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高井 智子 院長、中村 祐三 先生の独自取材記事

高井内科クリニック

(小田原市/小田原駅)

最終更新日:2023/09/08

高井智子院長、中村祐三先生 高井内科クリニック main

小田原駅東口から徒歩5分の「高井内科クリニック」。2001年に開業した院長の高井智子先生は、20年以上地域医療に貢献してきたベテラン医師だ。2023年4月から中村祐三先生を中心とした新体制となったが、内科と心療内科は変わらずに標榜、近隣住民の心と身体の健康を守りたいという思いもしっかりと受け継がれている。バリアフリーのエントランスから院内に入ると、そこは明るい待合室。大きな窓の外には柿の木やアジサイがあり、緑に心癒やされる空間が広がっている。診察室、処置室のカーテンや椅子もビタミンカラーが活用されていて、優しい雰囲気だ。同院がこれまで大切にしてきたことと、これからどんな医療を提供していきたいのか、高井院長と中村先生に詳しく話を聞いた。

(取材日2023年5月26日)

近隣住民の心と身体の健康と人生を守り続けたい

まず、クリニックの特色や、小田原で開業した理由などを教えてください。

高井智子院長、中村祐三先生 高井内科クリニック1

【高井院長】2001年の開業当初から内科と心療内科を標榜しています。最初から患者さんの身体と心、両方を診ていこうと決めていました。実は小さな頃から医療や福祉に触れる機会が多く、医師になって人を救っていきたいという使命感のようなものを持っていたんです。中でも心療内科を志したのは、障害のある方やその家族を精神的にもサポートしていきたいというのが一番の理由でした。東邦大学医療センター大森病院の心療内科を経て、生まれ育った小田原の地に開業しました。当時、神奈川県西部は精神科・心療内科を標榜する医院は少なかったので、地域医療に貢献したいという思いもありました。

20年間、地域の福祉施設や就労支援施設とも密に連携してきたそうですね。

【高井院長】心療内科では、たとえ治療で病気は改善に向かっても、その人の人生において改善の兆しが見えないということは多々あります。また、今までの経験から「医師一人では、治療には限界がある」ことを痛感しており、今まで知り合ったケースワーカー、管理栄養士など、多くのコメディカルの方々とも連携を取り、社会的な支援にも積極的に取り組んできました。例えば、発達障害も含め、障害を抱えていらっしゃる一般就労が難しい患者さんを、就労支援施設につなげることも可能です。紹介して終わりではなく「その後、あの患者さんはどうなりましたか?」と電話をして、状況を共有していただくようにもしています。

4月からは中村先生が中心となって診療にあたっています。患者層について教えてください。

高井智子院長、中村祐三先生 高井内科クリニック2

【中村先生】これまで東邦大学医療センター大森病院の心療内科で重症の摂食障害の方などを診てきましたが、当院では適応障害の方が多いように感じています。現在は心療内科9割、内科1割と、大半が心療内科の患者さんです。
【高井院長】患者さんの年齢層としては、40代、50代の方が多いでしょうか。働き盛り世代で適応障害を抱える患者さんが目立っていますね。もちろん、高齢の方で「物忘れがひどい」といったお悩みで来院する方もいます。
【中村先生】最近は中学生くらいの患者さんも少しずつ増えています。摂食障害など思春期に発症しやすい精神疾患もあるので、気になることがあったらぜひご相談ください。

大学病院で培った高い専門性を生かし地域医療に貢献を

中村先生が医師になるまでの経緯、心療内科を選んだ理由などを教えてください。

高井智子院長、中村祐三先生 高井内科クリニック3

【中村先生】信州大学人文学部で心理学を専攻するなど心に興味はありましたが、父が医師だったためストレートに同じ道に進むのに抵抗があったんです。父は勤務医でもう80歳ですが、今でも週に2〜3日は訪問診療をしています。信州大学を卒業後、1年間勉強して一般入試で東邦大学医学部に合格。卒業後は東邦大学医療センター大森病院の心療内科に入局し、約12年間、初診、再診の外来、入院症例を担当してきました。その間、東邦大学医療センター佐倉病院メンタルヘルスクリニックなどで研鑽を積む機会もあったのですが、医療の地域格差に愕然としたんです。地域医療に貢献したいという思いも、当院に勤務しようと思ったきっかけと言えます。

高井院長時代から変化した点、現在行っている治療などをお聞かせください。

【中村先生】再診を予約なしにしたのが一番大きな変更点でしょうか。このエリアでは予約不要というクリニックは少ないのか、小田原だけではなく近隣からの患者さんも増えました。心療内科では薬物療法と精神療法が中心です。例えば、パニック症ならば薬で不安をコントロールすることをめざした後で、不安となっている場所や状況をランクづけして徐々に慣れるようにしていく暴露療法も併用していきます。適応障害の場合はソーシャルスキルトレーニング、交流分析などを行うこともありますが、何が必要かは患者さんによって異なります。

診療にあたって大事にしていることは何ですか。

高井智子院長、中村祐三先生 高井内科クリニック4

【中村先生】患者さんのことを知りたいと心から思いながら話を聞き、わからないことは「何で?」と、問いかけていくことです。患者さんの話をちゃんと理解しないまま、勝手な解釈の話をすると、患者さんは本当はそうではなくても「あ、はい」などと答えてしまいますからね。何でこのような経過をたどったのか、何でこのタイミングで受診しようと思ったのか。患者さん一人ひとりに必ず物語があるはずなんです。もちろん、最初から「何で」責めては萎縮してしまう患者さんもいます。「話せるところからでいいですよ」と、前置きをするのも大事です。適切な治療方針を立てられるかどうかは、初診にかかっているといっても過言ではないので、特に慎重に取り組んでいます。

患者の人間性を治療でつぶさずより良く生きる手伝いを

今後の展望についてお聞かせください。

高井智子院長、中村祐三先生 高井内科クリニック5

【中村先生】身体の不調があっても検査で異常がなく「心の問題では?」と言われ、心療内科を受診する患者さんも少なくありません。しかし、このような場合でさえ詳しく問診を行い別の検査をすれば、10%程度は身体の病気が隠れていると以前論文に執筆したことがあります。もし、身体の病気だったとしても当院は内科でもあるので対応可能です。これからも、心にも身体にも幅広く対応していきたいと思っています。
【高井院長】最近、気になっているのが自己肯定感が低い人が増えていることです。「自分なんて」ではなく「これでいいんだよね」と、自分をまず肯定し、自信を持っていけるように見守っていきたいです。どの患者さんにも人間性があり、それを治療でつぶしてはいけません。病気だけではなく、病気を持った一人の人間として向き合い、少しでも幸せに生きられるよう手助けしていきたいと思っています。

お忙しい毎日をお過ごしですが、リフレッシュ法などはありますか。

【中村先生】患者さんには控えるように言うこともあるのですが……お酒ですね。休日の前日だけは飲んでいいことにしています。自宅で映画鑑賞しながらウィスキーのグラスを傾けたり、最近は大学の後輩とご飯に行く機会も増えてきました。
【高井院長】独学でオカリナを吹いたりしています。オカリナ奏者のライブにも行きましたね。あとは、陶芸でしょうか。ある福祉施設に登り窯があって、週末に陶芸体験させてもらったのがきっかけです。今はその窯は休眠中なのですが、いずれは、その施設の方々の作品なども院内に飾りたいと思っています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

高井智子院長、中村祐三先生 高井内科クリニック6

【高井院長】当院は心と身体のプライマリケアを行うクリニックです。身体から心に作用しているのか、心から身体に作用しているのか、自分ではわからず混沌とした状況に陥っている方も、ぜひ一度相談に来てください。「何かがおかしい」ならば、どうしたらいいのか一緒に考えていきましょう。必要があれば高度医療機関への紹介も行っています。
【中村先生】どこかへ紹介してもそれで終わりではないという高井院長のスタイルは踏襲していきたいと思っています。高度医療機関で検査や治療を受けたら、また当院に戻ってきて経過観察していきましょう。主治医としてかかりつけ医として、近隣の皆さまの心と身体の健康を末永く見守っていくのが何よりの願いです。

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