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坂本 伸也 院長の独自取材記事

さかもと小児科

(香芝市/志都美駅)

最終更新日:2022/07/12

坂本伸也院長 さかもと小児科 main

JR和歌山線の志都美駅東口から葛下川を渡り、川沿いの閑静な住宅街にたたずむ三角屋根の洋館が「さかもと小児科」だ。まるで建物は教会のようで、玄関前はライオンがお出迎え。院内に足を踏み入れると、子ども部屋をコンセプトにした待合室など、医療機関らしくない雰囲気で、坂本伸也院長の「子どもたちには、ここではリラックスして過ごしてほしい」という思いが込められている。内科も標榜しているのは、「付き添いの家族も一緒に受診できれば楽なのでは」という考えによるもの。診察にはじっくり時間をかけるという坂本院長は、こちらの質問の一つ一つに、丁寧に言葉を選びながら、穏やかな笑顔で答えてくれた。不安な気持ちで受診した子どもや付き添いの家族も、思わずほっと緊張が解けるのではないかと感じた。

(取材日2022年6月1日)

患者にリラックスしてほしいから白衣は着ない

外観や内装も医療機関らしくない雰囲気で、小さなお子さんも安心して受診できそうですね。

坂本伸也院長 さかもと小児科1

待合室は、子ども部屋をコンセプトに、汽車の仕掛け時計や人形、壁掛けなど、子どもが楽しめるようなアイテムで飾っています。緊張や恐怖感を和らげたいですし、リラックスしてほしいですからね。季節のイベントに合わせたオブジェで模様替えもしますよ。待ち時間に退屈しないように、絵本やおもちゃも用意しています。おもちゃには、自作のからくり玩具もあります。それから、診察時に白衣や診察着は着ていません。幼い子どもは白衣を怖がりますし、患者さんのご家族に「白衣を着ているのと着ていないのと、どちらが話しやすいか」を聞いてみたら、「白衣を着ないほうがいい」という声が多かったので、開業して1年ほどで白衣はやめたんです。

先生が医師をめざしたきっかけを教えてください。

高校時代に、医師であり、哲学者や音楽家でもあったアルベルト・シュヴァイツァーの書簡集を読んだのがきっかけで、医師を志すようになりました。浪人中に父が亡くなり、働きながら勉強を続け、苦労もしましたが、医師以外の道は考えられませんでした。理解し、応援してくれた母には感謝しています。進学したのは、奈良県立医科大学です。卒業後は小児科学教室に入局し、国立療養所福井病院(現・レイクヒルズ美方病院)を経て、八尾市立病院小児科に勤務しました。余談ですが、シュバイツァーへの敬慕は変わらず、現在はシュバイツァー日本友の会の副会長をしています。

小児科を専門に選んだのは、なぜですか。

坂本伸也院長 さかもと小児科2

内科と小児科のどちらかを選ぶときに、子どもが好きだったので自分には小児科が合うかなと思ったのと、細分化されて専門分野の疾患に専念する内科よりも、幅広く全身を診られる小児科に魅力を感じたからです。病院の小児科では患者さんが15歳になると他の診療科に移ってしまいましたが、開業してからは引き続き診察できます。内科も診察科目に掲げ、主に子どもの患者さんのご家族ですが、成人した方の診察もするので、さらに診察の幅が広がりました。例えば、風邪で受診したお子さんのお母さんも風邪をひいていたら一緒に診察しますし、おじいちゃんやおばあちゃんの生活習慣病を診察することもあります。小児科ではまず診ることのなかった高血圧なども診察するようになり、開業してから知識も深まりました。

内分泌や自律神経の疾患や肘の亜脱臼などにも対応

小児科医はオールラウンドな対応が必要なイメージがあります。

坂本伸也院長 さかもと小児科3

エコー、心電図、エックス線などの検査機器を備え、内科全般はもちろん、外傷などにも対応します。今は傷の縫合も医療用ホチキスで可能ですし、軽度の負傷の処置は当院で行います。もちろん、必要な場合は専門とする先生がいるクリニックや病院へ紹介しますが、対応可能な病気やケガは、当院で診察と治療を完結させたいと考えています。子どもの患者さんのご家族への診察をするのも、一緒に治療すれば、別の医療機関を受診する手間が省けて負担を減らせると思ったからです。

力を入れている分野はありますか。

成長ホルモン分泌不全性低身長、自律神経調節障害です。成長ホルモン分泌不全性低身長は、成長ホルモンの分泌量が少ないために身長が伸びない症状です。当院ではペンタイプの成長ホルモンの注射を処方します。自律神経調節障害は、一般に起立性調節障害といわれますが、立っていなくても調子が悪いときはあるので、私は自律神経全般の不調と捉えています。体の成長に自律神経の発達が追いつかず、10歳くらいで発症し、血管系に症状が出ると低血圧で朝起きられないなどの症状になり、内臓系に症状が出ると過敏性腸症候群を引き起こすことも。思春期が終わる18歳くらいには落ち着いてくることが多いですが、症状が重い場合、周囲の理解が得られずに不登校になることもあります。当院では投薬で治療を継続している患者さんが多いですが、症状に応じて精神科をご紹介することもあります。

内科だけでなく、先生は関節の脱臼にも対応してくれるのだとか。

坂本伸也院長 さかもと小児科4

病院に勤務していた時、肘内障のお子さんがいたら整形外科にお願いしていましたが、開業してからは勉強して診るようになったんですよ。肘の関節の亜脱臼は、小さなお子さんにはよくあることなんですよね。お子さんが転びそうになったときなどに、親御さんが子どもの手を強く引っ張ったりすると起きやすいです。成長して靭帯がしっかりすると再発しなくなっていきますが、幼いうちは癖になりやすいので、注意が必要なものなんです。お子さんのさまざまな症状に対応していくためには、幅広くさまざまな症状に対応していきたいですね。

しっかり患者を見て、じっくり診察することがモットー

診療の際に心がけていることを教えてください。

坂本伸也院長 さかもと小児科5

しっかり患者さんを見て診察すること、ご家族に丁寧に説明し、症状や治療法をきちんと理解していただくことです。デジタル化が進んでいますし、とても忙しい病院などでは、ほとんど患者さんへ目を向けずに、パソコンを見ながらの説明になってしまうこともあると聞きますが、私は、きちんと患者さんやご家族のお顔を見ながら、お話しするようにしています。コロナ禍になって、オンライン診療が進んできていますが、オンライン診療は大人の方には向いていると思いますが、小児科でははなかなか難しいですよね。やはり、顔を見て診察するのが大切です。じっくりお話を聞くため、診療時間は長くなることがありますが、待ち時間が長くなりそうなときは、ご自宅から当院までの所要時間を伺った上で、一度、帰宅していただき、診察の順番の少し前にご連絡するようにもしています。

ご自身で健康のために実践していることはありますか。

実は、3年前に心筋梗塞で倒れたんです。夕方、1日の診察を終えた後、何かおかしいなと思ううちに、意識がふうっと遠のいて、スタッフが救急車を呼んでくれて事なきを得ましたが、結構な重症で1ヵ月入院しました。もともと運動好きではなくて、家と職場の往復ですから、93キロにまで体重も増えていたので、まさに医者の不養生ですよね。倒れて初めて体調管理の大切さを身をもって知り、反省しました。それ以来、毎朝、歩いたり、体操したりしています。体重は73キロまで減りました。子どもの頃に来院していた患者さんが久しぶりに自分の子どもを連れてきたりすると、見違えたものですから「どうしたんですか?」と、びっくりしたりするんですよ。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

坂本伸也院長 さかもと小児科6

子どもの健康管理のために、ご家族が担っていく役割は大きいです。子どもは症状を自分で説明できませんから、ご家族の方が、お子さんにいつもと違う様子はないか気づいてあげることが大切です。また、子どもが体調を崩したときに慌てずに対処することも求められます。当院では、顔色の見方や吐き戻したときの処置の仕方から、具合が悪いときの食事などのアドバイスをして、ご家族をサポートしますので、なんでも相談していただきたいです。開業から30年の間、2代3代にわたるお付き合いの患者さんもいて、患者さんが成長していく過程を見られるのも、地域の小児科医としての喜びだと感じています。私も70歳になりますが、できる限り、皆さんと一緒にお子さんの健やかな健康を見守っていきたいと考えています。

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