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野田 隆 院長の独自取材記事

のだ小児科医院

(串間市/串間駅)

最終更新日:2023/11/14

野田隆院長 のだ小児科医院 main

宮崎県の最南端に位置する串間市に「のだ小児科医院」はある。同院を開業した野田隆院長は、長きにわたり子どもたちの健康を見守ってきたベテランドクター。常に優しい笑顔で、患者から「くまさん先生」と呼ばれ親しまれている。「心配だったら連れていらっしゃい」をコンセプトに患者を温かく迎え入れ、今できる限りの診療をと、患者一人ひとりに向き合ってきた野田院長。子どものために健やかな社会をつくりたいとの想いから、禁煙啓発の講演、地域の保育園の通信にコラム執筆などの活動も精力的に行っている。日本禁煙科学会の副理事長という一面も持つ野田院長に、診療のポリシーや大切にしているコンセプト、長年力を入れてきた禁煙治療専門の外来のことなど、多くの話を聞いた。

(取材日2023年9月20日)

子どもが痛がらない、怖がらない診療を心がける

開業されたきっかけを教えてください。

野田隆院長 のだ小児科医院1

勤務医をしていた頃に、ずっと感じていたことがありました。それは、夕方以降に子どもたちを診ることができないということ。子どもたちが熱を出すのは夕方以降が多いのに、診察できないのが歯がゆかったんですね。それで、夕方も診ることができるクリニックをつくりたいと思ったんです。その時、私は串間市民病院に勤務していましたが、私が去ることで病室がなくなるということがありました。ですので、点滴もちゃんとできるクリニックにしたかったんですね。開業した当時も今も、串間市には小児科を第一標榜としているクリニックが少ないんですね。この辺りは少子化で子どもの数は減りましたが、開業して20年以上、この串間市で診察してきました。

長きにわたって、この串間市で診療されてきたんですね。

はい。串間市民病院での勤務医時代も含めると、気づけば30年近く串間市で診療しています。3世代で診ている方もいて、それはそれはうれしいですよ。串間市民病院で診ていたお子さんが大きくなって、お子さんを連れて、お孫さんを連れて、なんてこともありますから。当院は小児科ですけど、大人も診ます。親と子が別々のクリニックに行かなくても、ここで一緒に診ますよ、というスタンスです。実際、ここに来てくださる方の中には、60代の方もいらっしゃるんですよ。ここで、できる限りのことをしたいと思っているんです。

先生の診療の特色を教えてください。

野田隆院長 のだ小児科医院2

よく説明しようと心がけています。ただ、口だけで説明しようとすると、患者さんはご自身が聞きたいこと以外耳になかなか入ってこないんですね。そうすると、伝えたいことがうまく伝わらずに患者さんが逆のことをしてしまうこともあるんです。そういったことがないように、プリントをお渡ししています。薬の飲み方から下痢の時の食べ物、水イボについてなど、いろいろな病気や対応について、用意しています。あとは、お子さんが痛がることのない検査や診察をするということです。もちろん病気に対しての治療や対応の方針を明確にするための検査はしなければなりませんが、その病気だということがわかるだけの検査は、極力痛みを伴わない方法を取りたいんです。ですので、一番侵襲の少ない検査で行うようにしています。

子どもに害のない社会は、健全な社会につながっている

お子さんと接する際に気をつけていることはありますか?

野田隆院長 のだ小児科医院3

お子さんが座っている椅子を高く、私の椅子を低くして、私の目線がお子さんより低くなるように診察しています。あとは、動物を模したキャラクターのおもちゃで和ませたりしてね。ただ、この辺りは小児科の数が限られていますから、セカンドオピニオンとして別の小児科医の意見を聞きにくいという側面があり、懸念していることでもあります。ですので、宮崎県立日南病院や串間市民病院といった近隣の病院としっかりと連携を取っています。私は都城市郡医師会病院に当直に行っていたこともありますので、そちらに紹介をすることもできます。ルートはできているので、専門性が高いと感じる症状は、すぐ相談できる体制を整えています。

お子さんに害のあるものを取り除きたいという想いで禁煙治療も行っていると伺いました。きっかけは?

私自身の禁煙がきっかけです。串間市民病院にいた頃、診察の合間にタバコを吸いに行っていたんですが、そうすると時間がないので診察時に早い強い口調でしゃべるので、お子さんに怖い先生だと思われていたそうなんです。だけどタバコをやめたら、吸いに行く時間を説明に充てられるようになって、より丁寧にゆっくりしゃべれるようになりました。そして、今は日本禁煙科学会の理事長をされている高橋裕子先生に、大きく影響を受けましたね。先生には禁煙することの重要性や、禁煙支援をすることの楽しさを教えてもらいました。タバコというのは、子どもに害をもたらす側面があります。ですから、禁煙することは、お子さんの健やかな成長にもつながります。子どもに迷惑をかけない社会は健全な社会だと、私は思うんです。

こちらで行っている禁煙治療について教えてください。

野田隆院長 のだ小児科医院4

喫煙によってニコチンが急激に入ってくると、ドーパミンという快感物質が大量に出ます。このドーパミンがなくなってくると、イライラしてまた吸いたくなってしまう。タバコの依存は、こうしてできるのです。治療ではニコチンパッチを使います。これを貼るとニコチンがゆっくりと体内に吸収され、30~40分ほどでタバコを吸った後のまだ吸わなくてもいいと思える濃度に達することが期待できます。この濃度を24時間保つことで次の一本を吸わなくて良くなることをめざします。もう一つは、認知・行動療法といって、タバコを吸いたくなる時に代わりの行動を取ることで、認知を変えていく方法です。治療では、患者さんと対等の立場で支援することを大切にしています。患者さんの言い分を十分に聞いて、治療がうまくいかない時は別の考え方を提示したり、サポートの仕方を変えたりしていきます。

子どもたちに「無煙の世紀」をプレゼントしたい

漢方薬を積極的に使用されているそうですね。

野田隆院長 のだ小児科医院5

はい。西洋薬ははっきりとした診断がつかないと出せないんです。いろいろな不定愁訴に応えるために、漢方薬を使っています。例えば夜泣きは、その症状に対する西洋薬がないんですね。親御さんによっては、「熱があって」と言って最初は診察にお越しになるのですが、本当に相談したいことが実は夜泣きだったりおねしょだったりする場合もあるんです。2回目くらいの診察で、「ところで」と打ち明けてくださる。そういったこともあるんですね。当院は「心配だったら連れていらっしゃい」がコンセプトです。親御さんが心配な顔をされていたら、お子さんも心配になりますからね。連れてきて悪いことなんて一つもないですから。親御さんに何かしらの答えを示して安心してもらいたい、その一心ですね。

ところで、先生が小児科をご自身の専門分野に選ばれた理由は何だったのでしょう。

私はもともと、体の全体を診ることのできる医師になりたいと思っていました。それは、心の問題も含めて全部です。小児科は、それができる科なんですね。ある器官に特化してということではなくて、全部を診ることができる。だから小児科を選びました。もちろん、子どもが好きということもありましたね。私が大学で生化学を研究したのは、子どもにしかない先天性代謝異常という病気を解明したいと思ったのがきっかけなんですよ。小児科は心臓だけ、胃袋だけといったことではなくて、親や社会も含めすべてをひとくくりで診ることのできる科です。お子さんが病気になるのは、親や社会の病気も少なからず関与しているのではないか、と考えているんです。

今後の展望と、読者にメッセージをお願いします。

野田隆院長 のだ小児科医院6

今できることを、体力の続く限り一生懸命やるということですね。私の娘が今年、医学部に入ったんです。後を継ぐかどうかは彼女の決めることですし、先のことはわからないですが、医師をめざして頑張っています。彼女が一人前になるまでは、今の仕事を続けたいですね。そして、私のキャッチフレーズは、「子どもたちに無煙の世紀をプレゼント」。子どもたちにとってタバコは、害以外の何物でもなく、タバコで子どもたちが救われることは一つもないと考えています。ですから、子どもたちに無煙の世紀を贈りたい。それが私の使命だと思っています。そのために、小児科医として一つ一つのことをしっかりとやっていきたいと思っています。

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