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大橋 博樹 院長の独自取材記事

多摩ファミリークリニック

(川崎市多摩区/登戸駅)

最終更新日:2024/05/29

大橋博樹院長 多摩ファミリークリニック main

登戸駅から徒歩5分ほどの場所に位置する「多摩ファミリークリニック」。2010年の開業以来「地域のニーズに応えること」をモットーに、医師を中心としたスタッフ体制を拡充。内科と小児科、外科の外来と訪問診療の両面から地域住民の健康を支えている。家族全員の健康に関わる「家庭医療」の専門家である大橋博樹院長は「常に地域の皆さんのニーズに反応し、応えられるよう変化していくクリニックでありたい」という。その結果、訪問診療やオンライン診療を含む診療面はもちろん、子育てママのサポートや健康相談など、さまざまな活動を展開している。そんな大橋院長に、家庭医療や同院での特徴的な取り組みについて聞いた。

(取材日2024年3月13日)

専門にとらわれず、家族単位で診る「家庭医療」を実践

「家庭医療」とはどのようなものですか?

大橋博樹院長 多摩ファミリークリニック1

日本でかかりつけ医と呼ばれる町の先生方の多くは、もともと何らかの専門をお持ちです。循環器や消化器などの分野の研鑽を積み、大学病院などで活躍されたあと、地域医療に携わります。一方、私たち家庭医療を専門とする医師は、最初から地域において一般的な病気全般を診断できるよう研鑽を積むのです。アメリカでは40年以上の歴史を持つ医療分野で、約2割の医師が最初から家庭医療を専門として選んでいます。私たちは家庭医療に携わる医師を「家族全員のお抱えの医者」と呼んでいます。子どもから高齢者まで家族単位で診ることで、地域が抱えるさまざまな健康問題に対応できるのではないかと考えています。

新型コロナウイルス感染症などにも積極的に対応されていましたね。

いかに患者さんをお断りせず診るかに尽力してきたので、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、発熱者用の外来を設けて対応しました。日常が戻ったとはいえ、まだ通院に不安がある方はいらっしゃいますし、子育てや仕事で受診しづらいという方も多いため、オンライン診療も本格的に開始しました。当院は小児科があり、土曜は非常に混雑します。働いている方にも週末に受診したいというニーズがありますから、オンライン診療により外来でいらっしゃる方、受診時間が限られている方の双方にメリットが創出できると考えています。もちろんすべての診療というわけではありませんが、複数のお子さんを連れての来院が難しい方や、体調不良や忙しさで来院できない方などが薬の処方を求めるケースなどでご活用いただいています。

家庭医療が患者さんにもたらすメリットは何でしょう?

大橋博樹院長 多摩ファミリークリニック2

当院には3世代で通っていらっしゃるご家族が多いのですが、中には4世代にわたる世帯もおられます。訪問診療を行っているため、ご高齢の患者さんのお宅に訪問した際に、お孫さんの予防接種の相談を受けることも可能です。家族全員を診ていると家庭環境の変化によって起きる病気にも気づきやすいのもメリットです。例えば義理の両親と同居している方が風邪で来院されたとします。私たちは患者さんの家族も診ているので、その原因がお義父さんの介護疲れからきているのではないかという推察ができますよね。単に治療を行うだけではなく、休息できる時間をつくるなど一歩踏み込んだ提案につながっていきます。こうした家庭背景までを考慮した動きは、家庭医療を専門としている当院の強みだと思っています。

複数医師と多職種が連携し、幅広い診療や活動を展開

複数の医師が在籍しているのも大きな特徴ですね。

大橋博樹院長 多摩ファミリークリニック3

在籍医師全員が家庭医療の専門家で、根本的な考え方が同じであるというのは一つの特徴です。同じ医師が同じ患者さんを診続けるのも、変化を見逃さないという点では重要ですが、それ以上に多くの医師が診ることで多面的な診療が可能です。担当医師が気づいていないところに気づけるというチェック機能はもちろん、神経難病や腹膜透析、末期がんなど重症の方の訪問診療ができますし、新型コロナウイルス感染症の患者さんの受け入れもリスクを取れる体制があったからこそ。医師だけではなく、多くのスタッフ、そして院外の医療従事者の皆さんの協力もありがたいことです。また、最近では若く優秀なドクターが家庭医療の実践を学びたいとチームに加わってくれています。長く良いかたちを続けていくために、産休・育休明けの女性医師を時短勤務が取りやすいオンライン担当としたり、当院では初めて男性医師が育休を取得したりと、働き方の改革も進めています。

看護師や薬剤師など、他のスタッフも活躍されていますね。

医師や看護師、薬剤師の他、医療ソーシャルワーカー、事務スタッフ、ドライバーなど、多職種がいるからこそ幅広い診療が可能です。多職種が連携し、それぞれの視点だからこそわかることを大切にして、結果として患者さんのためにという方向に向かっていくことが重要だと考えています。院外との連携を強化するため専任のコーディネーターが加わり、各事業所や行政とのパイプ役として活動している点も特徴の一つです。今年の元日に起きた震災の際には、すぐに能登へ飛び活躍してくれました。患者さんのニーズだけでなく地域のニーズに応えるためには、医師だけではとてもカバーできません。患者さんの課題も地域の課題も同様にチームで取り組むため、スタッフ全員が率直に意見を交換できるよう環境を整えています。また、同じ患者さんを一緒に支える介護スタッフの皆さんとも連携を深めるため、交流の機会も持っています。

院外活動も盛んだとか。

大橋博樹院長 多摩ファミリークリニック4

薬剤師や看護師に相談できる窓口を設けていますが、それだけでは地域のニーズには応えられません。以前から「健康よろずカフェ」と称した健康相談会を開催しており、肩肘張らず、スタッフたちとランチを取りながら気軽にお話ができる機会をつくっています。他にも育児中のママをサポートする活動に力を入れていて、月に1度託児つきの赤ちゃんママ講座を開催しています。この地域で初めての育児をしているママさんの6割超が、1日12時間以上赤ちゃんと2人きりの時間を過ごしているそうです。孤立が不安を増長し、産後うつなどのリスクが高まることが懸念されます。特に気がかりが多い生後数ヵ月を当院で支え、その後は地域の子育てサロンへつなげるなど、行政とも連携しながら地域で支えられる体制づくりをめざしています。

充実したチーム体制で、地域のニーズに応え続ける

診療の際に心がけていることは?

大橋博樹院長 多摩ファミリークリニック5

一人の人間として接することを大切にしています。例えば、長年会社の役員として一生懸命働き、部下からも尊敬されていた方が高齢で寝たきりになってしまったとします。病院では年下の医師や看護師から「おじいちゃん」と呼ばれることがありますが、その呼び方だけでも傷つけてしまうことがあるのです。臨機応変な対応が必要ですが、最初は誰に対してもきちんとした態度で接するようにしています。また、医師一人ですべてを抱え込むことなく、スタッフと役割分担をしながら、それぞれの立場から患者さんの変化などを共有してもらっています。

患者さんとの印象深いエピソードがあれば教えてください。

幼い子どもから高齢の方まで診察しているので、ご家族の出来事に寄り添わせていただく機会は多いかもしれません。赤ちゃんの頃から通っていた子が小学校に入学したり、避妊や性病に関する話をしていた高校生から無事出産の報告をいただいたり、世代の移り変わりをご家族と一緒に経験させていただけるのは本当に貴重なこと。緊急で往診で行く際には家族もすっぴんだったり部屋着のままだったりすることもあって、ある種、医師というよりは家族や親戚のように感じてくれているのかなと思うこともあります。気軽に話せる関係を築けているのはうれしいですね。

最後に読者にメッセージをお願いします。

大橋博樹院長 多摩ファミリークリニック6

高度医療は大きな病院でしか受けられないというのは昔の話、在宅でも必要十分な医療を受けられる時代となりました。医師としても、治療後の生活や経過を長く継続して診られる体制は、大きなやりがいを感じられるものです。近年、当院の方針に共感した若いドクターが加わり、常勤6人に体制を拡充できたため、ますますお役に立てると考えています。子どもから大人までを診療する当院だからこそ、本当の意味での地域包括ケアを多摩地区で実践するお手伝いをするのが使命。地域包括ケアを受けるべき人は高齢の方に限らず、障害のある方、医療ケア児などさまざまです。多摩地区の地域包括ケアに関わる人たちをワンチームにしていく取り組みや仕掛けづくりに取り組んでいます。変化する地域のニーズに敏感に反応し、応えられるよう常に変化していくクリニックでありたいです。

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