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坂野 喜史 院長の独自取材記事

くらまえ診療所

(岐阜市/手力駅)

最終更新日:2023/04/05

坂野喜史院長 くらまえ診療所 main

名鉄各務原線手力駅から徒歩3分。農地が点在する住宅地にある「くらまえ診療所」は前院長が開業し、2019年4月に坂野喜史(ばんの・よしふみ)院長が継承した。建物はクリーム色に塗られた2階建て。院内は土足不可で一部バリアフリー化されており、エックス線やCT、超音波、胃カメラなどの検査設備やリハビリテーション室を備えている。坂野院長は、総合病院で約15年間消化器内科に勤務した経験を持つ医師で、培った研鑽を生かし胃カメラ検査などの消化器内科をはじめ内科全般の診療に注力。ゆくゆくは緩和ケアを含めた在宅医療にも取り組んでいく予定だ。「患者の背景を知り、不安を取り除き、最期まで関わっていきたい」と話す坂野院長に、診療で大切にしていることや患者への思いを語ってもらった。

(取材日2020年2月19日)

子どもの頃から知っていた前院長の誘いで院長に

院長に就任された経緯を教えてください。

坂野喜史院長 くらまえ診療所1

ここは1988年に「工藤医院」として開業し、後に地名をつけた「くらまえ診療所」と名称変更しました。前院長の工藤修三先生と僕は、縁あって子どもの頃から存じ上げていました。それで工藤先生が引退を考えられた時に、この診療所を引き継がないかと申し出をいただいたんです。僕も医師として将来は開業して、地域医療に携われたらと思っていたので、2017年から副院長として診療に加わり、2019年4月に院長に就任しました。工藤先生を慕う患者さんも多くいたので、工藤先生のご希望もあり、一緒に5年間ほどは診療を続けていただく予定でしたが、残念ながら昨年急逝されたため、現在は一人で診療しています。

これまで勤務されてきた総合病院と違いなどございますか?

やはり総合病院では、やれることが多かったです。原因がわからない状態によってはひとまず入院していただいて、様子を見ながらじっくり診断していくこともできました。でも診療所では様子を見るべきか、すぐに専門病院に紹介した方が良いのか見極めなければなりません。そのような判断は病院時代とは違います。それに、専門分野が細分化されている病院とは異なり、かかりつけ医は総合的に患者さんも診なければならない難しさもあります。難しさがある分、やりがいにもつながっていると感じますね。何よりかかりつけ医は、患者さんと密に接することができます。僕としては、希望する患者さんには最期まで付き合っていきたいという思いがあり、少しずつ訪問診療にも取り組む予定です。自分のやり方、地域医療の関わり方を模索していきたいと思っています。

先生はなぜ医師になられたのですか?

坂野喜史院長 くらまえ診療所2

正直、格好いい劇的な理由はありません(笑)。両親が薬剤師をしていたこともあり、小さな頃から漠然と「将来は医者かな?」と思っていましたが、学生時代はずっと他の仕事とも悩んでいました。医者の仕事は責任が大きいですし、覚悟がつかなかったのかもしれません。なかなか覚悟のつかないまま大学受験に挑み、2浪の末唯一受かったのが、その後進学することになる母校の医学部でした。そのときに、これは何かの縁だと思い、医者になるという覚悟を決めました。

胃カメラや漢方に加え、治らない病気の支援を

消化器内科に勤務されたきっかけは何でしょうか?

坂野喜史院長 くらまえ診療所3

なかなか専攻科が決められず、ひとまず麻酔科なら全身がみられると思い、東京の病院で麻酔科に入局しました。しかし直接患者さんと接する中で「やはり内科をやりたい」と思い、岐阜に帰ってきました。その時ご縁のあった先生が消化器内科で、その縁から消化器内科に入局しました。やってみると自分には合っていると感じ、また消化器内科では胃がんや大腸がんなどの診療に携わることも多く、多くの経験が得られました。どうしても治らない患者さんにも出会いました。治すために病気を診るのは医師として当然やらなければならないことですが、現在の医療では治らない病気も当然あります。医師として治らない病気をも診る必要を感じ、緩和ケアにも興味を持つようになりました。最期まで患者さんが満足できるようなサポートをする医師になれればと思っています。

現在も消化器内科の経験を生かされているそうですね。

口径が細い経鼻タイプの内視鏡を用いた胃カメラ検査を行っています。あと非常に多いのが、便秘のお悩み。おなかが痛い、張りを感じる、すっきりしないなどの症状のある方は、必要に応じてその場で腹部超音波検査やCT検査などを行い診断します。便秘にはいろいろなタイプがあり、数日間便が出ない典型的な便秘もあれば、毎日便は出ているのにおなかがすっきりしない「隠れ便秘」の方もいます。「隠れ便秘」の方のCT検査結果を見ると、便秘の自覚はないものの腸内に便が残っていることがあるんですよ。原因も便が硬い、押し出す力がない、腸が伸びてしまっている、腸が細くなっているなどさまざまで、原因に応じて治療方法が変わる場合もあります。便秘が習慣になり悪化すると、さらなる病気の要因ともなるので早期に治療することが大切です。また、ただの便秘と思っていたら大腸がんだったということもありますから、気になることがあれば相談してください。

治療には、漢方も使われるそうですね。

坂野喜史院長 くらまえ診療所4

西洋の薬も漢方製剤もいろいろ種類がありますので、希望する方には処方しています。前院長の工藤先生が漢方を専門に学ばれていたので、僕も工藤先生から教わりました。西洋の薬だと診断がつかないと処方できませんが、漢方の場合は患者さんの訴える症状に対して処方できるのが、一つの漢方の特徴だと思います。診断がつくまでつらい状態を我慢していただくのはどうかなと思いますので、そのつらい症状に対してひとまず漢方を処方するという方法もあります。患者さんと相談しながら必要に応じて、漢方もオプションの一つとして使っています。

患者の気持ちや背景に寄り添ってこそのかかりつけ医

診療ではどんなことを心がけていますか?

坂野喜史院長 くらまえ診療所5

かかりつけ医として、できるだけ患者さんの変化に気づかなければならないと思っています。顔色が悪いとか、痩せたとか、本人があまり意識していないことにも気づいてあげたいですね。そのためには時間とコミュニケーションが必要になってきますし、患者さんの仕事・家庭環境・経済状況などに応じた診療をするためにいろいろな背景を知ることも必要になってきます。患者さんの中には、仕事の都合ですぐに治療を始められない方もいますし、とりあえず症状だけを抑えてほしいという方もいるので、許容できる範囲で希望に沿ったことができればいいなと思っているんです。患者さんのことがよくわかっていて、そういうことをできるのがかかりつけ医ではないかと思っています。

内科には、さまざまな症状の患者さんが来られるのではないですか?

医師から診て問題なさそうと感じても、患者さん自身が何かを訴えているからには、絶えず「何かあるのではないか」という思いで診察しようと思っています。これは救急の時に体験したことですが、救急車で運び込まれた際には症状があまりなく「救急車で搬送される必要があったのか?」と思う状況でも、救急車を呼んだ段階では切迫した“何か”が起こっていたというケースは珍しくありません。実際、搬送時には一時的に症状が治まっていただけで、検査で大変な状況が判明したケースも何度か経験しています。多くの場合患者さんは医学的知識がありませんから、症状など体の変化に不安があるのは当然で、少しでもその不安を取り除くのが医師の役目と考えています。最終的に安心して帰っていただければうれしいです。私自身、すべての医学知識を持つのは不可能なので、患者さんの訴えにできるだけ耳を傾け、「この人は絶対大丈夫」と過信しないように心がけています。

最後に今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

坂野喜史院長 くらまえ診療所6

31年も診療を続けてきた診療所ですので、まずは前院長の代わりの役目を果たして、代替わりをしても安心して患者さんに来ていただけるようにしたいと思います。それにプラスして、次のステージとして新たな「くらまえ診療所」として自分なりの役割を果たせればと思いますし、また建物の改装等も含めより患者さんに快適な空間を作っていきたいと思います。読者の皆さんには、消化器内科に限らず、内科全般を診療しますので、気軽に寄ってほしいと思います。治療じゃなくても「親戚がこんなことを言われたんだけど」とか「この薬でいいの?」という相談でも構いません。「こんなことでかかっていいの」とあまり心配なさらずにお越しください。

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