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大西 勝也 院長の独自取材記事

大西内科ハートクリニック

(津市/南が丘駅)

最終更新日:2023/10/05

大西勝也院長 大西内科ハートクリニック main

2009年7月に南が丘駅から徒歩5分の場所に開業した「大西内科ハートクリニック」。院長の大西勝也先生は、日本循環器学会循環器専門医としてこれまで数々の診療に携わり、書籍も執筆する循環器疾患の専門家。近隣住民だけでなく、鈴鹿市や志摩市など遠方からも患者が訪れる同院では「高度な医療をカジュアルに提供する」をモットーとしており、短時間で結果が出るような先進の検査機器を導入し、診療に生かしている。診療科目の一つである乳腺外科は、三重大学医学部附属病院乳腺外科に所属する女性医師が担当。大学病院などで導入されているような超音波検査機による検査を受けることも可能だ。医療格差のない未来をつくりたいと笑顔で語る大西院長に、心不全に関することやめざす医療の姿について話を聞いた。

(取材日2020年9月17日)

病院から遠のきがちな40~50代の女性を救いたい

開業された経緯をお聞かせください。

大西勝也院長 大西内科ハートクリニック1

1970年代から父親が隣地で開院していた「大西内科」を継承開業したという経緯です。もともと父はずっとこのエリアで、循環器疾患の方が多く通う医院を営んでおり、父が体調を崩したことをきっかけに私が継承開業しました。当時私は、三重大学医学部附属病院で循環器内科を専門とする大学院生たちの教育を行っており、勤務を継続しようと考えていました。しかし父の医院を少し手伝うようになってからは、こちらが地元ということもあって知り合いの母親や友人が来院してくれたり、町の人に温かい声をかけられたりしているうちに離れにくくなってしまったのです。父の医院がなくなってしまったら、この患者さんたちはどうなってしまうのだろうと考え、継承開業に踏み切りました。

循環器を専門にしようと思ったきっかけを教えてください。

最初は、循環器科はがんの患者さんが少なく、亡くなる方が少ないと思って選びました。しかし、いざ循環器の道に進むと、病状が進行するまで心不全に気づかず亡くなる方が多いと気づかされたのです。そしてまだ私が三重大学医学部附属病院で研修をしていた頃に、2人の息子を拡張型心筋症で亡くした母親が、今まで聞いたことのない嗚咽を上げて泣いていた姿を見たのです。その時こういう苦しんでいる方たちを救いたいという想いが強くなり、心不全を突き詰めていこうと決めました。

どんな患者さんが多いのでしょうか?

大西勝也院長 大西内科ハートクリニック2

糖尿病も含めると、当院を訪れる患者さんの9割が循環器疾患の方です。その3分の1が高齢者で、あと3分の1が40~50代の女性、残りがその他の年齢層といった具合になっています。実は当院は、病院から遠のきがちな40~50代の女性をターゲットにしているのです。なぜこの世代に病院に来てほしいかというと、健康診断を受けずにあまり病院にも行かない方が多い年齢層だからです。やはり開業してからも、胸の痛みを訴えて来院された方が乳がんだったという症例がたくさんありました。そのため、私は乳腺外科の診療もスタートして解像度の高いエコーを導入し、三重大学の女性医師に検査をしてもらえる環境を整えました。また女性が来院しやすいようにと、乳腺外科の患者さんは女性スタッフとしか接触せず、外観も洋風のかわいらしい雰囲気にし、待合室やトイレも明るくしています。

患者の生活の質を落とさない、正しい医療を

患者さんと接する際に気をつけていることを教えてください。

大西勝也院長 大西内科ハートクリニック3

一人ひとりの声をきちんと聞き、検査結果に頼り過ぎないことです。よく患者さんで「痛みがあるけど、検査しても何もないと診断された」という方が来院されます。しかし私は、患者さんが困っていること自体が“病気”だと思います。それに少なくとも痛みという症状があるということは、何か原因があるはずなのです。ですので、検査の結果で何も見つからなくとも、患者さんの声に耳を傾け一人ひとりと向き合います。それが結果、病気の早期発見につながりますし、患者さんを安心させてあげることもできます。「心臓が悪いかも……」と思っている方の表情はとても不安そうで、私はそういう方に手を差し伸べたいと考えています。

医師としてどんな医療を行っていきたいですか?

正しい医療です。「患者さんにとって不要な治療や検査を行わず、精度にこだわった検査で悩みの原因を突き止め、その方が受けるべき治療を行う」それがわれわれ医師が行うべき正しい医療だと考えています。そのために患者さんをしっかり診て、生活指導も行っていきます。そうすることで、心不全の患者さんが普通の日常を取り戻し、生活の質を落とさずにいられると考えています。私は病気が原因で旅行に行けないとか、スポーツができないというふうにしたくないのです。患者さんが健康な方と同じように暮らせるような医療を行っていきたいです。

患者さんの印象深いエピソードをお聞かせください。

大西勝也院長 大西内科ハートクリニック4

ちょうど受診されたタイミングで心筋梗塞になり心臓が止まった患者さんがいて、すぐさま蘇生を行いました。命の危険にさらされた方が、もとの日常に戻れるように医療を提供する。そのダイナミックさが循環器系の魅力であり、やりがいを感じます。また拡張型心筋症を患っていたため仕事もできなくなり、心がささくれ立っていた男性がだんだんと日常生活を取り戻されていったこともありました。その患者さんとお母さまからお礼の言葉をいただき、仕事もできるようになり温和な性格になったのも印象的でした。

心不全を早期発見できる医療格差のない未来を

クリニックでの診療の傍ら、心不全に関する講演も行っているそうですね。

大西勝也院長 大西内科ハートクリニック5

医師や薬剤師、看護師の方たちに向け心不全に関する講演を行っています。主になぜ心臓は悪くなるのかや、心機能について話しています。今はオンラインでの講演のため、昼間に1回、夜にもう1回行っても時間的に余裕がありますが、以前は夜中にタクシーで地方から寝ながら帰ってきて、次の日は当院で働くなんてこともありましたよ(笑)。私は大学病院の先生や循環器医療機関の先生方に混じって、日本で採用されている心不全のガイドラインの作成にも2009年から携わっています。そのため、私が持つ心不全に関する正しい知識を、多くの医師や医療関係者に伝えたいと考えているのです。

今後の展望をお聞かせください。

現在、私は開業医たちと循環器の勉強をする団体を立ち上げており、心不全に関する知識を共有できる環境を整えている最中です。今後10年くらいは正しい知識や情報を広め、医療格差をなくすために尽力していきたいと考えています。「神の手に巡り合えたから病気が治った」ということを耳にすることがありますが、それだと“神の手”に巡り合えなかったら不利益を被ってしまうことになるのでしょうか。医師たちがみんなスキルアップし、どこの医療機関に行っても同じレベルの高度な医療が受けられるようになれば、結果として心不全に苦しむ患者さんの減少につながるのではないでしょうか。私はそのために本も書いていますが、読むのが苦手な方のために動画配信サイトでも配信しています。

読者へのメッセージをお願いします。

大西勝也院長 大西内科ハートクリニック6

まず一番に伝えたいことは、動悸や息切れ、胸の苦しさを感じたら年齢や疲れのせいにせずに、医療機関に相談してほしいということです。特に女性には、特有の“揺らぎ”があるので、季節や低気圧、性周期による揺らぎが重なると病気が出やすくなる傾向にあります。例えば、30代で子育て中の女性が寝不足で体の不調を感じるという話はよく聞きますが、こういう場合も一度、医療機関に相談してほしいです。ご自身や身内の方が年齢や疲れのせいと決めつけていると、重大な病気を見過ごしてしまう可能性がありますので、動悸や息切れを感じたらきちんと受診してほしいですね。病気を治すために必要な期間は、放置した期間の3倍だともいわれています。何か症状が出た場合は、お気軽にご相談ください。

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