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多森 芳樹 院長の独自取材記事

たもり内科クリニック

(立川市/立川駅)

最終更新日:2023/03/13

多森芳樹院長 たもり内科クリニック main

立川駅から徒歩2分という立地の良さにある「たもり内科クリニック」。クリニックビルの1階に位置している。院長の多森芳樹先生は、一般内科診療に加えて、糖尿病治療や動脈硬化の予防などに注力している。近年、増加傾向にある糖尿病だが、加齢とともに避けて通れないといわれる動脈硬化を促進させてしまう恐れがあるという。「高血糖を放っておくと、全身に影響が及びます。早期に治療を行い、進行を少しでも遅らせることが大切です」と多森先生。患者に対してわかりやすく丁寧な言葉で説明することに努めている。普段から耳にすることが多い糖尿病だが、時代とともに治療や薬も進化しているという。そんな多様化する糖尿病治療についてどのような変化が見られるのか、詳しく話を聞いた。

(取材日2023年1月26日)

糖尿病患者の身近な相談所をめざして

なぜクリニックを開業しようと思われたのですか?

多森芳樹院長 たもり内科クリニック1

医学部卒業後に愛媛大学医学部附属病院第一外科の血管外科グループに所属していたのですが、患者さんの中には下肢の動脈を詰まらせて下肢切断をしなくてはならない人もいて、なぜ切断をしなければならないのか、回避する方法はなかったのかと思うようになりました。動脈硬化で詰まった血管の治療も大事かもしれませんが、予防することはもっと大事なのではないかと思うようになり、働く人のメンタルヘルスのご相談に対応するようになりました。そして、さらに多くの方が元気に暮らしていけることをめざして2009年にクリニックを開業しました。また、開院以来、妻も事務長としてクリニックを支えてくれています。今は、クリニックの受付も連日担当してくれて、日々感謝しております。

日々、患者さんと接する中で大切にしていることはありますか?

糖尿病は自己管理が重要になりますが、なぜ糖尿病になったのかという背景は、患者さんごとに違います。生活習慣を変えないといけないのに、どうしてもできないという理由も、皆さんそれぞれでしょう。血糖値が上がってしまう理由も、肥満だったり膵臓の働きが弱かったりとそれぞれに違うので、そうした一人ひとりの背景を十分に理解することが大事だと思っています。医師側から一方的に治療の指示をするのではなく、患者さんとの会話の中で、より良い治療をめざしていけたらと思っています。また、糖質制限が必要な方もいらっしゃるので、食べたものが角砂糖何個分になるのかなど患者さんにわかりやす形で伝えるようにしています。

糖尿病治療は薬だけでは駄目でしょうか?

多森芳樹院長 たもり内科クリニック2

血糖値のコントロールをするために薬を使うわけですが、薬だけ飲んでいれば血糖コントロールができるのかというとそうではではないんです。自分の体と生活パターンのズレが高血糖というゆがみを作っているため、生活習慣そのものを是正することが不可欠になります。食事をして血液中にブドウ糖やアミノ酸が入るだけではなく、筋肉の中に入れることで初めて消化吸収になります。食後、血糖値を下げ血糖コントロールをするために軽く筋肉トレーニングを行うことも大事です。また、有酸素運動は時間がかかってしまいますが、インスリンの働きをよくする上でもお勧めしています。糖尿病患者さんの中には運動が苦手な方も多いですが、食べた栄養を使うと太りにくいと言われているので、食後に運動をして血糖コントロールをしていきましょう。

時代とともに進化を遂げる糖尿病治療

動脈硬化の予防が糖尿病治療につながるそうですね。

多森芳樹院長 たもり内科クリニック3

糖尿病にはさまざまな合併症があります。特に微小血管障害には、目の網膜の細い血管に障害が起こる糖尿病網膜症、腎臓の細い血管に障害が現れる糖尿病腎症、末梢神経が侵されて手足に痛みや痺れなどの感覚異常が起こる糖尿病神経障害の3つがあり「糖尿病の三大合併症」といわれています。加えて、心筋梗塞や脳卒中を起こすのが大血管障害です。どちらも動脈硬化が引き金になり、糖尿病の患者さんは発症しやすいのが特徴です。また、介護保険を受ける原因となる病気に、脳卒中、骨折、認知症があります。これらも糖尿病患者さんがなりやすい病気なので、介護を受ける時期をできるだけ遅らせるためにも、糖尿病の診療を行うことはとても意義があることだと思っています。

治療を行えば合併症を防ぐことは可能ですか?

例えば、10年間糖尿病の治療をしてきた方が、10年を過ぎて合併症が出たとき、治療した10年間は無駄だったのかというとそうではありません。何もしなければ、おそらく2〜3年で合併症を起こしていたと考えられるでしょう。しかし、治療によって10年間は合併症がなく暮らせていたのであれば、やはり、そこに意味があると思います。ですから、定期的な受診で経過観察をする必要があります。治療で効果が出ないとしたら必ず原因があり、なぜ良くならないのだろうという新たな課題が持ち上がるわけです。例えば、膵臓にがんがあった場合などがそうです。患者さんが定期的に受診することで、そういった何かしらの問題点を修正していく必要があるわけです。

日々勉強もされているそうですね。

多森芳樹院長 たもり内科クリニック4

新型コロナウイルスが流行する前までは、モチベーショナルインタビュー(MI)を勉強していました。動機づけ面接ともいうのですが、人が自分の行動を変えようと思ったとき、内発的なモチベーションを見つけて、さまざまな選択ができるようにするカウンセリング手法です。元々は、アルコール依存症の患者さんに対するカウンセリング手法として始まったのですが、現在ではニコチンやスマートフォンなど、様々な依存症に応用されています。糖尿病も糖質依存という概念からMIを導入している先生も多く、勉強会に参加しています。MIは糖尿病診療で患者さんと話す上で、とても有効な手法だと思っているのでさらに勉強したいですね。

糖尿病治療は最初の10年が非常に重要

糖尿病は新薬の開発も盛んだと聞きます。

多森芳樹院長 たもり内科クリニック5

私が医師になった頃の糖尿病治療は、インスリンの分泌を増やすことを図る飲み薬とインスリン注射だけでした。その後、ブドウ糖の吸収を遅くすることを図る薬や、インスリンの働きを増すことを図る薬などが出始めました。開業した頃は、インスリンを分泌する力が弱く、ブドウ糖を筋肉や脂肪組織にうまく届けられずに血糖値が上がるという傾向を持つ方が多く、インスリンを外から注射したり、インスリンの分泌を促進させたりするのが主な治療でした。ところが、次第に糖尿病の主流が変わり、それまではインスリンの分泌力が弱い、いわば「由緒正しい糖尿病」だったのが、肥満を中心とした欧米型の糖尿病に変化していきました。そして、脂肪細胞からインスリンの働きを邪魔するホルモンが出ることがわかり、脂肪細胞を小さくバラバラにして、そのホルモンを出させないようにすることをめざす薬が出ました。

随分と治療や薬も進化しているのですね。

そうです。さらに、尿にブドウ糖を排出させることを図る薬も開発されました。ご存知のように腎臓は、不要な物をろ過して尿中に排出しますが、ブドウ糖は体内で必要なものだと認識して再吸収しようとします。血糖値が高いと腎臓に運ばれるブドウ糖の量が多くなり、その分、腎臓はブドウ糖のろ過に忙しくなるわけです。すると、交感神経系が興奮して他の臓器に影響を及ぼしてしまうので、腎臓に再吸収をさせないようにして、尿中にブドウ糖を排出させることを試みるのです。インスリンの必要量が少なくて済むので、僕はこの薬を「腎臓の過重労働対策」と呼んでいます。さらに、食後に小腸から分泌されて膵臓に働きかけるインクレチン、その中でもGLP-1という物質を壊れにくくすることを図る薬なども出ており、患者さんのタイプに合わせて使用する薬も変わってきています。

読者へのメッセージやアドバイスをお願いします。

多森芳樹院長 たもり内科クリニック6

糖尿病の治療は最初の10年間が大事です。その10年を放っておいてしまうと、新たに治療に取り組んでも効果があまり期待できないといわれています。血糖値が高いといわれたら、早期に受診して治療を開始してください。人間ドックでは空腹時血糖値を測定しますが、本来は食後の血糖値が重要です。食後2時間を過ぎても血糖値が低下せず、高い値が続く状態を「食後高血糖」といい、糖尿病の早期に見られることがわかっています。空腹時の血糖値が高い場合は、実はかなり進行した糖尿病かもしれません。今の糖尿病の診断基準は、末期を診断しているようだと話す先生もいるくらいです。高血糖はすぐに命に関わらないため放っておく人が多いのですが、早く手を打てば生活習慣も変えやすいと思うので、早期に受診してください。

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