毎日、丁寧な食事や呼吸を
地域で向き合う口腔機能維持・管理
LIFE DENTAL CLINIC
(綾歌郡綾川町/滝宮駅)
最終更新日:2023/12/12
- 保険診療
口腔機能という言葉を、少しずつ耳にするようになった。「食べる」「噛む」「飲み込む」「呼吸をする」だけにとどまらない機能の数々は、人が生涯、健康な生活を送る上でなくてはならないものばかりだ。「口腔機能は、健康の最前線にある」と語る「LIFE DENTAL CLINIC」の黒井隆太院⻑は、9年間勤めた総合病院と開業後も連携を図りながら、地域高齢者の口腔機能維持・管理に取り組んでいる。超高齢化が進む日本社会だが、中でも香川県は誤嚥性肺炎の発症率が高く、加齢に伴う口腔機能の低下は県全体の課題ともいえるだろう。今回のインタビュー記事では、口腔機能の衰えがもたらす症状やクリニックにおけるアプローチ、また綾川町地域の医療連携について、黒井院長に詳しく聞いた。
(取材日2023年7月27日)
目次
栄養管理を含めた、機能的口腔ケアも歯科医師の使命と捉え注力
- Q「口腔機能」とは、どのような機能を指しますか?
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A
一般的に、歯科医院は食べる、噛むという2つの行為を治療の最終目的としています。しかし、口腔の機能はそれだけではありません。話す、呼吸をする、姿勢を保持する、さらには笑う、味覚を感知するといった機能もありますね。私は総合病院時代に患者さんの看取りを経験する中で、人間にとって最も大切なのは食べることと、呼吸をすることだと痛感しました。毎日正しい姿勢を保ち、深く呼吸をしながら、丁寧に咀嚼し飲み込むこと。口腔機能を保つことが、その人の健康につながってくるのです。当院では、治療によって良好な歯の噛み合わせをめざすと同時に、食事や呼吸のアドバイスも行うことで、患者さんの口腔機能の維持・回復に努めています。
- Q口腔機能が衰えるとしたら、原因は何なのでしょう?
-
A
主な原因は、加齢による筋力、認知低下です。日本では進む高齢化を背景として、2018年に「口腔機能低下症」という病名が作られました。高齢化に伴う全身の機能低下の前兆は、多くの場合まず口腔から現れます。食べこぼしや軽度のむせ、硬い食べ物の食べにくさなどの症状があれば、口腔機能低下症の疑いが強く注意が必要です。進行すると、栄養が偏って低栄養になったり、筋肉量が減少して転倒・骨折のリスクが高まったりする恐れがあります。摂食嚥下障害に至れば、食べ物がうまく飲み込めず気管に入って、誤嚥性肺炎を引き起こすこともあるでしょう。綾川町は全国的に見ても高齢化率が高く、口腔機能の維持・管理は喫緊の課題だと思います。
- Qこちらでは、口腔機能低下症の方々にどう対応されていますか?
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A
院内においてはお口の体操や筋肉のマッサージなどを実施していますが、訪問診療の場合はよくむせる、誤嚥性肺炎の既往があるといった患者さんが中心ですので、筋力アップよりも環境整備が課題です。口腔ケアと並行して、食事の形態や介助法などに介入し栄養管理を行います。サルコペニア、つまり筋肉量が減少し筋力が低下した状態で嚥下障害を起こしている場合は、栄養管理とリハビリテーションの双方に取り組みます。口腔ケアには、口腔の清掃性を保つ「器質的口腔ケア」と、口腔機能の維持・向上を目的とした「機能的口腔ケア」の2種類があり、これからはお口をきれいにするだけでなく、栄養管理まで担う必要があるというのが私の考えです。
- Q総合病院と介護施設の連携も進められているそうですね。
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A
綾川町では、急性期の患者さんは地域の中核病院である滝宮総合病院へ搬送される場合がほとんどです。しかし、例えば口腔機能が低下し肺炎を発症した施設の患者さんが、病院で施設と異なる形態の食事を出されたら、その誤差が大きなハードルとなって窒息したり、肺炎を重症化させたりするかもしれません。こうしたトラブルを未然に防ぐため、私は病院の脳神経外科の先生や地域連携室の方々とともに、病院と施設における口腔・栄養管理基準の統一化を進めています。医科と歯科、病院とクリニックがタッグを組むことで、地域一丸となってシームレスな連携をめざしたいと考えています。
- Q口腔機能維持のため、日頃からできることはありますか?
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A
口内で舌を回し、舌の運動をしながら唾液の分泌を促す体操をお勧めします。舌と唾液は、どちらも口腔環境を保つ重要な存在です。左右10回ずつ、続けてみてください。次に、大きく口を開けて「あ・い・う・べ」と10回口に出してみましょう。「べ」の時には舌を出してくださいね。この体操をすると、舌が上顎へ上がり、鼻呼吸がしやすくなります。これも全年代の方にお勧めできる体操です。あとは、会話中も食事中も、唇や舌をしっかりと動かすこと。これら体幹の筋肉を、毎日丁寧に使っていただきたいです。歯だけで噛んでいたり、スマホを見ながら食べたりしていませんか? 筋肉を疎かにせず、食事には感謝して向き合うようにしましょう。
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マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。