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濱田 努 院長の独自取材記事

きいれ浜田クリニック

(鹿児島市/喜入駅)

最終更新日:2021/10/12

濱田努院長 きいれ浜田クリニック main

2020年10月にリニューアルした「きいれ浜田クリニック」。半世紀以上にわたって喜入の地で医療を提供してきた「浜田医院」の意思を継承しつつ、さらに地域とのつながりを強くする思いで“きいれ”の文字を院名に掲げた。院長の濱田努先生は、「喜入の地に住む人たちがいかに幸せに暮らせるかということを常に念頭に置いて診療にあたっています」と話す。名古屋第一赤十字病院救急部での勤務歴があり、さまざまな急患に対応してきた経験を生かしながら、あらゆる状況に対して幅広く対応している。濱田先生がめざすのは、地域の子どもから高齢者まで幅広く対応するファミリードクター。喜入の地で開業するクリニックの院長としての、濱田先生の思いを教えてもらった。

(取材日2020年11月18日)

「紡ぐ」思いを込めて新しいクリニックに

クリニックをリニューアルした時のコンセプトを教えてください。

濱田努院長 きいれ浜田クリニック1

1965年に私の父が開業したのが、当院の前身となる「浜田医院」です。父はもともと鹿児島大学病院に勤務していましたが、地元でもある喜入で医師の不足を感じ、この地に開業したそうです。次の半世紀へ向けて喜入の医療と介護を担っていきたいという思いを込めて、今年10月にリニューアルを行いました。新クリニックのコンセプトは“紡ぐ”です。これには、「地域を紡ぐ」「歴史を紡ぐ」「浜田医院からきいれ浜田クリニックへ紡ぐ」などの思いを込めていますが、一番は「患者さんの人生を紡ぐ」ことです。当院は、患者さんが喜入の地で幸せに、穏やかに暮らしていただけるようにサポートする存在だと思っています。

きれいで明るい印象の建物になりましたね。

リニューアルした建物は、コンセプトの“紡ぐ”を表現しました。照明やすりガラスを用いて、仕切りがありながらもつながりが感じられるようにしました。16床ある2階の病棟は、廊下に直射日光が降り注ぐ大きな天窓が特徴的です。みんなが集うスペースや、外に出入りできて食事も可能なテラス、患者さんのご家族も利用いただけるミニキッチンも設置しました。その人が入院中でも、家族とつながっていける場所にしたかったんです。めざしたのは居心地の良い病床。外観もホテルのような雰囲気のデザインにして、“クリニックっぽさ”を感じさせない造りにしています。

以前は名古屋の病院で勤務されていましたが、なぜ帰ってこようと思われたのですか?

濱田努院長 きいれ浜田クリニック2

名古屋第一赤十字病院という大きな病院に勤務していました。当時は先進の医療現場で働くことがかっこいいと思っていましたが、ある時父が体調を崩し、代わりの往診を頼まれて毎週喜入に帰ってきていました。すると、患者さんたちが私が帰ってきたことをとても喜んでくれたんです。手を合わせて拝んでくれた人もいましたね。「なんで私に対して拝んでくれたんだろう」と考えた時、その人は家で過ごしていて、「入院させられて最期を家で迎えられないかも」と思ったのではないでしょうか。この地域にはもともと訪問診療を行うクリニックが少なかったので、「息子が帰ってきたのなら、また自宅で診てもらえる」と思って感謝してくれたんだと思います。その時に、地域の人たちのために帰ってきたい、という思いになりました。私がいることで医療に対する不安が少しでも軽減されればうれしいです。

最期まで患者に寄り添う医療

この地域では、どのような医療が必要だと感じますか?

濱田努院長 きいれ浜田クリニック3

当院を利用する人は4分の1が子ども、4分の1が働いている若い世代、残り半分が高齢者という現状から見て、最も喜入に必要と感じているのは高齢者への在宅医療です。高齢の方は体が弱って家から出られなくなると、「入院しなければいけないのでは」と不安になるものです。もし外来に通うことが困難になった場合、当院なら訪問診療に切り替え継続した医療を提供することができます。外来で診てもらっていた医師が在宅医療でも診療するのは、患者さんにとっても不安は少ないでしょうし当院の強みでもあります。私は日頃から患者さんとのコミュニケーションを大切にしていて、外来での診療ではよく世間話や家族の話を聞かせてもらっているので、その人の背景を知った上での医療や介護が提案・提供できます。例えば「この人は一人暮らしだから、この状況で家に帰るのはまずいな」と判断して、「じゃあケアマネジャーに連絡して訪問看護へ」とつないでいきます。

先生は認知症の診療にも力を入れているそうですね。

私が喜入に帰ってきた7年前、この地域では認知症を診る医師が不足している状況でした。そこで必要性を感じて認知症について学びました。認知症は、本人に関わる周りの人たちの対応が重要です。例えば、毎日何回も「今何時?」と聞く人がいて、家族が疲れてしまうケースでは、よくよく聞くと本人はお茶の時間が知りたかっただけだった。じゃあ、時間がわかりやすいデジタル時計にしたり、「10時はお茶の時間」と書いた紙を貼るなどの対応をするだけで、その人が穏やかになれることがあります。なので私は、ご家族など本人の周りの人にも、認知症について知ってもらうように話をしています。認知症の改善は難しいですが、ご家族の対応次第で進行を遅らせることは十分可能だと考えています。

より良い診療のために、クリニックで取り組んでいることはありますか?

濱田努院長 きいれ浜田クリニック4

私たちはクリニックの診療を通して、その人の人生の最期を支える活動をしています。ですので、人生の最終段階を迎えている人とどうやってコミュニケーションをとるのか、その技術やノウハウを学んでスタッフと共有しています。例えばがん末期の人に対して「大丈夫、元気になるから」などとその場しのぎの言葉をかけてしまうと本人との間に溝ができてしまい、患者さんは孤独になってしまうんです。正解の言葉があるわけではありませんが、それでも苦しんでいる人の声を正面から聞くことはとても大切です。最期まで話を聞いてくれる人に寄り添ってもらい、人生を穏やかに過ごしてほしいという思いがあったので、コミュニケーションについて学ぼうと思ったのです。このほかにも、近くの小・中学校で「いのちの授業」という講話をやらせてもらっています。子どもたちに命の大切さ、素晴らしさを知ってもらうことで、地域の“幸福度”の向上につなげていきたいです。

地域に根差すファミリードクター

専門の呼吸器科をはじめとした外来診療について教えてください。

濱田努院長 きいれ浜田クリニック5

疾病の早期での発見や治療を可能とするため、内科を中心に私の専門科目である呼吸器科の外来診療を行っています。この専門医療を支えるため、リニューアルを機に新しいCT検査機器を導入し、肺機能検査の充実化を図りました。これまで以上に高度な検査機能を備えられたと思いますし、より早くより信頼性の高い検査の実現をめざしていきたいです。そのほかエックス線撮影装置やエコーなど、内科で必要な機器も取りそろえています。呼吸器疾患や認知症に特化しつつも、老若男女や疾病を問わず、すべてを対応させていただく姿勢です。以前の救急部での勤務経験も生かしながら、あらゆる状況に対して初期対応を行い、私の治療範囲から外れる場合はすぐに各専門科へとつないでいきます。

子どもに対してはどのような診療体制を整えていますか?

ワクチン接種をはじめ、生後間もないお子さんのケアも行っています。鹿児島市の保健センターと協力体制をつくり検診事業にも取り組んでいますし、風邪など少し調子が悪いという程度の対応も可能です。ただし、当院で対応できない場合はすぐに連携している専門医療機関をご紹介しております。また、当院は地区の学校医でもあり、現在は2つの小学校と3の保育園を受け持っています。これは、前院長でもある父が紡いできた地域とのつながりです。子どもから高齢者まで、地域に根差すファミリードクターとしての使命を果たしていきたいです。

最後に、今後のビジョンを教えてください。

濱田努院長 きいれ浜田クリニック6

この喜入の地に暮らす、すべての人にとってのファミリードクターでありたいと思っています。日常の健康問題の大半に対応できる幅広い診療を心がけていますが、疾病だけを見るのではなく、その背景にある問題を重視しながら、ご家族や地域も視野に入れた包括的な医療を提供していきたいと考えています。ただ診察するだけでなく、患者さんが納得できるまでお話しさせていただき、距離だけでなく、気持ちの上でも「いつも近くにいるファミリードクター」と思っていただけるのが、私のめざしているクリニック像です。

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