全国のドクター9,222人の想いを取材
クリニック・病院 158,511件の情報を掲載(2024年5月25日現在)

  1. TOP
  2. 神奈川県
  3. 横浜市港北区
  4. 綱島駅
  5. 医療法人社団佳雄会 横浜綱島フォレスト在宅クリニック
  6. 山地 孝拡 院長

山地 孝拡 院長の独自取材記事

横浜綱島フォレスト在宅クリニック

(横浜市港北区/綱島駅)

最終更新日:2024/04/15

山地孝拡院長 横浜綱島フォレスト在宅クリニック main

港北区綱島西を拠点とし、半径16キロ圏内を対象に訪問診療を行う「横浜綱島フォレスト在宅クリニック」。腎臓内科を専門とする山地孝拡院長は、留学先で家族の訃報に接し、医師として訪問診療に携わることを決意したという。帰国後は都内で訪問診療の経験を積み、2024年4月に信頼できる仲間たちとともに開業に踏み切った。患者と家族の気持ちを大切にしながら、体だけでなく心の痛みにも寄り添った訪問診療の実現をめざす。その気持ちの表れの一つが「手当て」だ。「訪問時は必ず、患者さんの体に触れるようにしています」と優しい笑顔で語る山地院長に、訪問診療に対する思いなどを聞いた。

(取材日2024年2月9日/情報更新日2024年4月4日)

技術と心の両面から、訪問診療の在り方について学ぶ

先生はもともと腎臓内科を専門にされていたそうですね。

山地孝拡院長 横浜綱島フォレスト在宅クリニック1

幼い頃に腎臓の病気になった経験から、腎臓内科に進みました。当法人の理事長の森山雄介先生とは、勤務医時代の先輩後輩の間柄です。当時は訪問診療の先生から患者さんを引き継ぐ立場でしたが、10年近く前ということもあり、訪問診療で対応できないことは多いというイメージを持っていました。というのも、患者さんの「自宅で過ごしたい」という思いがあっても、病院にバトンタッチせざるを得ない状況をたくさん見てきたからです。そんなもどかしさを感じながら日々診療にあたり、「患者さんの背景や思いを知りたい」という思いでシンガポールで研究に勤しむなどして、腎臓内科の医師として研鑽を積みました。

その後、なぜ訪問診療に注目されたのですか?

シンガポールのメディカルスクールに留学していた時のことです。祖父が転んでけがをしたことで意欲を失ってしまい、食事も取れなくなって、わずか2週間で他界しました。てっきり訪問診療をお願いしているのだろうと思っていたら、実際はそうではなかったんですね。急なことでしたし家族も力を尽くしたと思いますが、身内のみで介護する限界を感じた出来事でした。せめて医師である私が近くにいたならば、何かできることがあったかもしれません。このことがきっかけで訪問診療の重要性について考えるようになり、医師として訪問診療に携わりたいという決意につながりました。常々「患者さんの背景や思いを知りたい」と感じていた私にとって、医師としての大きな転換点だったと思います。

その後のご経歴をお聞かせください。

山地孝拡院長 横浜綱島フォレスト在宅クリニック2

帰国後は、都内の「しろひげ在宅診療所」で訪問診療の経験を積みました。院長の山中光茂先生は志の高い方で「患者さん一人ひとりに、最期の瞬間までしっかり寄り添う」という信念をお持ちです。山中先生からは、技術と心の両面から訪問診療の在り方について学びました。その後、森山先生からお話があり、訪問診療のクリニックを開業することとなりました。医師、看護師、事務、ドライバーなどスタッフは全員以前からの知り合いで、訪問診療に関する知識や経験も豊富です。お互いの考え方も理解していますし信頼関係もできています。当面はこのメンバーで、丁寧に親切に、体だけでなく心の痛みにも寄り添う訪問診療を実現していきたいですね。

大切なのは、患者と家族がともにハッピーであること

訪問診療では家族の協力も必要になりますでしょうか?

山地孝拡院長 横浜綱島フォレスト在宅クリニック3

そうですね。ただし、無理を押しつけるものではありません。訪問診療は、いわば私たちが出向く病院のようなもの。ご自宅のベッドが診療室であり入院部屋となります。ただ常時、看護師や介護士がいるわけではありませんから、介護の一部をご家族に負担していただくことになります。訪問診療を取り入れるご家族の多くは、患者さんに対しての思いやりと、介護に対しての熱意をお持ちです。ですがご自身の仕事や生活もある中で、頑張りすぎてご家族が疲れてしまってはいけないと思うんです。訪問診療の大切なポイントは、ご本人だけでなくご家族もハッピーであるということ。レスパイト入院やショートステイなどの社会的なサービスも活用しながら、個々のライフスタイルの中でできる部分をお手伝いいただきたいと思います。

一人で暮らす高齢者も増えているように思います。

そのとおりとても多いです。今、そしてこれからの超高齢社会、この点は無視できない課題になってくることでしょう。お一人でお住まいの患者さんに対しては、私たち医師の他、歯科医師、ケアマネジャー、訪問看護師、介護士、ホームヘルパーと、地域の医療や福祉が一丸となってサポートします。私もこれまでお一人で暮らす方を多く診てきましたが、ホームヘルパーさんが身の回りのことを手伝ってくださったり、今挙げたような社会的なサービスを取り入れたりできれば、お一人でも生活が成り立つことは十分期待できると考えます。

これまで診療の際に心がけてきたことをお聞かせください。

山地孝拡院長 横浜綱島フォレスト在宅クリニック4

訪問診療では、初診から患者さんのご自宅にお伺いすることがほとんどです。私はまず、患者さんやご家族からしっかり話を伺います。その際、カルテの入力に没頭するようなことありません。これは「しろひげ在宅診療所」で学んだことですが、訪問診療の際はご自宅内にパソコンを持ち込まないんです。入力は車に戻ってからいくらでもできますからね。それよりも大切なのは、患者さんときちんと向き合って触れること。私はマッサージの心得もあって肩をほぐして差し上げたりもしていたのですが、そうすると患者さんの緊張もだんだんほどけていくんです。医療的処置を「手当て」といいますが、あれには「手を当てる、触れる」という意味があるんですね。医師や看護師との触れ合いには、患者さんの不安を和らげる力があるのかもしれません。お一人で暮らしている方や、体が思うように動かずに孤独な思いをされている方の心にも、私の手当てが伝わればうれしいです。

NOと言わない、相談しやすいクリニック

グループ内での連携についても教えてください。

山地孝拡院長 横浜綱島フォレスト在宅クリニック5

理事長の森山先生は、近くにある「横浜綱島フォレスト内科・呼吸器クリニック」の院長でもあります。例えば、付き添いや車いすで外出のできる方には、エックス線撮影や呼吸器の診察のためにそちらを紹介することもできます。また呼吸器疾患で通院されている患者さんが通院困難になった際に、当クリニックでの訪問診療に切り替えることもできます。両院とも、休診日を設けずに診療を行う「NOと言わない、相談しやすいクリニック」をめざしています。力を合わせて、周辺エリアの皆さんの生活を医療面から支えていきたいと考えています。

訪問診療を望まれる方は増えているのでしょうか?

とても増えています。超高齢社会といわれて久しいですが、特に新型コロナウイルス感染症の流行があってから、訪問診療を検討する方が増えたのではないでしょうか。今でこそ緩和されましたが、流行下はお見舞いが防護服やガラス越しで、オンラインの画面越しにご家族と最期のお別れをされる方もいらっしゃいました。本当ならば、ご家族と触れ合って最期の時を過ごしたかったことでしょう。当時、ある患者さんは「もう延命は難しく、今日か明日か」と診断された状態で、最期にご家族と過ごすことを希望されました。ご自宅に戻られてから、ご家族は患者さんに話しかけたり、やわらかいものを口に含ませたり。結果として1週間、ご家族との時間を過ごすことができました。患者さんがそのように望むのならば、私は医師としてその思いをサポートしたいと思います。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

山地孝拡院長 横浜綱島フォレスト在宅クリニック6

現在、訪問診療で対応できる範囲は広がりつつあります。私が訪問診療と患者さんの思いの間で葛藤していた10年前とは異なり、今では点滴や酸素投与、また胃ろうの管理もご自宅で受けられるようになりました。当クリニックでは、もし専門的な処置が必要になった際は速やかに連携できるよう、地域の医療機関との体制も整えています。私たちが提供していきたいのは、患者さんとご家族に寄り添った訪問診療です。気になることや不安な点などあれば、お気軽にご相談ください。誠心誠意、患者さんとご家族のご希望に向き合い、医師としてお力になります。

Access