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宇梶 光大郎 院長の独自取材記事

うかじ小児科医院

(糟屋郡志免町/須恵駅)

最終更新日:2022/09/09

宇梶光大郎院長 うかじ小児科医院 main

下志免バス停から徒歩3分ほどの場所にある「うかじ小児科医院」。穏やかな口調の院長は子どもの成長を細かに記録し、些細な変化にもしっかりと目を向けている。「地域の小児医療リソースとして当院がありますが、診察だけでなく、近隣の福祉、教育施設や行政とも連携を取りながら、子どもたちの成長、保護者の方の子育てをサポートしていくことが大事です」と院長。一般診療や予防接種の他、心の相談、発達障害の相談を行いながら、自院だけでは完結が難しいことは、各機関へと“つなぐ”役割を大切にしている院長に、診察で気を配っている点や同院の取り組みなどについて話を聞いた。

(取材日2022年8月4日)

丁寧な診察で、子どものちょっとした変化に気を配る

先生が医師をめざしたきっかけは何だったのでしょうか?

宇梶光大郎院長 うかじ小児科医院1

小さい頃によく母に連れていかれた医院の待合室の雰囲気が好きだったんです。窓ガラスを通してやわらかい光が入って、そのぽかぽかした日だまりの中で順番を待っていたのを今でも覚えています。先生は優しく、母の心配する言葉を真摯に受け止めてくれていたと聞いています。私は注射をされて泣きわめいてたようですが、怖い思いはすべて忘れました。小瓶に入った橙色のシロップをごくごくと飲みたくて……。私にとって町の医院は安心できる場所だったようです。小学校時代に妹が交通事故で近所の医院に担ぎ込まれて、すがるような気持ちになった体験も影響あったと思います。父は医者は誰にも尊敬される仕事だからと勧める一方、無機物から生命が作れないうちは医者もいばれんぞとはよく聞かされていました。

小児科を選んだのはなぜでしょうか?

九州大学医学部の専門課程に進級して最も興味を持ったのは、人の成長発達の不思議さについてでした。1つの受精卵からどんどん細胞分裂し、出生後もものすごいエネルギーを持って成長していく驚異。やがて言葉を覚え、哲学を語りだす。凄いことですよね。また学部時代の九大病院臨床大講堂の出入り口は産婦人科病棟に近く、いつも赤ちゃんの泣き声がしていて、私にとってその声はとっても心地良く感じられたんです。どうも自分は子どもが好きみだいだ、と。小児科、産婦人科、小児外科の3つが候補でしたが、当時の医局長の「自分の好きなところへ行きなさい」というアドバイスもあり、お子さんの成長に総合的に関われる小児科を選びました。

先生が診察時に心がけていることは何でしょうか?

宇梶光大郎院長 うかじ小児科医院2

病歴を重視しています。スタッフが聞き取ってくれた問診病歴票を参考に、保護者の方や子どもたちへ私からも確認したいことをお尋ねして、細部を整えていきます。自分の癖のようなものかもしれませんが、細かい点、特に症状について独特の表現をされた時は書いてしまいます。咳一つでも表現する言葉はそれぞれですし、長い目で見ると治療のヒントになるかもしれないので、言葉はできるだけそのまま記録します。予防接種の後に「先生なんか大嫌い」と泣いてた子が、「ぼく先生になる」と言ってくれたりします。カルテに残しておくと、「こんなこと言ってたのに」と成長を共有できることも。理学所見をとる際は、聴診時に呼吸数は必ず測ります。その子がキツイかそうでないかの大事な指標だからです。

夜間の電話対応や、予防接種にも積極的に取り組む

22時までは電話でも対応しておられるとか。

宇梶光大郎院長 うかじ小児科医院3

2016年に始まった「小児科かかりつけ診療料制度」の一環で、私が始めたのは2021年からです。始める前は夜や休日に電話がかかってくるのは大変だろうと構えていたのですが、実際に始めてみると私自身のためになっていると感じます。以前は夕方の受診後に、夜中に熱が出たのか、救急に行くほどだったのかがわからずにやきもきするようなことも多かったんです。しかしこの制度を活用し始めてからは実際にご相談をいただけるので、例えば熱を出しても翌朝の診察でいいとか、救急にかかったほうがいいなど具体的なアドバイスができ、同時にお子さんの状態も把握できます。診察後に「困ったら電話をしてください」と言えることは、私自身をかえって楽にしていることに気づきました。時々は深夜帯にかかることもありますが、それも大丈夫です。

予防接種にも注力されていますね。

予防接種は、お子さんの命・健康を守るための大切なものです。小児科で行うワクチン接種はだいたい11〜12歳で終わりますが、女の子の場合は小学5年生くらいになると「次は子宮頸がんワクチンですね」とお声がけするようにしています。子宮頸がんワクチンは副反応に不安に感じる方も多いですが、お子さんの将来にとって非常に重要です。婦人科、内科にお任せしてもいいのではと考えていた時期もありましたが、小児科のワクチン接種から段階的にバトンタッチしたほうが接種につながりやすいということに気づいてからは、積極的にお声がけしています。私の娘の場合、本人に説明した上で納得してくれたので、私が3回接種しました。

地域への活動もなさっておられるのですか?

宇梶光大郎院長 うかじ小児科医院4

町の健診、保育園の園医、休日診療所や急患センターへの出務の他に、近くの産婦人科クリニックで、週に1回赤ちゃん健診をさせていただいています。生後0日から6日の子がメインですが、時には本当に生まれたての赤ちゃんを診させていただくこともあります。また、月に2回ですが、木曜午後の休診時間を利用し子ども発達センターでの療育に参加しています。といっても、子どもたちとお店屋さんごっこをしたりと一緒に遊んでいるのですが、毎回振り返りの時に、センターの先生方の教育、心理面からの「気づき」を教えられて、発達を診ていく上でとても参考になっています。

成長してゆく子どもたちを適切な医療へとつなげる

小児科から次のステップへつなげる役割もあるのですね。

宇梶光大郎院長 うかじ小児科医院5

つなげる意識は非常に大切です。例えば熱が長引く子をどこまで医院で診るかは難しい問題ですが、自院で診るリスクと入院することの大変さを考えながら、適切な二次医療機関にタイミングよくつなぐことも基本の役割です。福岡は九大病院や福岡市立こども病院など基幹病院が近辺にあり、市中病院も信頼できるので非常に恵まれています。成長成熟に伴う他科との連携としては、例えば産婦人科です。女の子だと小学校高学年になれば月経が始まる子もいて、鎮痛剤をご希望での受診もあります。けれど鎮痛剤でしのぐのではなく、「近くの婦人科で相談にのってくれるし、症状を軽減させるためのお薬もあるよ」と話すことで、小学校の女の子にとってハードルが高い婦人科への受診が促せます。それは発達障害や心の問題なども同じで、私だけでは判断できない場合は検査ができる医療機関や、療育をサポートする福祉施設などにきちんとつなぐことも意識しています。

そう考える先生のサポートをするのがスタッフさんたちですね。

当院のスタッフはよく頑張ってくれています。朝、始業前に輪番で一人ずつ短い発表をしてもらっています。「デイリーハドル」といって、自分が普段思っていること、個人的な事情、ナラティヴを話し、それを共有することでスタッフの心理的安全性につながると医療安全の面でも注目されています。要は言いたいことが言えるようになると。医療的な固い話だけではなく、例えばペットの話や自分の子どもの話などもしています。少なくとも私のスタッフへの接し方はソフトになったと感じますし、医院のためにも取り入れてよかったと感じています。もちろんプライベートの話題だけでなく、私が参加した勉強会や実習で得たことのなかでスタッフに知ってほしいことについては、アップデートした情報を共有するよう努めています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

宇梶光大郎院長 うかじ小児科医院6

うかじ小児科は町の小さな医院です。その中できるのは来院されたお子さん、ご家族に対して、「今日の体や心の心配を受け止めましたよ。もう一人じゃありませんよ」というメッセージを伝えることではないかと思います。「知っていてくれる人がいる」ことは安心をもたらしてくれるはずです。「え―、宇梶先生、そんなこと言ってないけど」と皆突っ込んでると思いますが……。医療だけでなく、学校の先生、スクールカウンセラーさんなど、教育・福祉の分野にもお子さんを見守る目があり、それらとも連携しながらお子さんを守っていくのが今後は大事になってくると考えています。ご家族だけで問題を抱え込まず、小児科をはじめとした医療機関、教育、行政に頼っていけば、きっとお子さんを育てやすい環境になっていくでしょう。これからも地域のお子さんを育てるサポート役でありたいと思います。

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