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前原 優一 院長の独自取材記事

まえはらクリニック

(熊本市中央区/新水前寺駅)

最終更新日:2021/12/08

前原優一院長 まえはらクリニック main

熊本市電・水前寺公園駅から県道103号「ふれあい通り」を南に徒歩15分ほど進むと、左手に「まえはらクリニック」が見えてくる。日本腎臓学会腎臓専門医として長い経験をもつ前原優一院長は、透析を行わない方針で同院を開業。院内には歯科を併設した、あまり見ないタイプのクリニックだ。もちろん、医療として透析を否定しているのではない。目の前の患者にとって本当にその方法が合っているのかを、患者と一緒に考えて実践する前原院長がたどり着いた、腎臓内科の1つの形なのだという。取材中、何度も口にした「患者さんと一緒に」という言葉からは、患者に対する温かな思いが感じられた。

(取材日2021年11月2日)

生活習慣病対策のために歯科も併設

クリニックの特徴を教えてください。

前原優一院長 まえはらクリニック1

当院は内科・腎臓内科のほかに歯科も併設し、腎臓内科では透析治療を行わない方針のクリニックです。腎臓の病気は治すことができず大半が透析にいたると思われがちですが、現代は腎臓の治療薬も、随分改良されています。当院を開設したのは、透析が必要なほど重症化する前に、患者さんと一緒に腎臓を守るクリニックをつくりたかったからなんです。そのために、当日中に結果が出る検査機器をいくつも用意しました。検体を外注に出すと、結果を患者さんにお伝えするまで2週間ほどかかってしまうことがあります。その間に何もできずに、腎臓の機能が戻らないほど悪化してしまう可能性もあります。検査結果に基づきその日のうちに投薬を始めることが、早い段階での病態の改善に役立つというケースは少なくありません。

どのような患者さんが来院されるのでしょうか。

高齢の方が多い印象ですが、一般内科や歯科ではファミリー世代の患者さんもいます。地域的には熊本市内の方が多く、遠くは小国や県北・県南、天草から通っている方もいます。他院で腹膜透析を勧められていた患者さんの中には、まだ透析の必要がないと思われる方もいます。治療薬が開発されていない時代に糖尿病による腎臓病になり、十分な治療が受けられず透析を続けている方も多いのですが、近年は薬も改良されているので、糖尿病由来で透析に至る人は減っているようです。医学がもっと進んだら、いずれ透析がいらなくなる時代が来るかもしれませんと、私も患者さんを励ましながら診療にあたっています。

歯科が併設されているのは珍しいですね。

前原優一院長 まえはらクリニック2

腎臓病は、考え得る原因すべてについて検査し、介入すべき病気です。腎臓病に至る原因にはさまざまなものがありますが、一般的には高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病や内科的疾患が知られています。近年になって、生活習慣病に歯周病が大きく関わっていることもわかってきました。5年くらい前から、腎臓疾患の患者さんに向けた情報として、歯周病を治療しましょうと伝えてきましたが、わざわざ歯科医院に行くかどうかは患者さん次第という部分もあります。それなら当院で歯科も診るようにすればいいと考えました。確かに全国的に珍しいでしょうが、そこまで徹底するのが当院のスタンスです。

透析を行わない腎臓内科を志したきっかけ

専門に腎臓分野を選んだ理由を教えてください。

前原優一院長 まえはらクリニック3

腎臓の働きは非常に精密で、目立たないけど心臓や脳の働きを支える大切な臓器であると医学生時代に学び、教科書の域を超えた書物を読むほど興味を持っていました。いざ研修が始まると、治療法がなく腎不全に至る症例を多く経験。医師2年目で福岡の九州医療センターに配属されたのですが、そこでは毎日脳卒中の患者さんが運ばれてきて、緊急治療が行われていた状況に衝撃を受けました。救急の現場で毎日くたくたになって働く中、助けられなかった患者さん、後遺障害が残る患者さんを目の当たりにし、急性期の治療以上に予防が大切と思うようになりました。医師4年目には九州大学で基礎研究に携わることになり、学位も取れて8年目に故郷の沖縄に戻りました。そこで私にできることは何かを改めて考え、ずっとやりたかった腎臓分野の治療を、腰を据えてやっていこうと決めました。脳梗塞や心臓病を増やさないために腎臓を守ることが一番大切だと確信しました。

どうして透析をしない方針にしたのでしょうか。

勤務医時代、東京大学で腹膜透析を研究している先生のもとに、勉強に行く機会がありました。最初、私は治療方法の取得にしか目が行かなかったのですが、先生は「腎臓の病気は治らないかもしれないが、だからといって何もしなくていいわけじゃない。患者さんがその人らしく生きていけるよう、その人生を知ることで医療的な介入の仕方を考えることが大切」と教えてくれたんです。透析は治療方法の1つに過ぎませんし、薬も進歩しています。たった1日の経験でしたが、私の医師人生のターニングポイントになりました。患者さんとの接し方も大きく変わり、外来でも話す時間をできるだけ取るようにしました。誰でも、生活環境が大きく変わる透析や脳梗塞、心筋梗塞は避けたいと思っているはずです。そのような思いの患者さんたちの力になりたいと思い、透析や寝たきりにならないようにする治療方針のクリニックをつくろうと思いました。

診療の際に心がけているのはどんなことですか。

前原優一院長 まえはらクリニック4

当院ではどのステージの腎臓疾患の方でも診察します。例えば食事制限があっても毎日を楽しく過ごしたい患者さんなら、お気持ちに近づけるようにします。医療は一人ひとりの生き方に合わせて異なるもので、患者さんと話し合いながら、満足していただける医療を提供する方針です。ただし、間違った治療というものもあります。そこは絶対に踏み越えないよう、患者さんが利用している薬やサプリメントなどが腎臓に良くないと思ったら、しっかり話をしてやめていただきます。また、スタッフ自身が「自分や家族、大切な人に受診してほしいと思うクリニックでありたい」と考えています。利益のための検査や診療は、スタッフが一番よくわかっていますから。スタッフは歯科を入れて10人いますが、みんな私の方針をわかってくれています。

「ゆいまーる」をモットーにみんなと幸せをつくりたい

休日の過ごし方を教えてください。

前原優一院長 まえはらクリニック5

出身は沖縄の宜野湾市です。太平洋にも東シナ海にも行ける距離なので、3歳から釣りを楽しんできました。中学生の頃には週末になると自転車で友だちと釣りに出かけて、自分で魚をさばくこともできるようになりました。開業してから忙しくて、磯釣りには行っていません。自分の子どもたちをたまに釣り堀に連れていくのが精一杯です。中学時代には野球もやっていて、県大会の出場経験があります。高校は進学校に進んだのですが、それでも野球が好きで、医学部受験を決めるまで続けていました。熊本でも地域の草野球チームに所属していたのですが、新型コロナウイルス感染症の流行で集まることができなくなり、そうこうしているうちに開業準備で時間がなくなってしまいました。今できる趣味は熱帯魚の飼育と、ストレス解消に音楽を聴きながら歩くことくらいですね。

医学部進学を決めたのはどうしてですか?

子どもの頃、親からもらった本に野口英世の伝記があったんです。困っている人を助けるために働く人生もあると知って、自分もそういうふうになれるんじゃないかと思うようになりました。私自身、真夜中に突然呼吸困難になって、車で1時間かけて沖縄中部にある沖縄県立中部病院の救急科外来に運ばれたことがありました。そこで「お医者さんはすごいな」という感情が根づいたんですね。実家は医業ではなく、教師の家系です。もしも医師になっていなかったらきっと教師になっていたと思います。姉と弟がいるのですが、二人とも教師になりました。でも私は小さい頃に抱いた思いを実現するために、医学の道を選びました。

クリニックのこれからの目標と、読者へメッセージをお願いします。

前原優一院長 まえはらクリニック6

沖縄には「ゆいまーる」という言葉があります。互いに助け合い、目的に向かってみんなで取り組んでいこうという意味の言葉で、目的というのは幸せになることを指しています。当院もみんなの輪の中にいて、患者さんとご家族、地域の人たちの暮らしを支えていけるクリニックになりたいのです。腎臓内科や内科でも、生活習慣病の管理でも、すべての患者さんにしっかりと説明して話し合い、納得していただける方針で治療を進める姿勢を貫きたいと思っています。当日中に結果がわかる検査もできますので、すぐ診断してすぐに治療に入ることもできます。まずはお気軽に来院いただければと思います。

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