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井出 広幸 院長の独自取材記事

大船心療内科

(鎌倉市/大船駅)

最終更新日:2022/04/05

井出広幸院長 大船心療内科 main

JR横須賀線の大船駅東口からのんびり歩いて5分ほどの場所にあるビル3階で開院予定の「大船心療内科」。主に立体駐車場として活用されているフロアの一画、少し秘密基地めいた立地で人目を気にせず通える同院は、大船エリアで20年にわたり心療内科診療を続けてきた井出広幸先生が、新たに院長として開院するクリニック。「これまでの心療内科診療のイメージを覆すための実践の場です」と語り、隣接するデイケアとともに非薬物療法を展開し、心の問題で休職せざるを得なかった会社員の社会復帰をめざす。身体面の健康を支える医師と看護師に加え、精神保健福祉士、臨床心理士らの協力タッグで精神面の問題解決へと導く同院がめざす医療について話してもらった。

(取材日2021年12月24日)

非薬物療法の実践の場として保険適用のデイケアを併設

近隣でクリニックを運営されている院長が、新たなクリニック開設に至ったきっかけを教えてください。

井出広幸院長 大船心療内科1

私は消化器内科の医師として腹痛などの症状に悩む方々の診療を続けるうち、器質的問題によらない、心の問題に起因する症状が確かに存在することに気づき、20年にわたり、身体の不調を診る内科・消化器内科と並行して、心の不調を診る心療内科診療を展開してきました。日々多くの患者さんを迎え、その多くが何らかの心療内科での受診となっていました。もともと、薬に依存することなく、心と身体の両面から症状に迫る診療を実践してきましたが、それをさらに推し進めた非薬物療法を臨床で実践する場として、当院の開業を決めました。ここでは、医療を担うのは医師や看護師だけではありません。精神保健福祉士や公認心理師といったスタッフも加わり、それぞれが高い専門性を発揮しながら患者さんを支えていく予定です。

具体的にはどのような医療を実践されるのでしょうか。

医師が診察するクリニックに、45坪のスペースを確保したデイケアを併設しています。ここでは、1日30人程度を上限とし、健康保険の枠内で、社会復帰をめざすデイケアを受けられます。クリニックの診察のみでは、時には分単位のせめぎ合いもあり、一人ひとりの患者さんに十分に時間を取ることができるとはいえないことも。デイケアでは朝9時から午後4時までと十分な時間を確保することができますので、一人ひとりに必要な対応をじっくり時間をとって提供することができるでしょう。

どのような方が対象となるのでしょうか。

井出広幸院長 大船心療内科2

デイケアではグループ療法も重要なものとなり、あまり幅広い患者さんを対象とすると集団で扱うことが困難となることが予想されます。そのため、まずは復職をめざす会社員の方に限定してスタートさせていただきます。もちろん、心の問題を抱える方は会社員に限らず、中高生や高齢者まで多様ですので、こちらでの取り組みが順調にいけば、次は若年者を対象とするデイケアを開設するなど、今後徐々に対象者を広げて展開していきたいと考えています。

多職種が高い専門性を持ち寄ることで、可能性が広がる

デイケアでは具体的にどのようなプログラムがあるのですか。

井出広幸院長 大船心療内科3

まずは週に5日、9時から16時までクリニックで過ごしていただくことで、生活のリズムを整えていきます。クリニックでの時間は、体を動かす軽いエクササイズや栄養についての学び、心を適切に機能させるためのトレーニングとしてマインドフルネスなどに取り組んでいただきます。グループ療法でコンディション調整に取り組みつつ、同時にプライベートな問題には個人カウンセリングで迫ります。さらに、身体の問題については医師が対応し、グループ療法、個人カウンセリング、医師の診察の三位が一体となって、それぞれの患者さんの社会復帰を支えていきます。

医師以外のスタッフについて、それぞれの役割を教えてください。

クリニックでの診療は医師が中心となりますが、デイケアでは看護師、精神保健福祉士、公認心理師や臨床心理士といったスタッフが主役となって患者さんを支えます。看護師は主に身体のことを中心に、食欲はあるか、十分に眠れているか、正しく服薬を続けているかなどを確認し、アドバイスを行います。精神保健福祉士は、復職後に戻ることとなる環境を調整するためにできることを、患者さんと一緒になって考えます。例えば、威圧的な上司との折り合いが悪く心の問題を抱えてしまったようなケースでは、人事のキーパーソンにアプローチして、当人との接触を避けることができないかを探ります。公認心理師・臨床心理士は、患者さんが自分を知り、心の状態を把握することを手助けします。ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)という先進のアプローチを取り入れ、患者さんが自分らしく成長し、前向きに生きていけるようにサポートしていくのです。

多方面からのサポートが受けられるのですね。

井出広幸院長 大船心療内科4

多職種が分業することで、より専門性が高まります。そして、心の問題の本質に迫る医療では、そこから大きな可能性が広がると考えています。これまでも、運営するクリニック内の医師や看護師などスタッフ教育にも力を入れてきました。ここではさらに幅広く志を同じくする仲間とともに取り組むことで、ともに成長する場としていければと考えています。

心の医療とは、自分らしく生きるための教育であり訓練

患者さんだけでなく、スタッフさんにとっても成長の場なのですね。

井出広幸院長 大船心療内科5

患者さんに接する際、私たちは決して「病気の方」と思って接することはありません。患者さんも、私たち医療者も同じ人間として、多くの問題を抱えています。そうした問題を見つめ直し、一緒に成長しましょうというスタンスで向き合っていきます。人は誰しも特性を持っていて、それが裏目に出るとマイナスの悪循環に嵌ってしまうことも。しかし、特性は特性であり、決して病気ではないのです。心の問題に向き合う医療は、それぞれの特性をどうすれば有利に生かせるかを考え、「自分はダメ」という決めつけや思い込みを解消するための訓練です。スポーツや楽器の演奏と同じように、訓練によって自分らしさを生かしてより良く生きられることをめざすのです。

心の問題に悩む方はもちろん、現時点で問題を抱えていない人にとっても有用な訓練になりそうですね。

そのとおりです。当院で提供する診療やデイケアでのプログラムは、復職希望者が対象ではありますが、決して復職そのものが目的ではありません。自分らしさを取り戻し、生き生きと日々を送ることこそが、その目的なのです。心の医療を突き詰めると、教育に行き着くと私は考えています。偏差値重視で受験勉強に追い立てられる現在の教育に抜け落ちている、人とのつながりや信頼関係をつくることや、他人と自分自身を大切にすることなどを取り戻す学習です。精神医療の世界で培われたこうしたメソッドを、それを必要とするより多くの人に届けることも、私たちの使命だと考えています。

読者へのメッセージをひと言お願いします。

井出広幸院長 大船心療内科6

縁あってクリニックを開設することとなったテナントは、立体駐車場の一角にあり、外部からの視認性ゼロという、少し変わった立地です。通りすがりの方から見えない、いわば「秘密基地」のようなこの場所で、新しいアプローチに挑戦していくことに、私自身待ち遠しい思いです。朝起きた時、あるいは出勤のために玄関を出るのがつらいと感じたら、ためらうことなく医療を頼っていただきたいと思います。つらい環境を強いられる中でのそうした心の動きは、決して病気ではなく、人間であるが故の当たり前の反応です。薬だけに頼るのではなく、本質に迫る医療があります。休職中の過ごし方がわからないという方、休職中の家族との接し方に悩む方、今後どうすれば良いのかわからないという方に、ご相談いただける場所にしたいですね。

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