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若林 聡子 院長の独自取材記事

富士見台診療所

(練馬区/練馬高野台駅)

最終更新日:2023/04/04

若林聡子院長 富士見台診療所 main

東京・練馬区で耳鼻咽喉科を標榜する「富士見台診療所」は、難聴乳幼児の通園施設「児童発達支援センター 富士見台聴こえとことばの教室」に併設された、珍しい成り立ちの診療所だ。診療所と通園施設は扉一つで隔てられ、通園施設に通う子どもたちを、診療所を預かる若林聡子院長が必要に応じていつでも診察できる仕組みになっている。聴力検査室や廊下に顔を見せる子どもも立ち働く大人も皆一様に表情が明るく、ここが単に難聴をサポートするための医療施設ではなく、社会に羽ばたく前の子どもたちが力を蓄え、それを知識と経験を備えた大人の集団が応援している場所だとわかる。旧診療所をリニューアルして張りきる若林院長に、難聴診療のことや診療所の役割などについて聞いた。

(取材日2023年3月1日)

難聴の子を成長後もずっとサポートできる診療所に

先生がこの場所に診療所を開くことになった経緯を教えてください。

若林聡子院長 富士見台診療所1

当院が入るこちらの通園施設は、社会福祉法人富士見会の創立者である徳光裕子先生が50年以上前に開設したものです。建物内に徳光先生が耳鼻科や内科を診る診療所がありましたが、徳光先生が2017年に亡くなった後、しばらく閉鎖状態になっていました。その間、私の大学の先輩にあたる南修司郎先生が施設の嘱託医として関わっていましたが、やはり常勤の医師が必要だと施設の中から声が上がったため、南先生が私に声をかけてくださり、それに応えて2020年の夏に「富士見台診療所」を開設しました。私はそれまでずっと病院勤務だったので診療所は初めてで、院長を引き受けるかどうか迷いましたが、難聴に特化した通園施設に併設された珍しい環境に心を動かされ、覚悟を決めました。

診療所と通園施設の連携について教えてください

通園施設には最初0歳で来られるお子さんが多いので、聞こえの評価をするとき、大人のように「聞こえたらボタンを押してください」という検査ができません。大きな病院に行けば眠りながら脳波を確認する検査も可能ですが、頻繁に行うわけにはいきませんので、乳幼児用の検査を繰り返し行って、聴力を判断しています。お子さんが環境に慣れていると警戒心が少ない状態で検査することができますので、通園施設と診療所が隣接している環境はやりやすいですね。あと、難聴のあるお子さんは急に聞こえが落ちることもあります。日頃、通園施設で療育にあたっている言語聴覚士のスタッフが「前よりも音への反応が良くないかな」とか、「補聴器の状態が悪いみたい」などと変化を察知したら、すぐに私がチェックさせていただいています。

院長に就任して3年目、どんな診療所をめざしていますか?

若林聡子院長 富士見台診療所2

難聴の方々が安心して生活できるよう、少しでもお手伝いしていきたいと同時に、地域の耳鼻科疾患でお悩みの方々の相談窓口でいたいと思っております。難聴のお子さんは成長とともに頻繁に病院に行く必要はなくなっていきますが、補聴器や人工内耳などのトラブルがあったときなど急に困ったことになる場合が多いんです。病院で治してもらおうとしても今までの経過がわからないと対応が難しい場合もありますからね。当院では小さい頃からの詳細な記録を残しているので、引っ越して遠方にお住まいの方でもすぐにご相談に乗れます。また地域の方々にとって気軽に頼れる存在でいたいと思っていますので、こんなことで受診して良いのかな、ということでもまず足を運んで相談してもらえる診療所でいたいなと思います。

遊びながら聞こえを検査できる防音室など充実した設備

子どもの難聴診療とはどういうものか教えてください。

若林聡子院長 富士見台診療所3

昔はお子さんの難聴が早期に発見されにくく、2~3歳になって言葉が出ないことでようやく気づくケースも少なくありませんでした。もし、難聴の発見が大きく遅れてしまうと、それから言葉を覚えるのは困難になることもあります。今は新生児の聴覚スクリーニング検査が普及し、0歳で難聴が発見される可能性が高くなりました。音声を聞いて言葉をみにつけていくようにするためには、難聴のあるお子さんが補聴器や人工内耳を使い始めるのは、早い方がいいと言われています。音がしっかり脳に届けば、周囲の音から学習して言葉がでるようになり、自然な発音を身につけることも期待できます。早期に難聴が発見できたことを大いに生かし、聞こえをサポートすることで、お子さんが持っている力を最大限に生かすことをめざします。

診療所の設備にはどのような特徴がありますか。

耳鼻科のクリニックで聴力を検査するときは、電話ボックスのような装置に患者さんが入り、検査者が外から操作するのが一般的ですが、この診療所では一部屋がそっくり防音してあり、そこを聴力検査室として利用することができます。お子さんがゲーム感覚で遊びながら検査を進められるほか、1人では心配なお子さんの場合には保護者の方も一緒に入室でき、親子を無理に分離しなくても検査が可能です。また、スクリーニング用のOAE(耳音響放射)機器や、脳波を調べるABR(脳性脳幹反応)機器、乳幼児聴力検査室など、充実した検査環境が整っています。

一般耳鼻科の診療にも対応いただけるのですね。

若林聡子院長 富士見台診療所4

そうです。当院は地域のかかりつけ医です。耳・鼻・のどの炎症や花粉症、めまいなど一般耳鼻科診療はもちろん、補聴器の相談や予防接種などにも対応しています。立地柄併設する通園施設の子ども専門の診療所と思われがちですが、決してそんなことはなく、乳幼児から高齢者の方の全世代の診察、治療に対応していますので、何かお困りのことがあれば、皆さん気軽に受診していただけたらと思っています。

不安を乗り越え成長していく子どもたちの姿がうれしい

難聴のお子さんやその親御さんに対しての想いを教えてください。

若林聡子院長 富士見台診療所5

お子さんに難聴があるとわかったとき、親御さんは大きな不安を抱えることが多いと思います。その不安を一瞬で取り除くことはできませんが、通園施設に通う、補聴器や人工内耳を活用しているお子さんたちを見て、わが子の数年先はこんな感じかなって明るい見通しを持って、少しずつでも不安が和らいでいくといいなと思います。お子さんたちにも、補聴器や人工内耳を使っていることを、自分の個性の一つとして受け止めて自信を持って成長していってほしいです。難聴のお子さんとご家族が、通園施設の言語聴覚士の力を借りて大きく成長する姿を間近でみることができるのは、私にとって非常にうれしく、とても貴重な経験です。成長の過程で必要となるサポートをできる限り提供していきたいと思います。

先生はどうして耳鼻咽喉科の医師になろうと思われたのですか?

耳鼻咽喉科を選んだのは、耳・鼻・喉に関する病気である限り、お薬で治療するにしろ、手術をするにしろ、あるいはフォローアップをしていくにしろ、それらをすべて自分の科の中で完結できるところに魅力を感じたからです。あとは、がんやアレルギー、音声、聞こえなど専門分野の数が多いこと、患者さんの年齢が幅広いところにも興味を惹かれました。私の専門は難聴診療です。聞こえというのは日常生活を支える大事な部分ですが、耳の構造はとても複雑で、まだわかっていないことも多いんですね。でも、複雑だからこそ学びがいがあります。

読者に向けてメッセージをお願いします。

若林聡子院長 富士見台診療所6

この診療所はお子さんだけでなく大人の方も受診できる耳鼻咽喉科で、検査機器もそろっていますから、ちょっとでもご心配のある方は、安心するためにも一度チェックに来られるといいと思います。また、もしかするとご自身のお子さんが難聴かもしれないと思っていても、いろいろな不安があって受診をためらっているという親御さんもいらっしゃるでしょうが、ここではお子さんに遊んでもらいながら検査ができます。どうぞ安心してお越しください。

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