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往診で介護現場をサポート
高齢者のための口腔ケア

日高デンタルクリニック

(世田谷区/田園調布駅)

最終更新日:2021/10/12

日高デンタルクリニック 往診で介護現場をサポート 高齢者のための口腔ケア 日高デンタルクリニック 往診で介護現場をサポート 高齢者のための口腔ケア

「お口の健康はからだ全体の健康にも深く関連している」。テレビや雑誌でこの話題をよく目にするようになり、その認識は広く一般に広まったかのようだ。そして今、介護の現場ではさらに一歩踏み込んだ、口腔ケアの重要性が注目されている。「お口の健康は人間の生きる活力にも大きく繋がっていると」と話すのは、往診で高齢者の在宅ケアに尽力する「日高デンタルクリニック」の日高俊之院長 。これまで多くの高齢者の治療に取り組んできた日高先生に、介護現場での歯科治療の現状やその取り組みについてお話を伺った。

(取材日2010年10月21日)

介護現場の口腔ケアの現状についてお伺いしました

Q歯科の往診ではどのような患者さんが対象なのですか?
A
日高デンタルクリニック クリニックに通えない患者の自宅だけでなく、老人介護施設や病院にも足を運ぶ

▲クリニックに通えない患者の自宅だけでなく、老人介護施設や病院にも足を運ぶ

往診ではケガや病気が理由で動けず、クリニックまで来られない方をカバーしています。年齢は限っていませんが、相対的にやはり高齢者が多くなります。おもに病気が原因で意識がない方、口から食べられないため胃ろうをはじめとする経管栄養の方、寝たきりや痴呆症の方などを診ています。往診先は患者さんのご自宅、あと老人介護施設や入院施設にある病院にも出向きます。虫歯、歯周病の治療や入れ歯修理などの一般歯科の治療も行いますが、介護施設の現場で一番重要だと感じるのは、介護する人、ヘルパーさんやご家族の意識改革です。介護をしている方たちは衛生面や床ずれに気を配ったりと、体のケアには一生懸命取り組んでおられますが、こと口の中に関しては疎かになっている場合がとても多いんです。介護現場での往診を始めたのは7、8年前ですが、当時は口腔内を掃除した形跡がまったくなく、入れ歯を外すとその裏側にぎっしりと食べカスが張り付いている患者さんも少なくなかったんです。介護現場における口腔ケアの重要性は最近になってようやく認知されつつありますが、まだまだというのが現状。なので往診ではどうして高齢者や寝たきりの人に口腔ケアが必要なのか、そのあたりのメカニズムから介護する側の人に伝えることが急務だと考えています。

Q口腔ケアを怠ることで出てくる問題はなんですか?
A
日高デンタルクリニック 往診では虫歯や歯周病の治療だけでなく、口腔マッサージも行う。高齢者の口腔ケアには欠かせない

▲往診では虫歯や歯周病の治療だけでなく、口腔マッサージも行う。高齢者の口腔ケアには欠かせない

一番怖いのは口の中に繁殖した歯周病菌などの細菌を吸い込むことで起こる誤嚥性肺炎です。要介護老人の直接的な死因の上位に上げられる肺炎ですが、以前は肺炎球菌、インフルエンザなどのウィルス感染によるものだとずっと思われていました。しかし最近では自分の口腔内の細菌を飲み込んで起きるケースが少なくないということがわかってきたんです。そしてもうひとつ大きな問題は、虫歯や歯周病で歯を失うことで噛む力が衰えてしまうこと。食べ物を噛んだり口を動かすことが少なくなると呆けやすくなってしまうんです。噛むということは痴呆の予防になるといわれるほど脳に刺激を与えるんです。以前は噛めなくなると、「点滴にしましょう、経管栄養にしましょう」と勧める場合が多かったのですが、これらの方法では栄養は摂れても口腔機能はますます悪化するばかり。また、唾液量の問題もあります。たとえ健康な方でも、年齢とともに唾液の分泌量というのは減ってしまう。唾液が出ないとどうなるかというと、口の中が乾くドライマウスと呼ばれる状態になります。すると食べたものが口の中で粘って流れにくくなり歯の表面に付着してしまうので、余計虫歯のリスクが増えてしまうのです。

Q口腔ケアとは具体的にどのようなことを行うのですか?また、口腔ケアを行うことで改善することは?
A
日高デンタルクリニック 患者の家族やヘルパーなど、介護者への口腔ケア指導も日高先生の大切な仕事

▲患者の家族やヘルパーなど、介護者への口腔ケア指導も日高先生の大切な仕事

誤嚥性肺炎にならないよう口腔内の清掃をしてきれいにすること、それと現状維持ですね。それは口腔機能もそうですし、歯が残っている人でしたら、それ以上歯を失くさないようにケアしています。口腔機能を維持、回復するためには、マッサージが非常に効果があります。まず触ってあげることが大事です。ほっぺたを引っ張ったり、頬の内側、歯茎など、口の中をまんべんなく触って、刺激を与えるのです。意識がない人はもちろん、意識がある人にも口腔マッサージはいろんな症状の改善をもたらします。続けて刺激を与えてると、噛むという行為をだんだん思い出して動かせるようになります。また口の筋肉を刺激することは唾液の分泌量も増え、口腔内の細菌数も格段に減ります。前に見た患者さんの話ですが、意識はあるものの喋りかけても反応の少ない無気力な状態の方でした。お口を見るとほとんど歯もなく入れ歯もない。もちろん食事は流動食。しかしその方に入れ歯を作ると、次の日にはもう別人のようにばかばか食事をしている。「どう?」尋ねたら「うん、すごくいいよ!」と(笑)。同じ人かとは思えないくらいの変わりようでした。ほかにも口腔内の状態がよくなったことで顔色も良くなったり、表情も豊かになった患者さんもいらっしゃいます。食べ物を自分の口で食べるという行為は、人に活力を与えるんですよ。

ドクターからのメッセージ

日高俊之院長

今後、高齢の家族を介護する人は一層増えていくと思いますが、高齢者の方やその介護に携わる方に覚えておいて欲しいのが、口の中も体の一部だということ。介護が必要となるような寝たきりの状態にならないよう、予防の一環として口腔ケアを考えて欲しいですね。虫歯で歯を失ったり、お口の筋肉が衰えて噛む行為が億劫になると痴呆も進み始めます。そして必然的にといってもいいくらい、いずれは要介護、そして寝たきりへと移行していってしまいます。それをくい止めるひとつの方法として口腔ケアがあるとお考え下さい。フランスの食聖ブリアサバランも、かの有名な「美味礼讃」にこう著しています。<他の快楽がすべて消えても、食卓の快楽は最後まで我々を慰めてくれる>と。要するに、人間の欲のなかで一番最後まで残る欲は食欲なんです。美味しいものをおいしく食べる。それは私たちの人生の最大の楽しみでもあります。生きる気力を奪わない為にも、人生を面白く生きる為にも、お口の中を健康に保ち、ぜひその欲を残してあげて欲しい、それが私の願いです。そしてそのためには口腔ケアの必要性をみなさんに広めていくのが私たち歯科医師の大切な役目だと思っています。

※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。

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