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山下 積徳 院長の独自取材記事

つみのり内科クリニック

(鹿児島市/谷山駅)

最終更新日:2021/10/12

山下積徳院長 つみのり内科クリニック main

鹿児島市中山町の「つみのり内科クリニック」は、鹿児島大学病院、鹿児島市立病院、枕崎市立病院での勤務を経て、山下積徳院長が2004年に開業した内科・循環器科のクリニック。「健康複合施設をめざしたため、あえて病院らしくない雰囲気にしたかったのです」と語る言葉どおり、白い壁の映える洋風建築のような建物が特徴的だ。建物内には、クリニックのほかに、フィットネスジムや健康に関する講座を開くためのスペース、カフェレストランも併設している。「予防医学を通して、生きる知恵を身につけてほしい」と語る山下院長に、診療方針や思いを聞いた。

(取材日2020年9月18日)

予防医学で健康を支え、生きる知恵を多くの人へ

先生の生い立ちやこれまでの経歴、医師を志した理由を教えてください。

山下積徳院長 つみのり内科クリニック1

両親の故郷である鹿児島で生まれ、2歳の時に両親と5歳上の兄とともに福岡の小倉へ移りました。医師という職業を意識したのは中学生くらいの頃でしょうか。父が発作を起こして倒れたことがあったのです。その後、兄が東洋医学の道へ、私は西洋医学の道へ進むことになりました。鹿児島大学の医学部で学び、卒業後は鹿児島大学病院の内科で8年間経験を積んだ後、鹿児島市立病院の循環器内科で心臓病の救急医療に6年間従事して、枕崎市立病院では院長を務めました。

先生は予防医学に積極的に取り組んでいらっしゃいます。きっかけを教えてください。

山下積徳院長 つみのり内科クリニック2

鹿児島市立病院で勤務していた1995年、私が阪神・淡路大震災の医療班として神戸に行っている間に父が急性心筋梗塞で亡くなりました。心臓病は私の専門分野であるため、「もう少し早く、自分が予防の話をしていれば」と本当に悔やみました。それがきっかけで予防医学に注目したのです。人間、年を取れば60代、70代くらいで一度体の不調や病気が表に出てくるものです。でも、多くの人は漠然と「自分は病気にならないだろう」と思って生活していますから、いざ大きな病気が見つかると慌てふためいてしまうんですね。病気にならないためにどう過ごせばよいか、いざ病気になってしまった場合にどうしたらよいか、その前知識を予防医学というかたちで伝えたいと思っています。

そもそも、病気にならないためにはどうしたらよいのでしょうか。

内科・循環器科で扱う多くの病気の原因は、「環境」が半数以上を占めているといわれています。食事や運動、ストレスコントロールといった生活習慣のことです。あとは「病因」といって、持って生まれた遺伝子や体質です。実は、人間の寿命は、生物学的には120歳程度といわれているんですよ。でも、現状では多くの人がその半分くらいの60代、70代くらいで1回目の大きな病気を起こし、80代くらいで亡くなっていますよね。本当なら、1回目の病気になった時、病気を治すだけでなく、ベースにある生活習慣を軌道修正することが重要なんです。病気の治療だけで満足して、生活習慣を変えないでいると、本来なら120歳まで生きられるところが、80代くらいで2回目、3回目の大病を起こして亡くなってしまう。ですから、生活習慣に気をつけることで病気になるリスクそのものを低く抑えたいと考えています。

毎日の“体の作り変え”で、「一病息災」をめざす

病院での治療が必要になる前の、普段の生活習慣が大切なのですね。

山下積徳院長 つみのり内科クリニック3

はい。薬は基本的に遺伝子や体質などの「病因」に対して作られていますので、生活習慣などの「環境」を変えることができれば、使用する薬を少なくすることは可能ですし、大きな病気を引き起こす可能性も低くなると考えています。治療も大切ですが、前提として健康的な生活習慣を身につけて実践していくことが大切なんですね。そこまでわかった時、従来の「治療医学」にできることは限られているということに気がつきました。食事や運動など、「予防医学」の考えに基づいたアドバイスは、外来診察の限られた時間では伝えられません。だから、当院は健康複合施設の中心に据えるクリニックとしてオープンしたのです。「何かあったら病院に行って治してもらえばいい」ではなくて、患者さんが健康づくりを主体的に実践していく場にしたかったんです。

先生の予防医学や健康づくりの考え方について、もう少し詳しく教えてください。

山下積徳院長 つみのり内科クリニック4

実は、私たちの体の中では毎日、リンゴ1個分の重さに相当するほどのたくさんの細胞が作り変えられています。だから、食事や運動、睡眠、ストレスコントロールなど毎日の積み重ねが大切なのです。一生懸命働いて子育てをして、一段落したと思ったら親の介護、そのうち自分も病気に、という人生はむなしいですよね。もし親が介護状態にならずに自立できていれば、お互いに人生の自由な時間を確保できるはず。長い目で見たとき、自分や家族にとって、本質的に良い選択ができるかどうか。そういった意味でも予防医学は生きる知恵なんです。私は、一度大きな病気を経験したとしても、そこで生活習慣を変えて、人生の次のステップを生きるための応援をしたいと思っています。だから、めざしているのは「一病息災」。病気の経験を知恵に変えて、患者さん自身が人生を再構築していくためのサポートができればと思いますね。

診察の際に、心がけていることはありますか?

救急の場合は別として、「この人は、どんな生き方をしてきたのだろう」と考えながらお話を聞いていきます。何に困っていて、どう解決したいのか、というのはその患者さん本人が選択するものですからね。通常の外来の診察で診ることができるのは、その人の人生のほんのワンポイントだけで、普段の生活ぶりまではわかりません。だから、決めつけたようなことを言うのは、おこがましいことかもしれないと思ったりします。もちろん医師としての診断やアドバイスはきちんとしますが、最終的な選択権は患者さん自身にあると考えています。

予防医学の大切さを広めるため、行政とも協力

先生がやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

山下積徳院長 つみのり内科クリニック5

治療医学の視点では回復が難しく思えた患者さんが、食事や運動など健康的な生活習慣を取り入れ、徐々に回復の兆しを見せてくれた時でしょうか。医師は「もう手遅れです」なんて、簡単に言ってはいけないと痛感します。また、患者さん自身が体の仕組みや健康づくりの大切さを理解できると、自分の病気をある程度受け入れられるようになると思うんですね。「なぜ私は病気になってしまったのか」と、悩み過ぎなくて済むといいますか。中には、「私が病気になった理由がわかりました」とおっしゃる方もいます。健康づくりを学んだことで、漠然とした不安や不満から解放され、主体的に人生を謳歌していらっしゃる姿を見ると、私も同志が増えたようでうれしくなります。

これからの目標や展望を教えてください。

クリニックの患者さんと向き合いながら、さらに広く、医療や予防への考え方について同じスタンスの人を全国に増やしていくことです。これまで、自治体からの依頼で健康づくり教室の出張講座を行ったり、厚生労働省の調査研究で予防に関するデータを提供したりしてきました。今は、東京大学と、国の工業技術の研究所である産業技術総合研究所と、共同研究の計画を進めています。当院がこれまで患者さんや地域の方へ広めてきた健康づくり教室の内容が、メタボリック症候群の予防はもちろん、認知症の予防にもつながりそうだというのが見えてきたからです。認知症も生活習慣病が大きく関係していることがわかってきており、生活習慣の選択の積み重ねが発症リスクにも影響すると考えられています。今回の共同研究で有効性が実証され、クリニックの患者さんにも良いかたちで還元できるとうれしいですね。

先生自身は、普段どんな生活をされているのですか?

山下積徳院長 つみのり内科クリニック6

私自身は、本来は「ぐうたら」な性格なんです。この施設内のフィットネスジムにも自ら通っていますが、実は体を動かすのもあまり好きではなくて、本来はいろいろ言い訳して結局やらないようなタイプ。じっくり映画を見ることは好きなのですが、今は休日もレポートを作ったり忙しくて、もう何年も映画館に行けていないですね。私は本質的なことを突き詰めていきたい性格なので、予防医学の研究にとてもやりがいを感じています。「目の前の生活に追いまくられるのではなく、未来の健康のことも考えながら生きる」というのが当たり前になってほしいので、食事や運動など自分でも実践しながら、人の役に立つことにこれからも取り組んでいきたいです。

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