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山際 雅也 院長の独自取材記事

山際眼科医院

(川口市/蕨駅)

最終更新日:2022/12/12

山際雅也院長 山際眼科医院 main

半世紀もの間、川口市の眼科医療を支えてきた「山際眼科医院」。町に眼科の医師が不足していた1973年に先代が開業し、以来時代に合わせた診療を提供してきた。近年では高齢や障害を理由に来院が難しい患者のために送迎・往診サービスを開始。「来られないなら迎えに行くし、立てないなら僕が行けばいい」そう朗らかに語る山際雅也院長は、複数の市立小学校で眼科の校医を務める地域医療の縁の下の力持ちでもある。インフォームドコンセントを重視したわかりやすく、患者の不安に寄り添う温かい診療を行う同院には、セカンドオピニオンを求めての来院も多いという。山際院長の考える眼科医療における医師の役割や、地域密着型クリニックとしての矜持(きょうじ)を聞いた。

(取材日2022年9月16日)

先代の亡き後、小回りの利く診療形態で地域にフィット

まずはクリニックのこれまでの歩みを教えてください。

山際雅也院長 山際眼科医院1

当院は先代である父が1973年に開業し、来年で50年を迎えます。当時、川口市は鋳物の町でした。この辺りも工場が立ち並んでおりましたが、その後時代とともに住宅街へと変化し、それに伴い人口が飛躍的に伸びました。一方で、病院は数が足りず、医療体制はさほど整っていなかったようです。医療機関には、鋳物工場で鉄粉やコークスという鉄を溶かすための燃料が目に付着してしまったといった特殊な業務中のけがによる相談が多く寄せられ、町は眼科の医師を求めていました。そこで、戸田市で眼科の勤務医をしていた父がこの地での開業を決意したと聞いています。僕が院長に就任したのは2006年です。現在は昔のような業務中のけがでの来院は減りましたが、高齢化や生活習慣病に伴う眼疾患の相談が増えています。父の代から来てくれる方や親子2代で来院してくださる方も多く、ありがたいことです。最近では市内3校の小学校で眼科の校医もしています。

山際院長が眼科の医師を志したのは、やはり先代の影響が大きいのでしょうか。

そうですね。幼い頃は父に連れられ外来で遊んでいたこともあるくらいなので、このクリニックは職場ということを除いても僕にとって思い入れのある場所です。そのせいか中学生になる頃には医師になろうと自然と思っていましたね。何科の医師になるのかは考えていなかったので、医大で学びながらゆっくり決めるつもりでした。ところが、次第に医師という職業が手の届くものになってくると「幼い頃に外来で見たあの患者さんたちは、父が引退したらどうなるんだろう」と責任感に似た思いが芽生えました。いつの間にかしっかり愛着が湧いていたんでしょうね。それで父の医院を継ぐ決意を固め、眼科の医師の道を歩むことにしたんです。

ご経歴を教えてください。

山際雅也院長 山際眼科医院2

高校を卒業後、医師をめざして帝京大学医学部へ進学しました。在学中に父の医院を継ぐことを決めたので、卒業後はどんな環境に身を置けば必要なスキルが身につくか考えました。当院はいわゆる町のクリニックで、医師は僕1人。なので、眼科医療の研究者になるというより何でもできる小回りの利く医師になろうと決意し、卒業後は帝京大学医学部附属溝口病院で勤務医になりました。

患者の協力なくして成立しない、眼科治療の特殊性

診療をする上で大切にしている思いは何でしょうか。

山際雅也院長 山際眼科医院3

「患者さんにとっての普通を取り戻せるように導く」という思いは常にあります。誰だって必要なければ治療なんてしたくないし、薬だって使いたくないはずなんです。つまり病院に通うこと自体がすでに患者さんにとっては「不自由」である。適切な治療を施すのは医師の仕事ですが、治療に対して不安を持つ患者さんの心情を理解し、前向きに進めるようケアをすることも重要な務めだと思っています。当院で処置ができない治療については、連携している地域医療機関・大学病院をご紹介します。小さなクリニックだからこそ連携体制は整えているので、結果的に先進的な眼科医療へとつなげていますね。

インフォームドコンセントやセカンドオピニオンに力を入れているそうですね。

眼科では、視力検査一つを取っても、患者さんに協力してもらえなければ正確な数字が測れないんです。患者さんと医師が二人三脚で取り組まなければ確実な治療が進まないというのが、眼科の特殊性ですね。だから患者さんとの信頼関係は大切にしていますし、納得して治療をしてもらうための努力は惜しみません。難しい言葉は必ずわかりやすい言葉に言い換えられますから、疑問は流さずに聞いてください。セカンドオピニオンのご相談も多いです。話を聞くと大抵の医師は適切な治療方法を提案しているんですが、ほんの少しの説明不足が患者さんの心に影を落とし、ボタンを掛け違うように不安を膨らませてしまっている。だから、かかりつけ医の言わんとしていたことのくみ取り、補足をして、患者さんが安心して戻れるよう言葉を尽くしています。基本的に当院への転院を勧めるものではありません。

お休みの日はどんなふうに過ごされているのですか。

山際雅也院長 山際眼科医院4

遠出することが多いですね。どこというわけではないのですが、山や川など、自分の存在を小さく思わされるところが好きです。医師という職業柄、周囲の方には尊敬されたりもてはやされたりすることが多いんですが、僕はそれに慣れるべきではないと思っています。再三になりますが、眼科医療は患者さんの協力あってこその分野です。患者さんが貴重な時間を通院に充てるのは容易なことではありませんよね。でも、僕としては絶対に治療を諦めてほしくないので、時には患者さんに頭を下げてでも検査や投薬をお願いすることもあります。誰に対してもフラットな自分でいられるよう、休日はあえて正反対の環境に身を置こうとしているのかもしれません。自然の中ではみんな無力ですから。

医療受難者を取りこぼさない、町のクリニックの矜持

患者の送迎・往診や診察順をブザーで呼び出すなど、さまざまなサービスを導入されていますね。

山際雅也院長 山際眼科医院5

誰もが受診しやすい環境づくりは課題です。送迎にはバリアフリー車を使用しており、院内にもスロープがあるので、車いすの方はそのままご入室いただけます。家から出られない方には往診もやっていますよ。来られないなら迎えに行くし、立てないなら僕が行けばいい。シンプルでしょう。順番待ちのブザーについては新型コロナウイルスの流行を受け、患者さんが外や駐車場でも待てるようにと思って始めました。問診票もホームページからダウンロードできるようにしたので、自宅で書いてきてもらうことも可能です。患者さんにとって楽な選択肢を増やすことが治療継続のハードルを下げるのではと思っています。

今後注力していきたいことを教えてください。

医療受難者への支援ですね。自転車に乗れなくなったために病院に通えない高齢者、家庭の事情で病気を見過ごされている子ども、言葉の壁があり医療情報を探せない外国人の方。病院は町にあふれているように見えますが、弱者が医療につながるためには無数の壁が存在しています。この問題の難しいところは、困っている当事者に声を上げる術がないことです。こちらから見つけてあげるほかありませんから、自治体とも連携して取り組んでいます。当院の送迎・往診サービスはまさに医療受難者向けのものなので積極的に活用していただきたいですね。

読者へのメッセージをお願いします。

山際雅也院長 山際眼科医院6

早期発見、早期治療は何よりの薬です。中には「どの科を受診すべきなのかわからない」と二の足を踏まれる方もいますが、とにかく不調を感じたら医療機関につながることを最優先にしましょう。問診や診察をもとに適切な診療科目を案内するのは医師の領域です。当院は眼科ですが「発熱したのでどの科に行けばいいですか」という理由で来院していただいても問題ありません。うちのような地域密着型のクリニックは患者さんとの距離の近さが売りですから、医療の駆け込み寺でありたいですね。デパートの総合案内をイメージしていただけるとわかりやすいかな(笑)。たいしたことじゃなくてもいい、間違っててもいいので、少しでも異変を感じたらとりあえず受診してください。

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