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今川 敦 理事長の独自取材記事

今川内科医院

(三豊市/本山駅)

最終更新日:2024/04/10

今川敦理事長 今川内科医院 main

香川県西部に位置する三豊市の、ちょうど中央に位置する豊中町。この町に、昭和初期から90年以上の歴史を紡ぐ「今川内科医院」がある。町内唯一の高等学校に近接する建物は、2015年の移転開業を経て、3階建てのモダンなクリニックに生まれ変わっている。同院の3代目を継承した今川敦理事長は、地域をけん引する高水準な内視鏡検査をめざし尽力する一方で、日本全国の消化器内科医と積極的に交流を図り、研鑽。この国の内視鏡医学の発展にその身を捧げている。その活動の幅広さは、開業医というよりもむしろ研究医に近い。インタビューでは、内に秘めた熱いパッションをさらけ出し、「すべては患者さんのため」と言い切る姿に心を動かされた。

(取材日2024年2月26日)

がん医療の中枢機関で先進の内視鏡治療を経験

クリニックの歴史を教えてください。

今川敦理事長 今川内科医院1

1932年に祖父が開業した当時は内科と小児科の診療所でしたが、父の代から消化器内科を標榜するようになり、私も父と同じ消化器内科を専攻して、2015年に当院を継承しました。継承時に新築移転したクリニックでは、私が得意とする内視鏡検査に注力するため、2階を専用のフロアにした点が大きな特徴です。先駆的な感染防御システムを導入した内視鏡検査室のほか、トイレ・カードキーつきの控え室を4室設置しています。鎮静剤を使われた方がストレッチャーのまま移動できるよう、2階は特に広く余裕のある空間設計です。下って1階は、一般的な内科クリニックらしい環境です。私は地域のかかりつけ医として、すべての内科診療に対応すべく、継承の年に日本内科学会総合内科専門医資格も取得しました。

先生はいつ頃から医師になろうと思われたのですか?

医師という夢を持ったのは小学校低学年の頃でしたが、両親から医師になることを強制されたわけではありません。父と患者さんが笑顔で話す様子を偶然目にして、「医師は人を助けて、笑顔にする仕事なのだ」と、憧れを抱くようになりました。北里大学を卒業し、岡山大学医学部附属病院の第一内科に入局した後は、臨床研修のため姫路市の市中病院へ。父と同じ消化器内科の医師になろうと考えてはいたものの、その意志が固まったのは、この姫路赤十字病院の先生との出会いがあったからです。飾らず、優しく、患者さんからの信頼も厚いその先生は、内視鏡治療においても高い専門性を有されていました。内科領域の中でも、内視鏡治療は患者さんに救命処置を施すことができる治療の一つです。当時の先生が、私にその素晴らしさを教えてくれました。

姫路市以外の市中病院にも勤務されたそうですね。

今川敦理事長 今川内科医院2

松山市の四国がんセンターに3年、倉敷市の倉敷中央病院に2年勤めました。どちらも非常に症例件数が多く、自身を鍛えやすい環境だったと思います。四国がんセンターでは、ESDと呼ばれる先進の内視鏡治療を初期の段階から経験。退職時には同系列の国立がん研究センターで短期間、手技も担当させていただいた上で倉敷に出向しました。私がもう一人、大きな影響を受けた先生との出会いはこの頃のことです。倉敷でESD治療を担当する直前に、この分野のエキスパートとされる先生の講演会に参加し、5センチ、10センチの早期がんを切除するその手技に衝撃を受けました。そしてこの先生に学びたいと、東京大学医学部附属病院への国内留学を決めたのです。東京大学で約1年学んだ後は、岡山大学の大学院で講義を受けながら津山市の病院で外来診療にあたり、その症例研究を博士号の論文として海外にも発表して、2009年に地元へ帰って来ました。

より診断の精度が高い内視鏡検査を志す

継承までには、国内外でご活躍をされたと聞きました。

今川敦理事長 今川内科医院3

14年ぶりの故郷では、三豊総合病院の内視鏡センター長に着任。以降6年間はセンター長を務めながら台湾に足を運び、海外経験の豊富な先生方と、内視鏡の実技指導を行いました。2014年には、海外の内視鏡専門誌の編集長職を拝命。世界中から集まった論文の掲載をジャッジし、内視鏡治療にまつわる鮮度の高いデータ、トピックスにふれる貴重な経験をさせていただきました。2015年のクリニック継承後も、この雑誌には2年ほど携わっていました。

クリニックの患者さんの主訴はいかがでしょう?

高血圧症、糖尿病、高脂血症などのかかりつけ医らしい診療も行っていますが、新患の方で多いのは胃の症状がある方や、便潜血検査で陽性と診断された方などです。そのほかでは、クチコミで当院を紹介されて内視鏡検査を受けに来られる方もおられます。内視鏡検査は外来診療の合間に行うところが多いと思いますが、当院はより集中して検査に取り組めるよう、別々に行うスタイルです。上部内視鏡検査に関しては受診のハードルを下げるため、日曜・祝日以外の毎朝8時から実施しています。検査後は一例一例に詳細なレポートを作成し、異常がない場合も「どう異常がないのか」を突き詰めたデータを残します。また行政の胃がん検診もお手伝いしており、検査結果は当地域のクラウドシステムで共有の上、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医とそれ以外の医師がペアを組みダブルチェックをすることで、診断の精度向上と、地域の医療レベルの底上げにつなげています。

内視鏡検査の内容についても教えてください。

今川敦理事長 今川内科医院4

上部消化管の内視鏡検査は経鼻内視鏡と経口内視鏡の2種類があり、基本的には、患者さんのご希望に合わせた形を選択しています。口から内視鏡を挿入する場合は嘔吐反射に配慮して鎮静剤の使用も検討し、鎮静剤を使用する場合は拡大機能を搭載した内視鏡によって、より精密な診断を試みます。ただ、最近では経鼻内視鏡の解像度が上がっていますので、極細径の経鼻内視鏡を口から挿入することで、診断の精度と嘔吐反射の軽減の両立をめざす場合もあります。大腸内視鏡検査における目標は、「クリーン・コロン」です。小さな大腸ポリープもすべて切除したクリーンな状態を保てるよう、10mm以下の大腸ポリープはその場での切除を図ります。5mm以下であれば、電気メスも使用しません。また上部・下部どちらでも、体内で吸収されやすいCO2を検査時に送り込み、検査後の腹部の膨満感を減らせるよう努めています。

香川から世界へ。内視鏡医学の発展に貢献

先生が今後、力を入れていきたいことは?

今川敦理事長 今川内科医院5

上部内視鏡検査でしょうか。先ほど経鼻内視鏡を口から挿入すると申し上げましたが、この方法であれば、舌や咽喉頭の病変が視野に入る可能性もあります。将来的には、内視鏡を扱う医師がこれらの微細な病変を早期に発見し、そして耳鼻咽喉科へつなげていけるよう、岡山大学の先生と協議を重ねています。さらに、欧州で流行している「グリーンエンドスコピー」という概念を日本に浸透させるため、香川大学の先生とともに「GREEN-K」という研究グループも立ち上げたところです。グリーン、つまりはSDGsを意識した内視鏡検査ということです。当院ではすでに、検査中の水の使用量を減らすなどの取り組みを実践していますが、例えば全国のクリニックでこれが実現できれば、どれだけの水を削減できるでしょうか? 数年後には一連の研究結果を世界に発信していこうと、今まさに活動している最中です。

他にも、進行中のプロジェクトがあるとか。

「うどん県フォーラム」を、2024年8月に企画中です。内視鏡治療を専門とする先生方を日本全国からお招きし、お互いの知識を深め合いながら議論を交わすことで、内視鏡医学のさらなる発展に貢献します。私個人では、術前・術中・術後の患者さんの管理もテーマです。この周術期管理の研究会に向けて、現在は全国1000ヵ所以上の医療施設を対象に、内視鏡検査の前処置の内容や検査における安全確認の実施率などを調査しています。どちらも開業医の枠に捉われない活動ですが、すべて、ひいては患者さんのためになるものと考えています。

最後に読者へのメッセージをどうぞ。

今川敦理事長 今川内科医院6

私は、内科の医師として患者さんと向き合うことも非常に勉強になると感じています。自分が持つ最大限の力を発揮しながら、日々勉強させていただいている患者さんたちのメリットとなるような、質の高い内視鏡検査をめざします。内視鏡検査は、継続的な受診が不可欠です。「二度と受けたくない」と思われて、受診が途絶えてしまえば、その間にがんが進行していくかもしれません。当院ではあらゆる意味で、次の受診につなげられる検査を心がけていますので、発がんリスクの高い飲酒・喫煙習慣がある方や、アルコールで顔が赤くなる体質の方などは、必ず検査を受けに来てください。

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