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富澤 治 院長の独自取材記事

とみさわクリニック

(松江市/東松江駅)

最終更新日:2022/05/19

富澤治院長 とみさわクリニック main

松江市八幡町の、国道9号線から住宅街に入ってすぐの場所にある「とみさわクリニック」。東京の大学病院等でうつ、パニック障害、摂食障害、不登校やリストカットなどを長年にわたり診てきた富澤治(とみざわ・おさむ)院長が開業したクリニックだ。患者のプライバシーに配慮し落ち着いた雰囲気のある同院では、幅広い精神科領域の疾患に加え、摂食障害や不登校にも専門的知識を持って対応する。カウンセリングなど、薬物治療以外のアプローチにも注力していることも特徴の一つだ。「患者の人生に寄り沿って、自立や治療の終結まで支えていく」。そんな真摯な思いを持って診療にあたっている富澤院長に、開業までの道のりや、精神科診療への想い、診療方針について話を聞いた。

(取材日2022年4月22日)

大学病院での豊富な臨床経験を生かした治療を

医師をめざされた理由からお伺いしてもいいでしょうか?

富澤治院長 とみさわクリニック1

はい。そもそも医師をめざしたのは、内科の医師をしていた母の影響があったと思います。子どもの頃から母が診療している様子を見てきましたし、夜遅く電話が鳴って往診に出かけて行った姿も覚えています。やりがいのある仕事だと幼いながらも理解していました。精神科を選んだのは、佐賀医科大学に入り精神科領域の書籍やテキストを読んで、興味を持ったことがきっかけです。数字やデータではっきりと結果が出るものと違い、必ずしも答えが一つではない精神科の領域。とても難しい分野ですが、生涯をかけて探究したいと思えました。1987年に大学を卒業した後は東京医科大学病院神経科へ入職し、そこからの約27年間は東京医科大学病院をはじめ、都内の総合病院、精神科病院などで勤務しました。

大学病院などではどんな方を診てきましたか?

大学病院や総合病院では、うつやパニック障害、摂食障害といったメンタルヘルスの問題を抱える人に幅広く対応してきました。また、身体疾患があって通院・入院している患者さんの精神面のケア、終末期医療における患者さんの不安、ストレスを緩和する治療も担当させていただきました。そして、働く人のメンタルケアにも取り組んできましたね。保健師などと相談しながら、メンタルの不調で休職している方のケア、復職に向けたサポートや職場環境を整えるアドバイスなど、患者側と企業側の橋渡しのような気持ちで、解決に向けて支援を行ってきました。

ご自身で開業しようと思ったきっかけは何ですか?

富澤治院長 とみさわクリニック2

母の死が大きな転機になりました。母は今のクリニックがある場所に内科医院を営んでいたのですが、母の葬儀では家族や親族に加え、母が診ていた地域の患者さんまでもが参列してくださったんです。多くの方が母の遺影におじぎをして見送ってくださる光景を見て、「自分は医師として母にはかなわない」と感じました。その当時、私は長年勤務を続けてきた大学病院で、医局長を任されるまでになった頃でした。上層部といわれる位置にいて、後輩の医師たちを指導する立場ではありましたが、母が築き上げてきた患者さんとの関係性には及ばないと思ってしまったのです。一人の医師としての姿勢、考え方が変わった瞬間でした。それを機に自分自身のクリニックを開こうと考え、2年後に西新宿に「とみさわクリニック」を開業。そして2014年に松江に帰り、母の診療所だった建物を改装してクリニックを移転してきました。

うつ・不眠症・不登校・摂食障害など幅広く対応

こちらはどのようなクリニックなのでしょうか?

富澤治院長 とみさわクリニック3

当院では、メンタルの病気として耳にすることが多い、不眠症やうつから、不安障害、パニック障害、そして認知症まで一般的な精神科の領域を広く対応しています。必要があれば薬物治療を行っていきますし、入院の紹介も行っています。また、薬の治療だけでなく、心理的な治療としてカウンセリングなどにも注力しているのが当院の一つの特色でしょうか。音楽や絵などの芸術表現を介在させるようなアプローチも行っていますね。ほか、心療内科・精神科の治療に関する医療情報・セカンドオピニオンの提供も行っています。専門的に対応するクリニックの少ない摂食障害や不登校・ひきこもりなどのカウンセリングには特に力を入れていますね。

富澤先生のご専門の分野について詳しく教えてください。

一つは不登校やひきこもりです。いじめ、対人関係などが原因で不登校や引きこもりになるものや、発達成長の段階が理由で環境に適応できないことが要因となるものなどのさまざまなケースがあります。一つの結果として「学校に行けていない」「部屋から出られない」状態になっているのであり、それ自体は病気ではないことを知ってほしいです。そもそも「不登校」という言葉自体、学校に行くのが当然という前提による言葉ですが、フリースクールの活用など、もっと柔軟性を持って捉えてあげてほしいですね。当院では、その背景に何があるのか、要因は何なのかを医学的な見地の部分と、その人の固有の背景をしっかりと診て、対応の方針を考えていきます。また、不登校やひきこもりの方の場合、クリニックに来ること自体大変なことも多いので、当院ではオンライン相談のサービスも行っています。相談や治療の第一歩としてご活用いただければ幸いです。

摂食障害についても詳しく教えてください。

富澤治院長 とみさわクリニック4

摂食障害の中にもさまざまな症状があるのですが、まず若い世代に多いのが「拒食症」です。「痩せていること」や「体重を減らすこと」に自分の価値を見出している状態であるケースが多く、意図的に少なく食べたり、食べないという行為の結果、病的に体重を減らしてしまっている方もいらっしゃいます。この考えにとらわれてしまった結果、体調を崩すなどの不具合が起きてくると医療介入が必要になります。その対になるのが「過食症」という病気で、こちらは食事量をコントロールできなくて食べてしまうもので、苦しくて食べたくないのに食べてしまう方もいらっしゃいます。拒食症の反動が典型的な例ですが、気分が落ち込んだり、イライラすることで過食してしまうことも。拒食症や過食症の治療の多くは、自分の価値を人との関係性や仕事のやりがいなどの中から見つけて認めていくことが重要となるため、心身両方の状態に寄り沿って治療していきます。

患者の自立とその後の人生を見据えた支援を

先生が診療の際に大切にしていることは何ですか?

富澤治院長 とみさわクリニック5

薬の治療だけでなく、「なぜこうなったのか」という根本からアプローチしていくことが大切だと考えます。人間は生まれて、成長し、老いて、いつかは必ず亡くなります。当たり前のことですが、元気な時は「死」を意識することは少ないでしょう。しかしいざ病気になり死を身近に感じると、「なぜ自分だけ」「他の人は生きているのに」と考えてしまうことも。健康な時は意識していなかった、自分自身の生活や人生の意味を問い直す方も多くいます。だからこそ診療の際は、患者さんが何を求めているのかを注意深く診るようにしています。言葉で言えないこともあるし、ご自身で気づいていない人もいます。病気になってしまった事実は変えられませんが、それをどう受け止めて、これからどう自立して生きていくのか。それを一緒に考えていくのが私の役割だと思っています。

精神科を受診することをためらっている人もいるかと思います。

精神科を受診することに「ハードルが高い」「抵抗を感じる」というのは普通のこと。例えば、腰が痛いけどすぐに病院には行かない、歯が痛くてもすぐに歯科医院に行かないように、多くの人にとって医療機関を受診することはハードルが高いものだと思うからです。しかし「会社に着くと心臓がバクバクする」「朝起きて着替えたけど一歩も家を出られない」といった状態の時は、何かを変えなくてはいけません。体の不調と同じで、限界まで頑張らずに一度相談をしてほしいです。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

富澤治院長 とみさわクリニック6

はい。体の病気は治療によって元に戻していくことをめざしますが、精神科の病気は病気になる前の自分と後の自分では、生き方・価値観が変わってきます。そういう意味では、元の自分に戻るというよりも「新しい自分になる」といったほうが近いかもしれませんね。病気になり、それまでの健康が損なわれることはもちろん不幸なことに違いありません。しかしたとえ何かが損なわれても、病気や困難、さまざまな悩みをきっかけとして新しい自分になり続けることは、自分の人生を創造していく上での糧になると私は考えます。人生を意味あるものとするために、皆さんのお力になれればと思っています。

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