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矢内原 敦 理事長の独自取材記事

矢内原ウィメンズクリニック

(鎌倉市/大船駅)

最終更新日:2024/05/10

矢内原敦理事長 矢内原ウィメンズクリニック main

鎌倉市大船で不妊治療を専門に行う「矢内原ウィメンズクリニック」。矢内原敦理事長は、地元で3代続く産婦人科の3代目だ。生殖医療を本格的に学ぶためにイギリスへ留学した経験を持つ不妊治療のスペシャリストでありながら、「常に謙虚さを忘れずにいたい」と誠実な人柄が伝わる矢内原理事長。悩みを抱えた患者の心情に温かく寄り添い、きめ細かな配慮や的確なアドバイスを行う姿勢も印象的だ。不妊治療の目的は妊娠だけではなく、子どもを健やかに産み育てることと、将来や社会を見据えた幅広いクリニック運営も興味深い。「妊娠から出産まで関わり、さらに子どもの成長も見守りたい」と語る矢内原理事長に、日々の診察にかける思いや今後の展望などを聞いた。

(取材日2023年12月22日/更新日2024年4月23日)

患者一人ひとりに合ったパーソナライズ医療を展開

最近、移転してリニューアルされたそうですね。

矢内原敦理事長 矢内原ウィメンズクリニック1

以前の建物が手狭になってきたこともあり、2023年7月に移転しました。大きく変わったことは、電子カルテをはじめデジタル化を進めたことで、データや画像を共有した検討や説明も進めやすくなりました。最近の変化としては、2022年から体外受精や顕微授精を含む基本的な不妊治療が保険適用となり、治療へのハードルが低くなったことから患者さんが増え、特に比較的若い方が増えてきたことでしょうか。また、受診された時点で大きな不安や悩みを抱えてこられている方が多いので、特にメンタルヘルスに力を入れていることも特徴だと思います。

担当医制で、患者さんそれぞれに合った治療を心がけていると聞きました。

不妊治療においては特に家庭的個人的背景が大きく影響してしまう場合があります。できるだけ患者さんのことを理解し治療するには、信頼関係が重要ですので、患者さん一人ひとりと良好な関係を築けるよう担当医制を導入しています。また体外受精にしても誰にでも通用する治療法はなく、多様な要因が重なり治療の成果につながります。さらに患者さんの時間も費用も大切なものですので、それぞれの方に必要な検査、適切な治療を行うことが求められます。ですから、診察は予約制でカウンセリングや漢方治療まで多様な選択肢をご用意して、それらを組み合わせ、個々の患者さんに合った治療を提供するのが当院の「パーソナライズ医療」という考え方です。

最近は、仕事と治療を両立させたいという女性も多いようですね。

矢内原敦理事長 矢内原ウィメンズクリニック2

そうです。ですから、当院では体外受精などの採卵も細く痛みの少ない針を使って、朝の7時半頃から始めますので、採卵後8時半くらいには仕事に向かわれることも可能です。どんな方にとっても通院は負担になりますよね。今は自宅で、患者さんご自身で行えることも増えましたし、いかに通院回数を減らすか、時間を短縮するかということは常に考え、できるだけ治療が日常生活の負担にならないように工夫しています。また、不妊治療は女性が中心になりがちですが、パートナーが寄り添うことで得られることは多いと思いますし、実際、熱心な男性の方も増えてきていますので、多忙な方も参加しやすいようにオンラインで面談やカウンセリングも行っています。

常に謙虚な姿勢で患者と向き合い、納得できる治療を

先生の診療方針について教えてください。

矢内原敦理事長 矢内原ウィメンズクリニック3

結果的にお二人にとって良い方向に向かうように、たとえ遠回りになったとしても納得できる方法を見つけていただきたい、そして、高度な医療はいろいろありますがなるべく自然妊娠に近いかたちで進めたいと考えています。そして、患者さんに対してはもちろんのこと、すべてのことに対して謙虚な姿勢でいようと努めています。生殖医療はともすればエゴに走りがちです。自分が良いと思って行うことが、必ずしもほかの人にとっても良いこととは限りません。いつも自分はベストな治療ができているのだろうか、と考えています。答えがすぐに出るものでもありませんから、患者さんに自分の話すことがきちんと伝わっているだろうか、患者さんのことが理解できているだろうか、など常に意識しながら謙虚な気持ちで向き合いたいと思っています。

産婦人科や小児科クリニックとも連携されているそうですね。

祖父が開業し、父が後を継いで院長を務めていた産婦人科の「矢内原医院」が近くにあります。患者さんの背景や、妊娠に至るまでのご努力を知っている者がお産に関わることで、少しでも安心していただけたらと私も非常勤医として分娩にも携わるようになりました。互いに連携することで両院ともに適切なケアができていると思います。さらにお子さんの成長も見守らせていただきたいと「すくすくまことくりにっく」を開設しました。こちらも近いところですが、お互いの気配が感じられない程度に離れています。妊娠からお産、お子さんの成長をチームで見守らせていただけるという、私の理想に近い環境ができつつあり、本当に恵まれていると思っています。

ところで、先生はなぜ生殖医療に取り組まれるようになったのでしょうか。

矢内原敦理事長 矢内原ウィメンズクリニック4

祖父と父の背中を見て育ちましたから、自然と産婦人科医師の道をめざすようになりました。生殖医療はまだまだ解明されていない部分が多く、純粋に学問的な魅力を感じたということもありますね。患者さんの人生にとても大きな影響を与える分野でもありますし、たくさんの方のお役に立てれば、と思って取り組んできました。

多様化社会や少子化の課題解決への貢献をめざして

専門的な立場から気になることなどがありますか?

矢内原敦理事長 矢内原ウィメンズクリニック5

不妊治療は比較的歴史の浅い治療法です。不妊治療を経て生まれたお子さんがどのように成長するのかは、生殖医療に関わる者として知る必要があり、適切なフィードバックをしていくことも重要だと思っています。病気のリスクなどまだわからない部分が多くある、ということは必ず不妊治療の段階から、患者さんにお話しするようにしています。目的は妊娠だけでなく、お子さんに元気で健康に生きてもらうことですからね。また当院は、がん患者さんのために行われる卵子凍結についても神奈川県ではかなり早くから手がけてきました。体の事情で今は妊娠できない、でも将来的には子どもが欲しいという方のためのご相談にも応じていますので、お声がけください。

今後の展望についてお聞かせください。

多様化社会の中、生殖医療は今後LGBTQの方々にも貢献できると思っています。まだ倫理的な問題や法整備などの課題はあるので、臨床心理士、弁護士、医師によるカウンセリングを計画しています。課題についてともに考えて解決することをベースに、生まれてきたお子さんが幸せに生きていけるようにサポートしていけたらいいですね。一方、最近は環境問題も含めて将来に不安を持つ人が増え、さらに少子化の流れが強まっているのではないかと危惧しています。核家族化で子育てが身近なものではなくなり、経済的、時間的に子育ての余裕がない若い世代が増え、子どもを産み育てたいという実感を持たない人が増えている気がするのです。子どもがほしいと思ってもらわないと生殖医療は貢献できません。子どもを産み育てたいという気持ちは、本来人間の本能でもあるはずなので、医療とは別のかたちで何かできることはないか模索しているところです。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

矢内原敦理事長 矢内原ウィメンズクリニック6

保険適用となったこともあり、不妊治療に対する社会的な理解が深まり、治療に対するハードルが低くなってきたと感じます。不妊治療というと、体外受精や顕微授精などを思い浮かべる方も多いとは思いますが、それがすべてではありません。むしろ、当院ではそのほかの選択肢のほうを多くご用意しています。男性の不妊治療にも専門家が対応していますし、将来に向けての選択肢も増えていますので、不妊にお悩みの方はぜひ相談していただきたいと思います。今、どんな方法があるのか、ご自分の場合、何ができるのか、さまざまな情報を知った上で選択していただきたいのです。初診の年齢が若いほど治療の選択肢が増えるのは事実です。ですが、お子さんを望まれるお気持ちになられるのが不妊治療を始める第一のタイミングだと思います。もし何か気になることがあればあまり思い悩まずに気軽な気持ちで受診していただきたいですね。

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