中村茂人院長の独自取材記事

アレーズ銀座歯科

(中央区／銀座駅)

最終更新日：2024/05/27

並木通りにある「アレーズ銀座歯科」を訪ねた。院内はダークブラウンが基調のモダンな空間。治療スペースは衛生管理に配慮した個室を採用し、患者が落ち着いて治療が受けられるよう設計されている。噛み合わせ治療を得意とする中村茂人院長は、穏やかで丁寧な語り口が印象的。日本大学の客員教授を務め、歯学博士号を持つ歯科医師だ。根管治療・インプラント・矯正の専門知識をそれぞれに持つ複数人の歯科医師と向学心に満ちた歯科衛生士、長年の信頼関係にある外部の歯科技工士たちとが力を合わせ、チーム全体で患者の悩みに向き合う。重視するのは包括的な治療、またそのための診査・診断の追求だ。「歯科治療は奥深いもの。歯の悩みを単純に解決するのは難しいことなんです」と話す中村院長に、同院の特徴であるチーム医療や診療方針について聞いた。

（取材日2024年2月7日）

チーム医療で患者の悩みに向き合う
包括的な治療を行うための、徹底した診査・診断
歯科治療は奥深く、単純に解決するのは難しい

チーム医療で患者の悩みに向き合う

まずは開業までのエピソードをお聞かせください。

長年いつかは開業しようと思っていましたが、具体的なことは決めていませんでした。ある時、こちらの歯科医院を縁あって引き継ぐことになり、そこで一人の歯科衛生士と出会いました。私は開業するなら、治療だけでなく虫歯や歯周病を根本から予防できる医療を提供したいと考えていて、彼女も同じ考えでした。私が参加するスタディーグループの理念の一つに、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士などのスペシャリストが、チームになって歯科医療にあたるというものがあります。同じ志を持つ仲間と出会って初めて目標とする医療へ向かうことができると私は考えます。そんな医療を届けるために、彼女は心強い仲間となることを確信しました。私が使用したいと思っていた医療器具まで彼女がすでに用意しているほどに、めざす治療方針が一致していたんですよ。

今では多くの仲間とチーム医療に取り組んでいらっしゃいますね。

はい。当院では虫歯の治療だけではなく、歯周病治療、根管治療、インプラント治療、顎関節症治療、矯正、審美歯科など歯と口のさまざまな悩みに対応しています。これらは当然私一人でできることではありません。各分野を専門的に学んだ複数人の歯科医師と、勉強熱心な歯科衛生士、長年の信頼関係にある外部の歯科技工士が力を合わせてこそ成し遂げられるのだと思います。そんな専門知識を持ち寄ってのチーム医療が、当院の強みです。

どのような方が通われているのでしょうか？

近隣の方もいらっしゃいますし、遠くは九州や北陸から足を運んでくださる方もいます。主訴としては、小さな虫歯や詰め物の剥脱が多いですね。「いくつものクリニックを回ったけれど痛みが改善しない」「他院で治療してもらったけれどうまく噛めない」という相談もあります。「やり直しの少ない治療をめざす」という当院の理念に共感してくださり、相談してくださるケースは多いですね。当院には歯科衛生士の施術専用のユニットがありまして、メンテナンスで通う患者さんもいらっしゃいます。歯科衛生士も拡大鏡を使い、歯やセラミックを傷つけないために細心の注意を払い、歯石だけを丁寧に取り除くようにケアをしています。また、インプラントを希望される患者さんも、多くの方が遠方から通院されております。どのような悩みに対してもチームとして真摯に向き合い、患者さんの大切な歯を長く保てるように努めています。

包括的な治療を行うための、徹底した診査・診断

診療方針について教えてください。

包括的な治療、つまり、口の中全体を一口腔単位と考えて治療を行うことです。従来の歯科治療は、歯一本単位で、症状のある部分だけを治療するイメージがあると思います。しかし1ヵ所悪い部分があると、咬合負荷の連鎖から、他の歯や顎関節にも負担がかかっていることが多いのです。主訴だけではなく、口の中全体を診る必要があるということですね。多くの患者さんの願いは、年を取っても歯がきれいで健康な状態で、しっかり噛んで食事ができることだと思います。だからこそ当院では、治療前の診査・診断を徹底的に行うよう努めています。エックス線検査では14枚法という検査法により、一般的なパノラマエックス線ではわかりにくい細かな部分を確認し、顎関節の動きや顎の周りの筋肉まで調べます。必要に応じてMRIや歯科用CTによる検査も行います。根本的な原因を把握せずに治療をすると、対症療法を繰り返すことになってしまう場合もありますからね。

治療の際に工夫していることはありますか？

工夫の一つとして、すべての治療でラバーダムと呼ばれるゴム製のカバーを使用し、再発の原因となる菌や湿気の侵入防止に役立てています。ひと手間はかかりますが、当院では歯科医師全員がこのような丁寧な治療を心がけています。また、神経は歯の寿命に影響するとされるため、健康な状態の神経はできる限り残す方針です。さらに、歯を長持ちさせるために大切なことは、菌のコントロールと力のコントロール。前者は日頃のブラッシングに加えて歯科衛生士による定期的なケアが重要です。後者は対策が難しいのですが、治療の繰り返しなどで歯自体が薄くもろくなると、噛む力によって歯根が壊れてしまい、次々と歯が駄目になっていくことがあります。これを予防するには、噛み合わせを整えておくことや、日頃からきちんと治療を受けて歯がもろくならないようにすることが必要です。

チーム全員で勉強も続けていらっしゃるとか。

当院には私も含めた複数人の歯科医師がいますが、いずれもめざしているのは、先ほど申し上げた包括的な治療です。歯科医院での治療を日々行いながら、歯科のスタディーグループにも積極的に参加して、新しい情報を吸収するようにしています。歯科医療は日進月歩。常に勉強をしていかなければ、その時期その時期でベストと思える治療を提供できなくなってしまいます。歯科衛生士や歯科技工士も同様で、全員が同じ志を持っているからこそ、精度の高い治療を追求できるのだと思います。休診日にはスタッフみんなで研究会に参加することもあるんですよ。1ヵ月間、毎週日曜は研究会という時期もありました。そんな中で時間が取れた時は、家族や仲間たちとゆっくりお酒を飲んでいます。ほっとできるひと時ですね。

歯科治療は奥深く、単純に解決するのは難しい

一人ひとりにしっかりと時間をかけて診療されているそうですね。

おかげさまで年々来院患者数が増えていますが、患者さん一人にかける治療時間は開業以来変わりません。一日に対応できる件数は限られてしまいますが、質を落としたくありませんからね。私の恩師は「患者さんの見えないところの治療も全力で」と常々すさまじい執念で語っていました。歯科医療は、技術や設備ももちろん大切ですが、「絶対に手を抜かない」という熱い気持ちも同じように大切だと思っています。

患者さんの安心のために、衛生管理にも配慮されているそうですね。

開業時から感染症対策に力を入れています。新型コロナウイルス感染症の問題があり、さらに強化するようになりました。ユニットの持ち手など患者さんの手に触れる部分にフィルムテープを貼り、患者さんごとにその交換と個室内の消毒を行うなど、スタッフ全員が衛生管理に気を配っています。安心して受診できる環境は、提供する歯科医療の質と同様に大切だと考えるからです。落ち着いた内装だと言われることもあるのですが、実は内装は私が引き継いだ時からほとんど変えていないんです。院名もそのまま使いました。ただ、医療機器は一からそろえました。中でも、肉眼の24倍まで拡大できるマイクロスコープを導入したことで、患部のピンポイントな治療につながり、以前に比べて治療の精度が格段に上がったように感じています。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

皆さんにはぜひ、「歯科治療は奥深く、単純に解決するのは難しい」ということを知っていただきたいと思います。根本的な原因を解決するためには、それなりの期間が必要となることもあります。若いうちは「自分の歯がなくなる」なんて思わないかもしれませんが、いざ失ってみると、治療には時間もお金もかかるもの。そんな事態に陥らないよう、当院ではしっかり診査と診断を行って、将来起こり得るリスクをお伝えしています。これからもチーム一丸となり、目の前の患者さんに全力を尽くし、喜んでほしいという一心で治療に取り組んでまいります。