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稲福 徹也 院長の独自取材記事

稲福内科医院

(浦添市/経塚駅)

最終更新日:2021/10/12

稲福徹也院長 稲福内科医院 main

浦添市経塚エリアの一角、大型ショッピングセンターのすぐそばに「稲福内科医院」はある。院長の稲福徹也先生は那覇市の出身。大学病院で神経内科を専門に研鑽を重ね、一般内科や地域医療のことまで広く学んで2009年に開業した。「患者さんが通院できなくなっても診続けたい」との思いで訪問診療にも注力。地域包括ケアシステムの充実のため、地域のドクターや訪問看護師、訪問介護員、ケアマネジャーなど多職種との連携も精力的に行っている。「地域のかかりつけ医として、何でも相談してほしい」と優しく語る稲福先生。穏やかな口調の中に、患者や地域医療、そして沖縄への想いを感じるインタビューであった。

(取材日2020年6月26日)

「開業して沖縄の役に立ちたい」と神経内科の医師に

先生はなぜ医師を志したのでしょうか?

稲福徹也院長 稲福内科医院1

父が那覇市で開業医をしていたので、小さい頃から「大人になったら医師になるのかな」とは思っていました。ただ最初からめざしていたわけではなく、理科系に興味があったので設計士にも憧れていましたね。ですから本格的にめざしたのはもっと後から。高校3年生で将来の進路を真剣に考え、医師になろうと決めました。北里大学医学部を卒業した後、専門を神経内科に選んだのは2つの理由から。1つは、当時の沖縄に神経内科の医師が少なかったこと。将来は沖縄に帰って開業する考えだったので、沖縄の役に立てるとしたら、この分野だろうと考えました。もう1つは、北里大学の神経内科には故・田崎義昭教授という、素晴らしい先生がいらっしゃったこと。この先生のもとで学んで、沖縄の役に立ちたいと思ったからでした。

大学病院から開業までの道のりをお聞かせください。

もともと開業は意識していましたが、大学病院に勤務してみて性格的にも開業医のほうが合っているとはっきりわかり、そこからは開業を見据えて専門の神経内科と並行して一般内科の勉強も努力しました。大学病院やその関連病院の神経内科に10年ほど勤務した後、沖縄へ。沖縄に帰る前、北里大学の主任教授が「沖縄へ帰るなら地域医療部のほうがいいのでは」と知己のあった琉球大学医学部附属病院の地域医療部を紹介してくださり、開業前に勉強をさせてもらいました。地域医療部では沖縄の地域全体を見回して活動するので、どこにどんな患者さんがいるのか、どこで開業したらいいのかを広く見ることができましたね。地域医療部や浦添総合病院で経験を積ませてもらい、2009年に開業しました。

地元の那覇市ではなく浦添市に開業したのはなぜでしょうか?

稲福徹也院長 稲福内科医院2

浦添総合病院に5年ほど勤務していましたから、そちらの患者さんたちから「那覇は少し遠い」という声があり、浦添市内で新規開業をすることにしました。経塚には今でこそショッピングセンターがありモノレールが通っていますが、当時は開発前で開業医も少なかったのです。ちょうど目の前のショッピングセンターができた時期と重なり、この先この地域は発展すること、駐車場も確保できることなどから、この場所で開業することに。今では地域の開業医の数も増えて、耳鼻科、皮膚科、心療内科、整形外科などさまざまです。高齢の患者さんが多いので整形外科やその他の病気を抱えている方もよくいらっしゃいますが、「すぐそこの整形外科を紹介しますね」というふうに連携もしやすく、その点でも良い場所だと思います。

訪問診療は患者とその家族に寄り添うことが大切

神経内科ではどのような病気を診るのでしょうか?

稲福徹也院長 稲福内科医院3

神経内科の病気で代表的なものとしては、パーキンソン病、認知症、慢性頭痛、てんかん、脳卒中などがあります。クリニックの相談で多いのは、頭痛、手足のしびれ、めまいのほか、高齢の患者さんではふらつく、歩きにくい、手が震えるといった症状。神経の病気はクリニックレベルの検査では診断が難しいものもありますから、その場合は国立沖縄病院などに紹介して診断を確定してもらうようにしています。また神経以外の病気だった場合は、浦添総合病院や那覇市立病院などの専門科に紹介しますし、肺炎など救急ですぐに入院が必要と判断した場合は救急車で搬送してもらうこともあります。高齢の患者さんは神経の症状以外の問題を抱えている方が多いですし、高血圧や糖尿病と関連がある疾患もあるので、ある程度総合的に把握する必要がありますね。

訪問診療にも力を入れているそうですね。

高齢の患者さんが多いですし、特に神経疾患の患者さんはADL(日常生活動作)が低下して、最初は歩いて通院ができていた方が、やがて車いすになり、通院自体が難しくなってしまうことも。最後まで診てあげるためには訪問診療が必要だろうと、開業から2年目にスタートし、現在は週に2回半日ずつ時間を確保しています。在宅でケアを受けている患者さんはパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などの神経難病の方が多く、在宅人工呼吸器や在宅酸素供給機、膀胱ろうや胃ろうの調整などもしています。長い方だと在宅療養に移行して7~8年になる方もいて、家族のようなお付き合いをさせていただいています。

在宅ケアでは患者さん家族との関わりも重要かと思いますが、いかがですか?

稲福徹也院長 稲福内科医院4

まさしく、訪問診療が成功するためにはご家族の協力が不可欠であり、ご家族のケアも重要になってきます。実際にあったケースでは、老々介護で介護者のおじいちゃんが具合が悪くなって入院することになり、介護を受けていたおばあちゃんは施設に入所することになった、ということもありました。ですから訪問先では介護者のご家族の状態にも気を配り、携帯電話の番号も教えて電話やメールで気軽に相談してもらっています。ただ沖縄の場合は共働き家庭が多く、やむを得ず施設にお願いする割合が高いです。施設への訪問の場合、なかなかご家族と直接会うことができず、密な関係を築けないことが課題になってきますから、電話でコミュニケーションをとるなど、直接お話をする機会をつくるようにしています。

幅広く連携を深め、患者に柔軟に対応する

在宅医療をはじめ、地域包括ケアシステムでは連携が重要になってきますね。

稲福徹也院長 稲福内科医院5

いろいろな形で連携を深めていますが、医師同士では医師会を通じて、ということが多いですね。私の場合は神経内科の医師として認知症にも関わっていて、浦添市認知症ネットワークの代表世話人も務めているので、開業医の先生たちに声かけをして勉強会に参加してもらっています。認知症はありふれた病気なので、ある程度診られるようになってほしいですから。また多職種連携の会も月に1回あり、訪問看護師やケアマネジャーなどが一堂に会して勉強をしています。やはり顔見知りのほうが連絡もしやすいので、こうした勉強会には積極的に参加しています。病診連携では紹介状だけのやりとりもありますが、そうは言っても人とのつながりは大切。浦添総合病院には今も非常勤で週に1回顔を出しているので、新しいドクターにはこちらから声をかけて連携しやすい関係をつくっています。

訪問診療や勉強会など、かなりお忙しいのではないですか?

そうですね。日曜日だけは妻や子どもたちと家族でテニスをするようにしているので、その時間がリフレッシュになっています。妻も医師なので、火曜日の午前中に診療を手伝ってもらっていますし、父も週に2回ほど手伝いに来てくれて、家族のサポートがありがたいです。また訪問診療の時間は琉球大学の神経内科の先生に代診に入ってもらっています。任せきりにならないよう、その日の患者さんについてカルテ上やメールで連絡をしたり、訪問診療中でも困ったことがあれば電話連絡をしてもらうようにしていて、密な連携を心がけています。

最後に、読者にメッセージをお願いします。

稲福徹也院長 稲福内科医院6

開業から11年、今後も地域のかかりつけ医として気軽に相談をしていただきたいと思っています。神経疾患は症状がわかりにくいですし、何科を受診していいのかわからない方も多いです。神経系の症状は、目や耳、手足のしびれや震えなど感覚器の症状がいろいろとありますが、とりあえず来ていただければ、それが神経の病気か他の病気なのか、仕分けることができます。診診連携、病診連携も密に行っているので、その患者さんに合った診療科を紹介しています。また問題が複雑に絡み合っていることもありますので、当院を中心に、各科の先生と相談しながら治療を進めていくなど、さまざまな対応が可能です。困ったことがあれば、まずはご相談ください。

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