地域連携で患者と家族をトータルケアする
物忘れの診療
仙石クリニック
(豊島区/巣鴨新田駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
「人の名前を思い出せなくなった」「同じ話を何度も繰り返すようになった」など、いろいろなシーンで発生する物忘れ。加齢によるものでなく、認知症や脳の異常などが原因の場合は対応できる治療法があるため、専門の医師による診療を受けるのがいいのだとか。本人はもちろん、家族にそうした症状が見られたときに相談に応じてくれるのが、物忘れ専門の診療だ。地域に高齢者が多く暮らしていることもあり、早くからこの診療に力を入れてきたという「仙石クリニック」の仙石祐一理事長に、具体的な診療内容や治療の進め方について聞いた。
(取材日2019年5月29日)
目次
早期に治療を始めれば、症状を最小限でとどめることも期待できる。少しでも不安を感じたら、気軽に受診を
- Q物忘れ専門の診療について、教えてください。
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A
「最近、記憶が曖昧になってきた」「今までできていた簡単な計算ができなくなった」など、ちょっとした物忘れが気になっている人も多いでしょう。そうした物忘れの原因は大きく分けて、加齢による生理的変化と、認知症やうつ病などによるものがあります。加齢による変化はいわば正常な物忘れですので、特に日常生活に支障がなければ、それほど心配はいりません。しかし認知症やうつ病が原因となっている場合は、医学的な治療が必要です。物忘れ専門の診療は患者さんの物忘れの原因を突き止め、治療の要・不要を判断し、必要に応じて適切な治療を行い症状を改善したり、病気の進行を遅らせたりすることをめざします。
- Qどのような人が受診されているのですか?
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A
60〜90歳くらいの方が大多数を占めますね。お一人で来院される方は大半が加齢による物忘れで、あまり心配ないケースが多いのですが、ご家族やホームヘルパーさんが付き添っていらっしゃる場合は、症状が進行しているケースが多いです。「仕事中、ミスが目立つようになった」など、日常生活で問題を抱えて来院される40歳くらいの方もいらっしゃいますよ。しかし、物忘れ専門の診療にいらした人のうち、全体の約80%が正常な方の印象です。より専門的な治療が必要な方は、残りの20%程度なんです。もちろん、治療が不要な方に安心していただくことも診療の目的ですので、不安を解消するためにも一度ご相談いただくと良いかもしれません。
- Q具体的な診療の流れを教えてください。
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A
まずは丁寧に問診を行い、物忘れが起こるときの状況や現在のお悩みについてお聞きします。患者さんによっては脳の検査が必要な場合がありますので、そのときはCT・MRIなどを使用して詳細に検査します。採血によって代謝的疾患や甲状腺機能低下の有無を確認したり、全身的な検査を行ったりすることもあります。検査で脳の萎縮が見られたからといって、必ずしも認知症とは限りません。あくまでも問診をもとに判断し、治療方針を立てます。若い人の物忘れはうつ病などが原因の可能性もありますが、精神科や心療内科といった専門の診療科は行きづらいと感じる方は、初めの一歩として当院のような地域のクリニックに相談されるのをお勧めします。
- Q治療はどのように進めていくのでしょう?
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A
治療が必要な物忘れにもさまざまな種類があります。例えば、認知症の患者さん。認知症には原因によって「アルツハイマー型認知症」や「脳血管性認知症」などがあり、進行を遅らせるために服薬治療を行います。慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などによる認知機能の低下だった場合は、その疾患の治療として外科的処置を行います。またうつ病などが原因となっている場合は関連病院をご紹介し、専門的な治療へ移行していただくこともあります。当院では現在、多くの認知症の患者さんの診療を行っています。今後、社会の高齢化が進むにあたり、受診される方は増えていくでしょう。
- Q認知症になったら、家族はどうすればよいのでしょう。
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A
認知症は、ご家族のサポートと理解が非常に重要です。治療のための服薬はずっと続ける必要がありますし、認知症患者と生活する上で起こり得る出来事に対して、心構えをしておくことも大切です。もちろん私たちも病気を治療するだけでなく、ご家族をできる限りサポートしていくよう努めています。認知症の種類によって治療内容が大きく変わることはなくとも、ご家族に理解を深めていただくために、きちんと認知症の種類を告げるようにしています。医療だけでなく介護や福祉の面からも支えられるよう、地域のケアマネジャーらと密に連携して情報を共有し、日々の生活をサポートできる体制を整えていきたいと思っています。