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岸本篤郎 院長の独自取材記事

岸本クリニック

(港区/六本木駅)

最終更新日:2021/10/12

岸本篤郎院長 岸本クリニック main

六本木駅から歩いてすぐ。外苑東通りに面したビルの4階にあるのが「岸本クリニック」。院内は白を基調とした清潔なイメージと、どこか懐かしくなるようなアットホームな雰囲気が漂う。院長の岸本篤郎先生は、はきはきとした語り口調の明るいドクターだ。老年病学を専門とし、「人生、太く長く!」というのが岸本院長の診療のモットー。インタビュー中には患者からの電話がひっきりなしにかかり、その訴え一つ一つに対して丁寧に答える様子からは、かかりつけ医としてこの地域に根差していることがうかがえる。エネルギーあふれる岸本院長に、この地で開業した理由や予防医学についてなど、詳しく話を聞いた。

(取材日2014年1月20日)

かかりつけ医として、病気と長くつき合っていくためのサポートを

開業するにあたってこの地を選んだ理由を教えてください。

岸本篤郎院長 岸本クリニック1

ここは長年勤めていた山王病院に近いので、なじみの患者さんがたくさんいるエリアなんです。近隣にお住まいの方たちと、山王病院の頃からの患者さんがだいたい半々くらいですね。もともとからの患者さんたちは「引き続き診てほしい」とわざわざここに通ってくださっています。中には兵庫や秋田など、遠方からの患者さんや、学生時代など昔からつながりのある方もいらっしゃいますね。六本木という土地柄、外国人の方など、さまざまな患者さんが多く、特徴的なエリアなんです。また、当クリニックは老年病学を専門としているので、患者さんは比較的ご高齢の方たちが多いですが、皆さんとてもお元気です。95歳の女性で、自分で買い物も料理もして一人で生活をされている方もいます。頭の回転も速く英語もペラペラ話せて、私の方が教わることが多いくらい(笑)。老年病学のめざすところは「人生、太く長く!」ということなんです。年齢を重ねても元気に歩いて長生きをして、寝たきりになることなく安らかに亡くなる。それが理想だと思いますね。

先生の診療スタンスを教えてください。

私一人で診察をしていますが、山王病院をはじめ、虎の門病院、東京大学医学部附属病院などと連携をとっているため、難しい症例や検査が必要な場合にはそちらへご紹介をします。地域の方々のかかりつけ医として初期診断をすることと、その患者さんが退院された後にフォローしていくことが当院の役割だと思っています。当院には高血圧、糖尿病、肺や肝臓に疾患を抱えている方が多くいらっしゃいますね。血圧が高くても糖尿病でも、長生きすることが一番だと私は考えています。病気を完全になくすというよりは、その病気とうまくつき合っていくことが大事なんです。弱点のない人はいません。弱点とうまくつき合っていけるようにサポートするのが医学だと思っています。そのために食事指導をしたり柔軟体操をお勧めしています。簡単な柔軟体操でも脳を鍛えるのにはとてもよいですね。人間の細胞はだいたい70兆あるといわれていますが、全身の細胞を隅々まで動かしてあげることが必要なのです。最も大事なのは後根神経節(Posterior root ganglion)に刺激を与えること、それはすなわち柔軟体操なのです。首には7つ、胸は12、腰は5つの骨があり、それを脊椎と言います。その両脇から出ているのが後根神経節です。後根神経節は、運動神経をつかさどる前根神経と、知覚神経をつかさどる後根神経がちょうど交わるところです。そこに刺激を与えることにより、脳にフィードバックされ、手足の動きなどの指令を出します。その刺激のために顔を前に向け、左右対称に動かすなどの、柔軟体操をお教えしています。これによりボケ防止や脳の活性化にも期待できるのです。この柔軟体操は岸本流です。一週間に何度かではなく、「毎日、そして何回も」やることが大切ですよ。Daily dozenの意味を理解しましょう。

患者に接する上で心がけていらっしゃることはありますか?

岸本篤郎院長 岸本クリニック2

ざっくばらんに話をすることと私自身も医師だと偉そうな態度ではなく、一人の人間としてありのままで接することでしょうか。最近は、電子カルテなどが導入され、患者さんをあまり診ていないような医師もいるように思いますが、やはり患者さん自身を診て、話すことが大切ですよね。私は、患者さんとはいろいろなお話をしますよ。患者さんが何を求めているのかというと、元気に長生きをすることなんです。「寝たきりにならずに最期を迎えたい」とおっしゃる方が多いですし、私もそれが理想だと思っています。転んで寝たきりにならないようにするために、患者さんには「あまり重いものを持たないようにね」とか「長く歩くときには途中で休んでくださいね」と言っています。患者さんには、何かあったときに対応できるようにと私の携帯電話の番号を教えています。医院にかけても私がいないことがありますからね。日曜日ゴルフをやってても携帯は肌身離さず持っていますし、寝るときも持っています。それが患者さんの安心につながっているのだと思います。番号を書いた紙をベッドに貼っているという患者さんもいるんですよ。そうやって患者さんと一緒に歩んでいく、それが大切ですよね。

病気の早期発見と予防に力を注ぐ

先生は山王病院で内科部長を務めていらっしゃったそうですね。

岸本篤郎院長 岸本クリニック3

ええ。山王病院には35年勤めていました。たくさんの患者さんを診ていくなかで、病院にはある程度症状が進行してしまっている方も多く、そこから予防医学の大切さに気づいたのです。症状が進んでしまった後では、どんなに最新機器のそろった病院へ行っても、高額な治療費を払っても治らないこともあるのです。もっと早く診てあげられれば、もっと早く病院に来てくれればと思うことが何度もあり、クリニックを開院するときは病気になる前の予防、出来るだけ早い病気の発見をメインに診療をしていこうと思いました。当院では、がんや脳卒中、心筋梗塞、腎臓病などの病気の早期発見や、予防に力を注いでいます。また、最近はデスクワークで身体を動かさないことと、食事が簡単に手に入る時代になったことで、30、40代のメタボリックシンドロームの方が非常に増えている印象を受けます。メタボは脳卒中や脳疾患、がんなどの生活習慣病にかかる可能性も高くなってしまいます。若い方は忙しいがゆえに、自分の健康管理を怠りがちですが、将来のためにもっと気を遣ってほしいと感じています。

予防医学で大事なことは何でしょうか?

よく噛んで、よく食べること。食べ物をよく噛んで食べれば栄養になりますからね。食べ過ぎた次の日には、少し抑えて調整することも大事ですね。食べ物でよいのは、卵と牛乳。卵は、骨になる部分、内蔵になる部分、すべてを持っているエネルギーの塊です。取り過ぎてはいけませんが、1日1個食べる分には問題ありません。牛乳で下痢をしてしまうという人は、いったん沸騰させて砂糖を入れてかき混ぜて飲んでみましょう。野菜にはよく火を通して、肉や魚もやわらかくして食べましょう。食べてはいけないものはありませんが、必ず便を見るようにしてください。きちんと消化しているかを毎日自分でチェックするとよいですね。

食べ物の他にも気を付けたほうがよいことはありますか?

岸本篤郎院長 岸本クリニック4

寝る前に口の中をきれいにすることも大切です。私は食事の後につまようじで歯をきれいにして、寝る前にしっかりブラッシングをします。私は70歳を超えていますが、入れ歯は1本もないんですよ。ナイロン素材の歯ブラシではなく馬や豚の毛の歯ブラシを使って、歯磨き粉を付けずに洗います。血が出るほど磨くのはだめですよ。歯も細胞なので労らないとね。温かいお湯できれいにして、最後は冷たい水で口をゆすぎます。内科ではあまり言われないことかもしれませんが、全身の健康のためにも、寝ている間に菌が繁殖するのを防ぐのは重要なのです。それから、冬場は特に体を温めてください。まずは着るものを温かくし、あとは部屋の温度で調整すること。当院では寒暖計を何ヵ所かに置いて、だいたい22〜23度になるようにしています。高齢の方は特に、温度に気を使わなくなってしまうケースが多いので、夏は暑すぎないように冬は寒すぎないように気を付けましょう。

健康な体は自分でつくる。医師はそのためのアドバイザー

先生は小さい頃どんなお子さんでしたか?

岸本篤郎院長 岸本クリニック5

私は1939年に生まれたのですが、それはドイツがポーランドに攻め込んだ年です。2年後には真珠湾攻撃があり、幼稚園の時に敗戦しました。中学生までは兵庫県生野の田舎で育ちました。勉強が大好きで、数学が得意でしたよ。8人兄弟の6番目だったこともあり、好きなことをやらせてもらえたので両親には感謝しています。昔から自分には医師が向いているのではないかと、なんとなく思っていましたね。兄弟が多いと切磋琢磨して強くなると思うのですが、その中で自分を鍛えていったのが医療の道を進む上でもよい経験になりました。医師は、最終的には自分で判断し、自分でその判断の責任をとらなければならない孤独な職業ですからね。内科を選んだのは、人のことを見てじっくり考える分野が自分に合っていると思ったからです。私の専門としている老年病学は、元気で長く生きるために、がんや脳卒中、心筋梗塞、腎臓病を予防する医療。髪の毛が1本になっても歩けることが大事。おいしいものを食べて、美しいものを見て、いい音楽を聴いて、そうやって元気で長生きする、そのために医学があると思っています。

先生のご趣味は何ですか?

趣味は「3G」です。ゴルフと囲碁と語学の3つのGです(笑)。囲碁は日本棋院の4段を持っています。今は英語に夢中で、独学で辞書を引いて勉強をしています。子どもの頃は教えてくれる人がいなかったので英語の勉強ができなかったんですよ。発音は、休憩室で食事をしながら患者さんに習っています。私は74歳ですが、3人の子どもがそれぞれ独立したので、60歳で一度人生が終わったと思っているんです。だから今は2回目の人生で14歳だと思っています(笑)。いろいろなことに興味を持っているから元気でいられるのだと思います。最近はアフリカのタンザニアに興味があり、ぜひ行ってみたいと思っています。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

岸本篤郎院長 岸本クリニック6

健康は自分で努力してつくろうという気持ちが大事です。与えられるものではなく自分でつくっていくもの。医師はそのためのアドバイザーですからね。お酒を飲んでいても、タバコを吸っていても長生きする人はいますので、絶対にだめというわけではありません。人間が考え出したものなので、メリットもあるのです。ただ飲み過ぎ、吸い過ぎはいけません。なんでも度を越してしまうのはよくないですね。お酒もタバコも上手に利用できないのならやめましょう。また、若い女性の方がハイヒールで通勤などをされている姿をよく見かけますが、身体にはあまり良いものではありません。時と場合によっては必要なシーンもありますが、通勤などは出来るだけ負担をかけないように、普段から自分の身体をいたわるということを心がけてほしいです。人生で一番大切なのは健康です。そのためには自分でコントロールをしていく必要があるのです。

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