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鳥海和弘 院長の独自取材記事

鳥海ペインクリニック

(中野区/野方駅)

最終更新日:2021/10/12

鳥海和弘院長 鳥海ペインクリニック main

“ペインクリニック”という名前を、初めて聞く人も多いだろうか。店や人が多く、活気があるがどこか懐かしさも感じる中野区野方に、「鳥海ペインクリニック」はある。開業は1932年。開業者の祖父、父、そして現在の鳥海和弘(とりうみかずひろ)院長と3代続く医院だ。車いすでも来院可能なバリアフリーの入り口を進むと広がる、木目調の温かみのある院内は、父の代までは産婦人科医院だったという。印象に残っている患者について聞くと、5年以上前の治療が困難だった患者を挙げた。他の患者との会話もこと細かに覚えている様子からは、院長の温かい人柄や真摯に患者に向き合っている姿勢が伝わってくる。患者への想い、そしてペインクリニックへの想いをじっくり聞いた。

(取材日2013年2月7日)

心まで蝕んでしまう“痛み”と向き合う仕事

歴史のあるクリニックとお聞きしました。先生が医師をめざしたきっかけを教えてください。

鳥海和弘院長 鳥海ペインクリニック1

私の祖父が、1932年に開業しました。その後に父が引き継いだのですが、祖父の代も父の代も産婦人科と外科として開業していました。先日、問診票に“来院2回目”と記入された患者さんがいらしたのですが、よくお話を聞いてみたら、当院の産婦人科でお産まれになった方で驚きましたね。実を言うと私は、もともと医師になりたいとは思っていなかったんです。子どもの頃、家が産婦人科ということで友達からよくからかわれていました。そのため、絶対医師にはなるもんかと決めていたんです。ところが、私が虫垂炎にかかった時、父が手術をしてくれました。初めて父が手術をする様子を見たことで、「ああ、父たちはこういう仕事をしているんだな」と初めて医師の仕事の意義を実感できたんです。それで埼玉医科大学を卒業した後、東京慈恵会医科大学で麻酔科の医師として研修の後入局しました。最後は医局長までやらせて頂き、現在も非常勤講師として後輩医師の教育に携わらせてもらっています。その後、荒川名倉病院で麻酔科医師、整形外科医師としても勤めていました。そして2004年、父が突然亡くなり当院を引き継ぐことになりました。

治療で心がけていらっしゃることは何ですか?

鳥海和弘院長 鳥海ペインクリニック2

ペインクリニックの“ペイン”とは、英語で“痛み”を意味します。いろいろな病気によって起こる痛みやしびれ、がんの痛みなどを診断し、ブロック治療や薬物療法などを行なっています。患者さんは若い方からご高齢の方まで幅広く、症状も頭のてっぺんからつま先までのさまざまな痛みに関するものです。また当院では、妻である副医院長が内科・外科、私が麻酔科と整形外科を担当しており、“痛み”に対して多角的な視点から診療ができます。患者さんは大学病院から紹介されていらっしゃる方以外に、他の病院や治療科で思うような結果が得られず当院を受診される方もいらっしゃいます。ですから、できるだけ患者さんの訴えを受け入れ、「様子を見ましょう」といった中途半端な対応はしないようにしています。もし当院で治療が難しい場合には、他の病院をご紹介することもあります。“痛み”は、生活全般にわたるモチベーションを下げ、最終的には心までも蝕んでしまうものです。患者さんに寄り添う治療、そして患者さんに納得して治療を受けていただけるよう丁寧な説明を心がけています。

「14年ぶりに良い正月を迎えられた」と報告してくれた患者

印象的な患者さんとのエピソードを教えてください。

鳥海和弘院長 鳥海ペインクリニック3

ある時、帯状疱疹後神経痛が14年続いているという80代の患者さんがいらっしゃいました。それまで通っていた病院では、「申し訳ないが、墓場まで(痛みを)持って行ってください」と言われていたそうです。しかし、見かねた息子さんがインターネットで当院を見つけ、ご来院くださりました。来院後、患者さんが「14年ぶりに、こんなに良い正月を迎えることができた」とおっしゃったときは、うれしかったですね。また変形性脊椎症で車いすになった患者さんが来院されたとき、ご友人が医師を務める整形外科へ15年通って治療していた肩の痛みとしびれに対し、ブロック治療を行ったところ、患者さんから「俺の15年を返してくれ」なんて言葉をいただいたこともあります。そんなエピソードが、たくさんありますね。それまで苦しんでいた痛みに対応することで、皆さんの表情が変化していくように思います。これは、医師として素直にうれしいことです。ただ、中には治療が難しい場合もあります。6年ほど前、80代の両手に杖をついた患者さんが通ってくださっていました。しかし、何をしても症状が良くなりませんでした。この2年で劇的に薬物療法の種類が増えていますが、当時はまだ少なかったんです。ある日、患者さんから「すごく良くしてくれたが、通うのが大変なので治療を終わりにしたい。先生の笑顔が好きだった」と電話をいただきました。今でも治すことができなくて申し訳なかったという気持ちを思い出し、つらいですね。

先生は、こちらの医院以外でも活動されているそうですね。

鳥海和弘院長 鳥海ペインクリニック4

船には最近忙しくなって随分乗れていないのですが、飛鳥Ⅱなどで、船医として船員の方の健康診断や乗客の方の医療対応も行っていました。妻も同じく船医なんですが、世界1周を3回ぐらい経験していてうらやましいですよ。院内だけにとどまらず外の世界で医師としての情報や刺激を得ることで、当院の患者さんにとってもより良い治療につながると考えています。

ペインクリニックの認知度を上げ、痛みに苦しむ人を減らしたい

とてもお忙しそうですが、どのように気分転換されていますか?

鳥海和弘院長 鳥海ペインクリニック5

休日は妻と2人で過ごすことが多いですね。特に、最近はゴルフへよく行きます。ゴルフは全然知らない人と一緒にコースを回ることがあるので、新たな出会いのチャンスがたくさんあるところが魅力だと思っています。最近では商店街のコンペでご近所の酒屋さんと一緒に回ったり、月1回開催する医師会のゴルフ会では、専門外の医師の話を聞いたりしています。人は、一人で何かをできるのではありません。人とのつながりがあるからこそ、何かを成し遂げられると思っています。そのため、新たな出会いの多いゴルフはお勧めです。そういう意味では、いつも一緒に頑張ってくれているスタッフとの関わりも大切にしています。患者さんも、私には言いにくいことをスタッフには言ってくださるかもしれないし、一番間近で患者さんを見てくれているスタッフが医療に対して意見を言いやすい環境づくりは、より良い治療のためにも重要だというのが私の考えです。

先生のペインクリニックへの想いを教えてください。

ペインクリニックをもっと世に広めたいと思っています。日本赤十字や大学病院、近隣の内科医師等からの紹介も徐々に増えてきていますが、まだまだ認知度は低いですね。田中角栄・元首相が、首相在任中に顔面麻痺になってしまったことはご存知でしょうか。その際には全国のあらゆる病院を当たったのですが、治りませんでした。そこでブロック治療を行ったのが、若杉文吉先生という、日本に初めてペインクリニックを導入された先生なんです。実は私も慈恵医大で研修医をしている際、若杉先生の指導を受けていました。田中・元首相のニュースで、ペインクリニックの情報も流れたんですよ。しかしその存在を知らずに、痛みに苦しんでいる方がたくさんいらっしゃる現状が本当に残念です。ペインクリニックをもっと患者さんたちの身近に増やし、痛みに悩む人たちを減らすことが医師としての一番の望みですね。

読者へのメッセージをお願いします。

鳥海和弘院長 鳥海ペインクリニック6

当院の門を叩いてくださったからには、患者さんにとって一番良い治療を行いたいと思っています。何か症状があれば、疾患は隠れているもの。早期発見・早期治療が重要ですね。一方通行の医療ではなく、一人ひとりに合わせた“オーダーメイドの医療”を行っています。例えば薬物療法に関して、漢方や筋弛緩薬、局部麻酔薬、ビタミン剤など、いろいろな薬の利点を生かして患者さんに合ったものを探していきます。何か分からないことや不安なことがあれば、ぜひ足を運んでいただければと思います。

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