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前田 佳宏 院長の独自取材記事

和クリニック

(町田市/鶴川駅)

最終更新日:2024/04/30

前田佳宏院長 和クリニック main

「和クリニック」は、小田急線の鶴川駅から徒歩約4分、ゆったりとした時間の流れる住宅街のメディカルビルにある。2021年に院長としてクリニックを継承した前田佳宏先生。平易な言葉を選びながら穏やかに話す姿からは、自然と周囲の気持ちをほぐしていくような不思議な魅力を感じさせる。一人ひとりの人生を「物語」と表現し、苦難もそこに必要なものとする前田院長の言葉には、人生の苦しい経験も切り捨てず、歩いていくための勇気を持ってもらいたいという想いが込められる。物語を生きる人の暗闇を、一緒に歩みながら照らしていこうとする前田院長の患者に寄り添う思いと、これからの展望について話を聞いた。

(取材日2024年4月5日)

人生という「物語」を生きる人に寄り添いたい

クリニックを継承されてから3年とのことですが、振り返られてみてどうでしょうか。

前田佳宏院長 和クリニック1

実に9割の患者さんが前院長の頃から通っていらっしゃるのですが、前院長が患者さんを大切にしてきたということが患者さんたちから見えてくるようなことがあります。初めのうちは患者さんの把握に時間がかかった時期もありましたが、丁寧に引き継がせてもらって、大きな支障なく診療を継続できているのではないかな、と感じます。長く通われている患者さんが多いこともありますが、クリニック名を以前のものから変えなかったのは、患者さんに安心して通い続けてもらうためでした。中には変化が苦手な方もいますし、私自身クリニック名にこだわりはありませんでしたから。

先生のご経歴を教えていただけますか。

兵庫県神戸市の出身です。島根大学医学部を卒業後、東京大学医学部付属病院の精神科医局に入りました。その後は群馬県の病院などに勤務し、国立精神・神経医療研究センターや、トラウマ診療専門のクリニックに勤務してから当クリニックを継承しました。東大病院は心理療法に理解があるのでさまざまな方から学べる機会も多く、国立精神・神経医療研究センターでは薬物依存症などの研究施設で学ばせてもらいました。また、トラウマ専門のクリニックでは児童精神科でも学ばせてもらう機会がありました。

先生が精神科の医師をめざした理由を教えてください。

前田佳宏院長 和クリニック2

物語が好き、ということがあります。登場人物が悩んで決断をして行動して次へ進んでいく、というのを見ていくのが好きなんですね。そんなところから心理学などに興味がありました。一般の医師であれば基本的には疾患のことしか扱わないですよね。そうではなく、ストレスのことなどを話題にできるような仕事ができたらいいと思って精神科を選んだ、ということが一番大きなところかもしれません。その人が自分自身を好きになったり、人生を「生きたい物語」にしていったりするためのお手伝いができたらいいと思います。もちろん苦難も物語の一部ですね。そんなふうに、患者さんの隣で伴走させてもらうのが私にとってうれしいことなんです。

患者一人ひとりに合わせたアプローチと幅広い治療法

診療の際、どのようなことに気をつけていらっしゃいますか。

前田佳宏院長 和クリニック3

最終的に診療が患者さんにとっても役立つ時間になればいいと思っているので、困り事を話しやすい空気や環境になるよう気をつけています。「話したとしてもこの人わかってくれない」とか、「話すと逆に余計面倒なことになりそう」だとか、そんなふうに思って結局言いたいことが言えないままになってしまう患者さんもいらっしゃるでしょう。それをきちんと受け止める姿勢を見せ続けることが大事だと思っています。また、例えば本人の気持ちを無視して診断したり、治療を進めようとしたりはしません。診断をつけることが本人の役に立てばいいんですが、役に立たない場合もあるので、本人の困り事を解消するために診断はいったん保留にすることも必要だと思います。また、標準的な精神薬に限るのではなく、漢方薬や心理療法などといった治療の手段をいろいろと研鑽してきました。お一人お一人の困り事に合わせて、適すると思うものをご提案します。

中でも力を入れている診療などはありますか。

一般的な「眠れない」という困り事に対して、さまざまな可能性に目を向けた検査や治療ができます。精神科の場合、眠れなければ「精神症状の一つですね」という扱いをされてしまうこともあるのですが、そこに睡眠障害が隠れている可能性もあります。その場合は睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群の検査などをして、原因となる疾患の治療をしていかなくてはなりません。特に不安なこともないのに眠れない、というのが睡眠障害ですが、眠れないということが不安の原因となりさらに眠れなくなるということがあります。眠れないことが先にあるのであれば睡眠障害なので、そこはきちんと検査をして治療していかなければ、睡眠薬の望まれる効果が出にくい場合もありますよね。

どのようなことにやりがいや喜びを感じられますか。

前田佳宏院長 和クリニック4

私が喜びを感じるのは、良くなるために患者さんが治療に取り組んでいく姿勢を見ることですね。人によって経過もそれぞれですし、本人の病状などもいろいろあります。それでも、自分が自分を良くしようと思って取り組まないと良い方向には進みません。そんな暗闇の中を一緒に歩いて「こんなふうに歩いてみたら」と応援することしかこちらにはできないのですが、中にはいくらアドバイスしてもまったく取り組まない方もいます。ただ、「歩けない」なら「歩けない」なりの理由や事情があるはずなんです。そこで「できない人は駄目だ」とは思いません。その理由を一緒に見つけて考えていくのも大事だと思っています。「先生に言われたことをやって結果が出ないと先生が不機嫌になるかもしれない」と思ってしまう人もいますが、別にそんなことはありません。「良くなりたい」という気持ちがあって受診してくれるのは、それだけでいいことだと思います。

良くなろうとする道筋を照らすために

先生ご自身がリラックスするために工夫されていることはありますか。

前田佳宏院長 和クリニック5

心理療法に近いイメージで自分自身と深く対話することがあります。ほかには、自律神経を整えるように意識することも結構ありますね。お風呂に入ったり、血流を良くする目的でストレッチをしたりします。ほかには定期的に誰かと話す機会をつくったり、好きなカフェに行ったりすることもリラックスタイムの一つですね。ゲームや散歩、アニメや漫画、創作することや旅行など好きなことにもふれます。自分の疲れをこまめに把握して、休む時間をきちんとつくるようにしています。

来院される方にどのようなことを伝えたいでしょうか。

「病院に行ったら必ず診断をつけられたり薬を出されたりするんだろうな」と思って受診をためらう人もいるでしょう。まずは、そんなふうに構えなくても大丈夫ですとお伝えしたいです。診断や薬も、希望がなければ出さないこともできるので「精神科に行ったらおしまいだ」などと思わなくていいです。一人では解決するイメージがなかなか持てない人や、日常に影響が出ている人などは特に来てもらえたらと思います。また、意外と多いのは誰かの対応に困ってしまって疲れてしまったという人です。介護疲れや親子関係なども多いですし、そういった対人関係のストレスなども「一度相談してみよう」と気軽に来てもらえたらいいかなと思います。

先生のこれからの展望を教えてください。

前田佳宏院長 和クリニック6

この4月からは新しい先生が加わって3人体制で診療していく予定です。クリニックとしてご提案できることも広がりますし、新体制になって軌道に乗ってきたらトラウマのケアをさまざまな領域で生かしていく活動もしていきたいと思っています。以前の職場で薬物依存など依存症のケアをしていたとき、その裏にトラウマがあるということが多かったんです。薬物依存なので薬では治らない、そんな人たちを良くしていきたいと思ってトラウマの診療に関心を持って勉強していました。患者さんの良くなろうとする道筋を照らすために、トラウマのケアは役立つものと感じています。もちろん今の患者さんを第一に考えながら、ケアを必要とする人たちのサポートができるといいなと思っています。

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