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河村 武人 院長の独自取材記事

みどりの森メンタルクリニック成城

(世田谷区/成城学園前駅)

最終更新日:2024/02/02

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城 main

成城学園前駅から徒歩約2分の医療ビル4階にある「みどりの森メンタルクリニック成城」。東海大学医学部付属病院精神科や丹沢病院で、軽症患者から入院を必要とする重症の患者まで、さまざまな心の病に悩む患者の診療にあたってきたという河村武人院長が、それらの経験を生かしながら、地域のクリニックだからこそできる一人ひとりの心に寄り添った診療を実践したいと2021年7月に開業した。「精神疾患には診断が非常に難しいものもあり、中には『10年同じ薬を飲んでいるが一向に変わらない』という人も。そうした方々に対しても、多方面から時間をかけてアプローチし、改善をめざす地域のクリニックならではの診療を提供したいと考えています」と話す。そんな河村院長に、診療にかける思いやクリニックの特徴などを聞いた。

(取材日2023年11月27日)

広い視野から原因にアプローチする精神科診療を実践

どのような思いでクリニックを開業されたのですか。

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城1

大学病院や総合病院の精神科で長く診療をしていると、「もう10年通っているが良くならない」という人も。当初は「処方された薬をきちんと服用していないのだろう」と思っていたのですが、お話を伺うとちゃんと飲んでいるにも関わらず、期待される変化が得られていないのです。一人ひとりの診療に十分な時間をかけづらい病院診療では、そのまま同じ薬を処方し続けてしまっていることもあります。さまざまな種類がある精神科疾患では、病気によって使う薬も異なります。しかし、双極性障害のように年単位で継続的に診察してようやく診断が下せる病気があるなど、精神科の病気はとても診断が難しいものも多いのです。なぜこのような状態に至ったのか、時間をかけてじっくりと掘り下げながら、原因に迫る治療を行わなければ、泥沼のように治療が続いてしまうことに。広い視野から原因にアプローチしていく診療を実践するため、当院を開設しました。

誤った診断により不適切な治療が続いてしまうこともあるということでしょうか。

例えば、うつ状態が続いていて抗うつ薬を使用しても改善が見られない男性で、実は男性更年期障害(LOH症候群)による症状だったというケースも考えられます。勃起不全(ED)や筋肉量の低下、体毛の変化などが見られるLOH症候群では、不眠やイライラ、抑うつの症状が出ることがあります。しかし、男性の更年期障害に対して広く知られておらず、うつ病などと勘違いされてしまうことも多いのです。LOH症候群は男性ホルモンの低下により起こるものであり、抗うつ薬の投与ではなく、テストステロン補充療法を行う必要があります。このように、もし治療をしていて期待される成果が見られない場合には、別の視点を持つこともたいへん重要です。

男性更年期障害(LOH症候群)に悩む方は増えているのですか。

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城2

女性に限らず男性にも更年期障害があるということが、少しずつ知られるようになってきたことで、治療につながるケースは増加傾向です。しかし、ストレスやうつ病による症状だと思い込み、適切な治療につながっていないケースもまだまだ多いと考えられます。そうした現状を鑑み、治療の選択肢を増やす意味で、男性ホルモンが関わる病気についての学びを深め、テストステロン補充療法を行うための勉強もしてきました。この療法では従来筋肉注射が一般的ですが、当院ではより手軽に使える塗り薬の処方も可能です。

心理検査を通した自身の特性理解を、治療につなげる

患者さんご自身がご自分の特性を理解するために心理検査を行っていると伺いました。

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城3

臨床心理士が心理検査を行い、その人の特性、言い換えれば一人ひとりの心の癖を理解し、それぞれに即したオーダーメイドの治療を行っています。心理検査には、人格検査や知能検査などいろいろな検査がありますが、私が重視しているのがWAIS-IV(ウェクスラー成人知能検査)と呼ばれる知能検査と、MMPI(ミネソタ多面的人格目録)という人格特徴の検査です。ほかにより簡便で時間のかからない検査も用いています。WAIS-IVには10個の基本検査があり、結果は言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度の4つの指標で表され、そこから総合的なIQも算出されます。この検査によって4つの能力にどのようなばらつきがあるかがわかります。MMPIでは550の質問があり、マークシートで答えます。この検査は本人の性格特性を多面的に測定していくもので、初診でいきなり実施するのではなく、必要なタイミングで行っています。

検査によって、具体的にどのようなことがわかるのですか?

これらの2つの検査で、事務処理能力的な部分と性格の傾向が見えてきます。私は、この両方を組み合わせて患者さんを診ることが大切で、それで初めて人の心がある程度わかるのだと考えています。仕事や社会生活は人と人との関わりですから、人間関係を円滑にするには、知的能力が仕事で求められる水準を満たしていなくてもうまくいかないですし、心の部分で問題がある人もうまくいかないでしょう。ですから、まずは自分の能力や心の癖を理解して、周囲に認めてもらうことが重要です。当院では、これらの検査からわかったことをオリジナルの図にしてまとめたものを「あなたの取扱説明書」として提示し、説明させていただきます。もちろん、検査により病気の原因すべてを解説できる訳ではありません。とはいえ、ご自身の心を数値化するということは、これまで経験したことのない方にとって大きな意味のあることだと考えています。

診療の際に心がけていることは何ですか?

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城4

自動販売機のような機械的な診療は、決してしないと心に決めています。短時間の診察で薬だけ出して終わりということはせず、患者さんとの対話を大切にしています。患者さんがなぜそのような状態になったのか。背負っているものは何なのか。その方のバックグラウンドまでよく理解した上で診察するよう努めていて、初診には30分以上、再診では10分程度かけて患者さんとお話しするようにしています。クリニックは、患者さんが心の奥にたまった膿(うみ)を吐き出す場所だと思います。最初は話しにくいと思いますので、できるだけ話しやすい雰囲気づくりにも配慮しています。時間をかけて話をしていく中で信頼関係を築いて、患者さんがどんな心の膿でも心置きなく吐き出せるクリニックになれればと思っています。

表面的な症状の下にあるものを掘り下げることが大切

医師をめざされ、精神科を志望されたきっかけは?

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城5

若い頃、長期にわたり体調を崩したことがありました。その時、たまたまかかった病院の医師に処方してもらった薬が自分に合っていたんです。その医師にとても感謝しましたが、治療を継続するうちに機械的な診療になり、疑問も感じ始めました。そんな体験から、自分が医師となって、患者さんの話を親身に聞いてあげられる診療を行いたいと考えるようになったことがきっかけです。そして、私が得意とする「人の話をじっくり聞く」ことを生かしながら、一人ひとりの患者さんに合った診療を一緒に考えていけるのを魅力に感じて、精神科を志しました。

精神科・心療内科の受診をためらっている方も多いと思いますが。

仕事に行きたくない。会社に行こうと思うと吐き気がする。夜眠れない。食事が喉を通らないなど、ちょっとおかしいなと感じたら早めに受診してください。これらの症状は表面に現れたもので、その下に何があるのかを掘り下げることが大切です。脳が長くストレスにさらされ続けると神経がそれだけダメージを深め回復機能が失われてしまいますので、早めの受診をお勧めします。

最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城6

一人ひとりの心の癖を理解してサポートしていきたい。また、精神的な理由で社会から離れてしまった方があれば、復帰の方向へ進めたい。それが、私の働くエネルギーです。開業から2年を超えて、ご紹介などで受診される近隣の患者さんも増え、たいへんありがたく思っています。今後も成城の街に根差して皆さんの心を支える診療を続けていきたいと思います。いつもと少し違う、心が弱っていると感じたら、抱え込まずに、気軽にいらしてください。精神科に行くことがまず1つ目のハードルだと思いますが、どうしたら良いか悩んでいる場合は、お電話でお問い合わせいただいても良いでしょう。当院のスタッフ一同が、患者さんの力になりたいという気持ちで対応をさせていただいています。

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