感がある人は一度受診してみたほうがいいかもしれません。

PMS(月経前症候群)とはどういったものなのでしょうか。

PMS(月経前症候群)は、月経前1週間くらいから頭痛がしたり気分が憂うつになったりなどの症状が出だして、月経が始まると治まるのが一般的なパターンですね。人によって身体的不調や精神的不調はさまざまなのですが、我慢できないほどひどいのに耐えている方がいらっしゃいます。中にはPMDD(月経前不快気分障害)といって、PMSよりももっと重い症状になり、それにより人間関係が悪化してしまう人もいるんですね。月経困難症もPMS(月経前症候群)も、何らかの症状が出た時に市販薬を飲んで、ご自身で対処できる場合もあると思いますが、まれに違う病気が潜んでいることもあるため、気になる症状がある方はぜひ当クリニックに来てみてください。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック6

女性の一生の健康サポートに貢献したいと考えています。どんな小さなことでもいいので、気軽に当クリニックを訪ねてきてほしいと思います。赤ちゃんからお年寄りまで、年代問わず診療しますので、小さな不調を見逃さないでくださいね。月経困難症については、低用量ピルなどの薬で症状の改善を図ることもできます。まれに副作用が起こることもありますが、ひどい症状の人については服用を検討してみてもいいかもしれません。月経のつらさを少しでも緩和したいと思われている人は、ぜひ一度ご相談ください。それ以外のことでも、女性の健康に関するお悩みはなんでも受けつけていますので、いつでも訪ねてほしいです。

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