心と体の不調に加え、仕事に悪影響も
男性更年期障害の原因と治療
みらいメディカルクリニック銀座
(中央区/銀座駅)
最終更新日:2024/01/15
- 保険診療
いらいらや不機嫌、憂うつな気分、無力感、関節や筋肉の痛み、発汗・のぼせ、勃起不全など、心と体の不調が続く要因として男性更年期障害が考えられる。この病気については、厚生労働省が2022年に「更年期症状・障害に関する意識調査」の結果を発表し、2023年からは仕事への影響を調査するなど社会課題の一つとなりつつある。「男性更年期障害は本人にとって大きな悩みであると同時に、仕事のパフォーマンス低下などで大きな経済損失につながる病気」と指摘するのは、「みらいメディカルクリニック銀座」の田村貴明先生。「ただ、医療機関で適切な治療を受けている人は少ないのが現状です」と積極的な受診を促す。そこで、あまり知られていない男性更年期障害の症状や治療、受診する医療機関の選び方などを田村先生に詳しく聞いた。
(取材日2023年11月18日)
目次
専門の医師による生活習慣の指導と適切なホルモン補充療法で、多様な症状の改善を図る
- Q男性更年期障害の代表的な症状を教えてください。
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A
男性更年期障害を判断する指標の一つであるAMSスコアの質問では、「いらいらする、不機嫌になる」「神経質になった」「不安になりやすい」「憂うつな気分、無力感」などのほか、「関節や筋肉に痛みがある」「発汗・のぼせ」「眠れない、眠りが浅い」のように多様な症状が挙げられています。メンタル面の不調はうつ病とも似ていますが、最も気づきやすいポイントの一つは「朝立ちの回数が減少した」「性欲の低下」といった性的能力の衰えでしょう。男性更年期障害は年齢不相応に男性ホルモンのテストステロンの量が低下する病気で、「加齢性腺機能低下症」とも呼ばれますが、単に「年のせい」と考えてしまうと治療の機会を逃すかもしれません。
- Qテストステロンの分泌量が低下する要因は何ですか?
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A
加齢により分泌量は緩やかに低下するのですが、年齢不相応に低下する大きな要因としてストレスが考えられます。仕事や家庭でストレスを感じることは多いと思いますし、現在の日本社会の閉塞感からストレスを抱える方もいるでしょう。ストレス社会の最前線にいるような30代後半からテストステロンの量が低下し、40代で発症するケースも珍しくありません。そのほか睡眠、運動、食事といった生活習慣も相互に関連しながらテストステロンの量に影響してきます。やはりバランスの良い食事が大切ですし、適度な運動は筋肉や骨を刺激して分泌を促すことが知られています。また分泌は主に睡眠中に行われるため睡眠の時間と質も重要です。
- Q病気の診断にはどんな診察や検査が必要ですか?
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A
甲状腺機能低下症など男性更年期障害に似た症状を示す病気は多いので、専門の医師が問診票に基づく診察と血液検査の結果などから総合的に診断する必要があります。どのような問診票が適しているかは現在も学会などで検討が続いていますが、一般的にはAMSスコアを用いることが多いようです。当院では健康状態を包括的に知るための問診票に加え、男性更年期障害が心身に与える影響を見るための独自の問診票も用意し、患者さんの病状のトータルな把握に努めています。血液検査ではテストステロンの血中濃度も測定しますが、特に日本人男性の更年期において重要と考えられる遊離テストステロンの量を考慮して診断します。
- Q治療を受けるときの注意点などはありますか?
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A
男性更年期障害の認知度は次第に高まっていますが、今度は言葉が一人歩きし、個人輸入したホルモン剤を飲むなど、自己判断で安易に対応するケースがあります。これにより健康被害が出る可能性もあり、うつ病や甲状腺機能低下症など違う病気だった場合は発見が遅れるかもしれません。さらには前立腺がんなどが隠れていた場合、がんを進行させる可能性もあります。必ず医療機関で診断・治療を受けてください。ホルモン全般に関する診療科は内分泌内科が一般的ですが、中でも性ホルモンを専門とする医師を選ぶことが大切です。また、男性機能と密接に関わる泌尿器科も治療を行っているところもあり、私も泌尿器科の立場から長年治療してきました。
- Q具体的な治療法について教えてください。
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A
生活習慣の改善指導で体調を整えることをめざすほか、当院では保険適用の注射剤などホルモン補充療法を行います。特に病状が中程度から重度の方には、2週間から4週間おきの注射でテストステロンの状態の改善を試み、気持ちが前向きになるよう促してから生活習慣の改善に取り組んでもらいます。このほか症状の改善が期待できる漢方薬も数種類用意しています。テストステロンの低下を防ぐには生活習慣も大切で、バランスの良い食事の中でもホルモンの材料となるコレステロールを含む赤身肉、合成を促進する亜鉛、ビタミンDなどを含む料理を積極的に食べるといいでしょう。運動は筋肉に刺激を与えるレジスタンストレーニングがお勧めです。