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宮澤 智久 院長の独自取材記事

かもめ在宅診療所

(高崎市/群馬総社駅)

最終更新日:2024/03/01

宮澤智久院長 かもめ在宅診療所 main

高崎市北原町の「かもめ在宅診療所」は今秋、開業したばかり。24時間365日、小児から高齢者まで幅広い世代の、さまざまな疾患に対応している。地元出身で、総合診療の道を志し、救急、病棟、訪問診療と、さまざまな経験を積んできた宮澤智久院長は、都内で会社勤めをした後、医師に転じた異色の経歴を持つ。「訪問診療では、病院では見られない患者さんのリラックスした表情があり、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの診療が行えます。そのことに大きなやりがいを感じます」と話す宮澤院長に、診療ポリシーや患者への想いなど、詳しく聞いた。

(取材日2023年11月13日)

24時間365日、世代を問わずさまざまな疾患に対応

10月に開業されたばかりということですが、まずは診療所の特徴について教えてください。

宮澤智久院長 かもめ在宅診療所1

24時間365日、訪問診療を行っています。定期訪問の他、終末期の緩和医療、神経難病、小児疾患などさまざまですが、患者さんは、やはりご高齢の方が多いですね。以前の勤務先からの依頼や、老人ホーム、近隣の先生からの依頼もあります。一般の方は、どこに頼んだらいいのかわからないという人もまだまだ多いと思います。対応可能な範囲は、高崎、前橋、渋川、安中、藤岡各市、吉岡町、榛東村エリアになります。本当はもっと遠く、へき地や山間部など医療資源が特に乏しく、受診が困難を極める患者さんとご家族の力になりたいと思っているのですが、訪問診療は基本的にクリニックから半径16km以内と決まっているため榛名湖くらいまでがギリギリです。当院には現在、医師の私のほかに4人のスタッフがいます。ニーズが高まっているので、今後はスタッフを増やしていけたらと思っています。

終末期を迎える患者さんも多いそうですね。

慣れた環境でご家族と穏やかに過ごせるお手伝いをしたいと思いながら対応しています。勤務医時代も患者さんのご意向を伺ってきましたが、多くの方は家に帰りたいと望んでいました。特に終末期の患者さんの場合、在宅で患者さんが徐々に衰弱する状態をご家族が見て、これから訪れる死を家族と一緒に受け入れていきます。その過程で、無理して頑張らなくてもいい、できるだけ安らかに、とご家族は願うようになっていくんですね。できるだけ長く一緒に過ごせたら良いけれど、最後には「行ってらっしゃい」という気持ちになれるんです。昨今は新型コロナウイルスの影響で、面会もままならない病院や施設もありますし、病院で処方された薬を飲んで先端の治療を受けるよりも、ご自宅にいて何もしないほうがかえって長く生きられるということもよくある話です。

一般の病院との違いはどんなところでしょう。

宮澤智久院長 かもめ在宅診療所2

CTなど大きな装置を使うような検査はできませんが、抗生剤や点滴の投与、腹水を抜いたり、エコーを使って心疾患の評価をしたりと、一般の病院で行っているような処置はだいたい行えます。心筋梗塞や脳梗塞などは急性期治療が必要なので大規模病院へ搬送しますが、いろいろな持病があっても予後に変わりなければ、できるだけ在宅で長く過ごせるようにしてくことも可能です。先進の設備を整えた病院で最期を迎えることが、その人にとって本当に良いとは限りません。病院は診療科が細かく分かれているので、いろいろな先生が診ますし、薬も増えがちです。薬は、絶対必要な薬を除けば、できるだけ少ないに越したことはありませんし、そうしたことを含めて診ていくのが総合診療を行う医師の役目だと思っています。

そうした中でも病院のほうが良いという点はありますか?

大きな病院はスタッフが多いので検査をすぐにでき、結果もすぐ出ます。看護師も大勢いるので、いろいろ頼むこともできるでしょう。それに対し、今は私ひとりで点滴セットを持つなどして訪問診療に行っています。ですが、身近なクリニックだからこそ柔軟に対応できる点もあります。自宅は当院から10分くらいのところにあり、夜間は電話を受けて向かっています。不定期の訪問診療、緊急時、いつでも駆けつけることができるようにしています。

幼少時からの想いが再燃し、会社員から医師へ

先生は別のお仕事をされてから医師になられたとか。

宮澤智久院長 かもめ在宅診療所3

都内で働く会社員でした。昔から人のために何かするのが好きで、医師に憧れ、海外青年協力隊に入りたいと考えたことも。大学では理工学部に入学し、環境系に興味があったので世の中のためになる仕事をと、環境系のプラント会社に技術職として勤務しました。水処理場を造ったり、水を浄化するシステムの研究をしたり。現場にも行き、海外でも仕事しました。やりがいはそれなりにあり楽しく、人のためになっているという実感もありましたが間接的なものでした。そして医師になりたい想いが再燃し、約5年で退職。身内に医療関係者はいませんし、お金をため医学部入学をめざそうとなったのです。仕事で何度か行ったことがある韓国では日本語学校の先生、日本では家庭教師をしながら勉強することに。韓国と日本を行き来する生活でしたが、仕事は順調でした。その後、結婚し子どもも生まれましたが、生活できるめども立ち30歳を前にして医学部受験を決意しました。

大きな方向転換ですね。

医師になりたいという強い思いだけでした。34歳で晴れて新潟大学の医学部に合格。週末はこちらに帰ってきてそれまでの仕事を続け、単身赴任で6年。卒業後は地元群馬に戻り、高崎総合医療センターで臨床経験を積みました。その後、へき地に興味があったので総合診療の道を志し、県内で総合診療に力を入れていた利根中央病院に勤務し、専門的な知識を身につけました。次に勤務した前橋協立病院は180床以上ある病院で、ここでは訪問診療の診療科長として奮闘しました。

24時間365日対応だそうですが、とてもハードなお仕事ですね。

宮澤智久院長 かもめ在宅診療所4

確かに体力がいるハードな仕事ですが天職だと思っているので、まったく苦ではありません。それに、訪問診療の医師でなければ、南極観測の越冬隊に応募したかったくらい体力には自信があるんです。オフも家でごろごろしていることはないですし、テレビも見ません。昔から活発でよく動き回る子どもでした。落ち着きがないと、学校の先生からはよくしかられていました(笑)。昔、祖父母も隣に住んでいましたし、お年寄りは好きなんです。今は好きな山登りはあまり行けませんが、最近は週3回くらい、仕事の後や休日にマラソンを頑張っています。

患者はわがままでいい、家族は背負い込まなくていい

訪問診療で患者さんと接する時、大切にしていることはありますか?

宮澤智久院長 かもめ在宅診療所5

「手当て」と言うように手を当てることは重要なので、できるだけ触れるようにしています。皆さん、手を握ると安心されるようで、中には手を放してくださらないお年寄りもいらっしゃいます。訪問診療の医師は、経済状況、家族関係など、背景を見ながら総合的に治療しなければいけない立場です。患者さんの病気を診るというよりも、その周辺を調整することのほうがウエートが大きいと思います。

会社員時代の経験が役立っていると思うことはありますか?

社会を知り、平衡感覚を養えたと思います。勉強ができ、その延長で医師になる人もいると思いますが自分はそうではありません。人のために頑張りたいと思いますし、病気を診るのではなく患者さんを診ることを大事にしていきたいんです。医師だけの世界に浸らず、会社院時代や学生時代の友人とご飯を食べたりお酒を飲んだりすることも大切にしています。医師は究極のサービス業だと思うんです。患者さんのご希望に沿うことが大事。話が合う、居心地がいい、行きたくなる、そう思ってもらえる診療所、医師であるべきだと思っています。

患者さんやご家族へお伝えしたいこと、アドバイスなどはありますか?

宮澤智久院長 かもめ在宅診療所6

患者さんには、「我慢しないで、わがままでいい」とお伝えしたいです。ご自分の人生ですから最後は好き勝手放題言ってもらい、私たち医師は、それにできるだけ沿うかたちで対応できたらと思っています。ご自宅でケアするご家族へのアドバイスは「頑張りすぎないこと。家に帰ったら全部自分がやらなければと思わないこと」ですね。訪問の介護、看護、栄養指導など、今は多くのサービスがあり、こちらで調整できるのでご相談ください。自分ですべての責任を負う必要はありません。患者さんやご家族の想いを大切にしながら、私たちが医療の側面からサポートいたします。

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