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中村 涼 院長の独自取材記事

おさきマタニティクリニック

(貝塚市/蛸地蔵駅)

最終更新日:2024/05/28

中村涼院長 おさきマタニティクリニック main

蛸地蔵駅と貝塚駅の間の住宅街にある「おさきマタニティクリニック」には、自然なお産を望む女性が多く通う。2019年より2代目院長を務める中村涼先生は、日本産科婦人科学会産婦人科専門医であり、総合病院で多くのお産に従事。同院では「一人ひとりに寄り添う優しい医院」の理念のもと、患者との絆を大切に一回一回の妊娠・出産をサポートしている。婦人科診療ではプライバシーや気軽に受診できるようにするための配慮をし、更年期障害の治療では多岐にわたる症状に対し個別にこまやかなアプローチを実践。幅広く産婦人科医療を行っている中村院長に、同院の特徴や診療にかける想いを聞いた。

(取材日2023年10月12日)

出産のダイナミックさに惹かれ、産婦人科医の道へ

先生はなぜ産婦人科医をめざされたのでしょう。

中村涼院長 おさきマタニティクリニック1

父が内科の医師だったので、自然と医師の道を選びましたね。藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)に進学し、勉強をする中で「ゆくゆくは内科に進むのだろうな」と思いつつ、内科医師として父の後を継いでいくことにピンときていない自分もいました。それが、初期研修の中で産婦人科での指導を受けた際に「すごく興味深い科だな」と初めて感情が大きく揺さぶられたんです。何より興味を引かれたのは、出産のダイナミックさですね。出産という営み自体は大昔から変わらないものの、一つ一つの過程に生命現象の仕組みがきちんとあり、「妊娠中の変化はこういう理由があるからなんだな」というような驚きもたくさんありました。勉強するにつれ、ますます関心も高まり「将来は産科でやっていきたい」という強い意志を持ち、大阪大学医学部の産婦人科へ入局しました。

その後、複数の総合病院で勤務医をされています。振り返ってみていかがでしょうか?

1つは、産科の厳しさをひしひしと感じました。産科は幸せなことばかりではありません。子どもの誕生は喜ばしい事実ですが、妊娠から出産の期間は妊婦さんも大変ですし、私たち医師も昼夜を問わない対応や母子の命を預かる緊張感から、体力・精神力ともにすり減らしながらサポートし続けます。その過酷さゆえに産科の医師の担い手が減り、現役の医師一人ひとりの負担がますます増えていく。現場はまさにそうした日本の産科医療の縮図でした。もう1つは、妊婦さんにもっとできることがあるんじゃないか、というもどかしさですね。例えば、今や妊婦さんが4Dエコーで赤ちゃんの動画を見られる時代ですが、総合病院だとなかなかそこまで1人に診療時間を割けない。食事一つとっても一般病棟の患者さんと同じです。頑張ってきた妊婦さんにもっと何かしてあげたい、一回一回の妊娠・出産をもっと大切にしてあげたい、という想いが募っていきました。

縁あってこの医院を継がれたと伺いました。

中村涼院長 おさきマタニティクリニック2

勤務医時代のもどかしい想いから、いずれは自分の医院で自分の考える医療をやりたいと考え始めました。しかし、今の時代にゼロから医院を立ち上げるのは非常に難しく、既存の医院の医業承継も視野に入れていました。そのような中で、2018年、おさきマタニティクリニックの前院長である尾崎敦男先生が不慮の事故で他界され、ご縁があって私が尾崎先生の遺志を受け継ぐ形で、2019年に院長に就任しました。その際決意したのは「一人ひとりの患者さんの現状や背景に向き合って、それぞれの方に合わせた産婦人科医療をしていこう」ということ。それがそのまま当院の理念ともいえるでしょう。ただし実際に運営してみると、個人の医院では手に負えないケースもあることから、あらためて総合病院の支援のありがたみを痛感するに至りました。自分ができることは想像より多くはなかったものの、自分の信念はこれからも大切に持ち続けたいと思っています。

一人ひとりに寄り添い、自然なお産を大切にしたい

こちらのお産の特徴は?

中村涼院長 おさきマタニティクリニック3

2018年頃に無痛分娩に伴うトラブルが全国的に相次いで報道された経緯もあり、2019年に私が院長となってからは、当院では無痛分娩を行っておりません。ここで産むメリットを問われると、特別な何かを持っているわけではないかもしれません。ただ、診療姿勢として「一人ひとりにしっかり寄り添うこと」を貫いてきました。当院では、私が責任を持ってすべての患者さんを診てきました。妊娠初期から私が経過を観察し、すべての方のお産を私が取り上げるよう心がけ、出産後に「一緒に頑張ったよね」と言葉を交わす退院の日まで、“絆”を大切にした診療を心がけています。一方、お産のスタイルは、最も力が入れやすいあおむけの体勢が多いですが、もしご自身のこだわりがおありでしたら、いろいろな形に合わせたお手伝いもさせていただきます。

希望をすれば和痛分娩も選べるそうですね。

はい。私は基本的に不必要な医療介入は行わず、できるだけ自然なお産をしていただきたいと考えています。例えば、医師側の都合でお産を進めるための陣痛促進剤使用は、避けるべきだと思っています。しかしながら、こと陣痛に関しては、皆さんが恐怖心を抱かれるのはよくわかります。そのため当院では、不安が強い妊婦さんには和痛分娩を提案します。和痛分娩は、点滴で鎮痛剤を投与することで、痛みはゼロにはならないものの、緩和が期待できます。いわば、安心するための“お守り”ですね。痛みの対処にはさまざまな考えがありますが、私たちは出産を通じて達成感を味わっていただきたいという想いもあります。その意味でも、無痛よりも和通分娩のほうが良いのではないかと考えています。ちなみに、無理な医療介入はしない方針ですが、母子の安全面で必要と判断した際には当然迅速に行う構えでいます。

たくさんの妊婦さんを支えていらっしゃいます。やりがいは何でしょう?

中村涼院長 おさきマタニティクリニック4

どれだけ経験を積んでも、赤ちゃんが無事に生まれるまでは緊張感の連続です。しかし、本当にちょっとした瞬間に「ああ、やってきて良かったな」とやりがいを味わえるのが、この仕事の醍醐味ですね。例えば、1人目を産んだお母さんが2人目を妊娠してまた来てくださったり、ここで生まれて成長したお子さんを再び連れてきてくれたり、今だけでなく、未来につながっていく関係性を患者さんたちと築くことができたら、町の産婦人科としてこの上なくうれしいですし、ありがたいと思います。

患者との関係性を深め、絆を大切にしたサポートを

婦人科診療や更年期障害の治療にも力を入れていますね。

中村涼院長 おさきマタニティクリニック5

女性の体はライフステージごとに変化します。月経の周期が確立していない若年の方や、特に20~30代の方は月経痛・月経困難症が多く、40代以降は更年期の症状、60歳を過ぎると今度は老年期のトラブルが増えてきます。目に見える不正出血がよく取り沙汰されますが、おりものの増加や些細な痛みなどの症状の裏にも、怖い病気が潜んでいる可能性があります。ですのでいつもと違うことがあれば、我慢せずにいつでも相談に来ていただきたいですね。特に更年期の症状は、細かいものを含めると数百種類に及びます。女性ホルモンの減少に起因する症状が多いものの、かといって女性ホルモンだけを足せば良いかというと、必ずしもそうではありません。汗がひどいのか、肩凝りがつらいのか、冷えが気になるのかなどのお悩みを細かくお聞きし、症状ごとに適切なアプローチをして、かつ長い時間軸で経過を診ていくことが肝要だと思っています。

そうなると患者さんとは長いお付き合いになりますね。

ええ。患者さんとの関係性を深めていくことが本当に大切だと思いますし、開業医の今の立場だからこそ注力したいですね。例えば、どんなお仕事をされていて、どこに勤めているのかなどを知ると、患者さんとの距離が近くなります。婦人科の症状の話だけではなく、何げない雑談の中からも抱えている悩みをくみ取り、症状を解決するためのお手伝いをさせていただきたいと思っています。そして治療によって「以前より生活がしやすくなった」と感じていただけるよう、心がけています。

医院の今後の目標を教えてください。

中村涼院長 おさきマタニティクリニック6

政府が少子化対策に奔走しているものの、人口は減少の一途をたどると想像しています。1人の女性の出産の回数が昔より圧倒的に減っている中、一回一回のお産を一層大事にしていきたいですし、私たちもその労を惜しんではいけないと身を引き締めています。婦人科疾患では、日常生活をより良く過ごせるためのお手伝いを真摯に続けたいと思っています。一人ひとりとの深いつながりを大切に、今後も地域に根差した女性に優しい医院でありたいですね。

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