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遠藤 英俊 院長の独自取材記事

いのくちファミリークリニック

(稲沢市/稲沢駅)

最終更新日:2023/12/27

遠藤英俊院長 いのくちファミリークリニック main

国立長寿医療研究センターなどで長年にわたり勤務をし、日本老年医学会老年病専門医でもある遠藤英俊先生が、2021年に開業した「いのくちファミリークリニック」。認知症の早期発見・早期治療を重視する遠藤院長は、看護やケア、社会福祉制度の専門家や総合病院との連携を図り、専門性の高い診療を展開。日々の診察では、患者の病状だけではなく、生活面での不具合がないか、家族に無理が生じていないか、などの聞き取りを丁寧に行うスタイルだ。高齢や障害が原因で、通院が困難となった患者に対しては訪問診療を実施。1日でも長く自宅で過ごしたいという患者の思いに寄り添っている。そんな遠藤院長にたっぷりと話を聞いた。

(取材日2023年2月23日)

40年以上のキャリアを誇る、高齢者医療の専門家

医師を志し、老年内科を専門とされた理由は何でしたか?

遠藤英俊院長 いのくちファミリークリニック1

名古屋の明和高校が母校なのですが、高校に入学した頃は、医師になるつもりはまったくなくて、進路も何となく文系を選択していたんです。そんなある日、イギリス人医師であるクローニンによって書かれた小説を友人が貸してくれたのです。そのストーリーに感銘を受け、医師という仕事に憧れを持つように。急きょ理系へと進路変更し、医学部をめざすことになりました。滋賀医科大学を卒業後は、名古屋大学医学部医学科大学院へ進学したのですが、そのときに相談に乗ってくださった教授が老年内科の先生だったことが今につながっています。精神科や小児科など他の科にも魅力を感じてはいましたが、私自身、お年寄りが好きなことも進路決定を後押ししました。その後、医師免許を取得して、最初に勤務した病院には、たくさんの認知症患者さんがいらっしゃってたいへん驚いたのを覚えています。これからの時代、必要とされる医療であると感じましたね。

勤務医時代のお話も伺えますか?

勤務医をしていた1990年には、新しい活路を見出したい思いから、アメリカに留学しました。その際、精神科の医師であるロバート・バトラー先生に指導を受けました。バトラー先生は、アメリカ国立老化研究所の初代所長なのですが、高齢者に優しい社会を作ることの大切さを教わりました。「君には見込みがある」と言っていただけたのが、うれしかったですね。また、国立長寿医療センターでは、井形昭弘院長のもと、国内各地や海外に出向いて行って、講演を行ったり、国内外の医師への指導をしていました。日本で介護保険制度が制定される際にも、審議メンバーに加わったりと、国全体に働きかけるような仕事にも従事していました。バトラー先生と井形先生、お二人の思いをつなぎたい、という思いが今でも、私の原動力になっています。

こちらに開業された経緯についても教えてください。

遠藤英俊院長 いのくちファミリークリニック2

勤務医としての仕事にもやりがいを感じていましたし、定年を迎えた後でもどこかの病院に勤めるという選択肢が自然な流れでした。しかし、自分でさまざまな事柄をハンドリングできる開業という道が自分には合っているような気がして、決断に至りました。出身地である一宮からも近く、名古屋へのアクセスも良い稲沢という地にご縁があり、開業を決めました。開業にあたっては、「3つのC」、 CHANCE(チャンス) 、CHALLENGE(チャレンジ)、CHANGE(チェンジ)を私のテーマとしました。定年というチャンスをきっかけに開業にチャレンジし、今までと働き方をチェンジする、という意味です。専門である高齢者医療を軸に、患者さんやご家族、お一人お一人に寄り添うことができるように尽力していきたいと思っています。ちなみに、当院のロゴは、いのくちの「井」にハートをあしらい、4つ葉のクローバーをイメージしています。

認知症の早期発見・早期治療に注力

クリニックの特徴について教えてください。

遠藤英俊院長 いのくちファミリークリニック3

当院は、内科・老年内科・神経内科・老年精神科を標榜しています。当院へ来られる方は多くが70代以上の高齢者ですので、院内はバリアフリーに。車いすでも快適にお過ごしいただけるよう、スペースを広めに取りました。常勤の医師は私一人です。認知症の診断・治療の他にも、頭痛や生活習慣病の治療も行っています。院内での診療に加えて、個人宅や高齢者施設、障害者グループホームへの訪問診療にも対応しています。また、脳神経内科の医師である私の息子が月に2回、非常勤で診察にあたっています。精神症状や認知機能、自律神経障害などのご相談に応じていますし、自立支援、精神障害者福祉手帳、介護保険など、さまざまな相談にも対応しています。

診療において力を入れていらっしゃることは何ですか。

認知症の早期発見・早期治療です。認知症には大きく分けて4種類あるといわれていますが、中でも最も患者数が多い、アルツハイマー型認知症では、早期からの薬物療法による進行抑制が期待できます。早期に診断が下りれば、本人や家族も介護サービスや支援方法の情報を早い段階で入手でき、負担軽減にもつながると思います。そのためにも、小さな違和感を見逃さずに、検査や脳ドックを受けていくことを推奨しています。当院でも検診を受けつけていますし、CTやMRI、脳SPECTなどの検査は近隣の病院をご紹介します。また、認知症初期集中支援チームとの連携もしています。認知症の疑いがあるものの、診断や治療を受けていない方を当院へ紹介いただき、適切な治療の提供につなげています。

介護などの他職種や病院との連携を大切にされているんですね。

遠藤英俊院長 いのくちファミリークリニック4

はい。例えば、認知症初期集中支援チームからの紹介で、認知症の疑いがある男性の自宅を私が訪ねたとします。その方が、所持金も少なく、食べる物にも困っている状態の場合、私ができることは、経口補水液を処方したり、点滴を行うなどまずは応急処置をして、行政にも連絡をすることです。行政にも連絡をすることで、生活保護を受給できるようになるかもしれません。その後、私が定期的に訪問診療へ行き、訪問ヘルパーさんが出入りする流れを構築していく。このように、医師1人でできることに限界はありますが、他職種や病院、行政と連携をして、チームで地域を支えたいと思っています。

誰もが安心して老後を迎えられる環境整備に注力したい

日々の診療で心がけていることは何ですか?

遠藤英俊院長 いのくちファミリークリニック5

まず一つに、患者さんが院内に入って来られるときの表情や歩き方をよく観察するようにしています。急に痩せた、など前回の通院時との変化に先に気づけていれば、診察時に「ご飯はきちんと食べているの?」など一歩踏み込んだ会話をすることができますしね。そしてもう一つの心がけは、患者さんのバックグラウンドを把握して接することです。例えば、この女性は駅前に住んでいて花屋さんを営んでいた、などを踏まえた上で、相手の興味や関心がある内容についてお話しすることで、患者さんと物語を共有するようにしています。また、隣で付き添っておられる、ご家族にもお話しを聞いたりして、高齢者を日々支える方の心身の健康状態も同時にチェックするようにしています。

お忙しい毎日だと思いますが、先生ご自身の健康法などについても伺いたいです。

日帰りで近隣の山に出かけることが多いですね。御在所や、伊勢、金華山などの低山を登ることで足腰が鍛えられ、先日訪れた屋久島では、8時間歩き続けることができました。そして、登山とセットで楽しんでいるのが、温泉です。榊原温泉を始め200ヵ所は訪れたと思います。健康法については、自宅近くの歩道橋を毎日3往復し、縄跳び30回、スクワットも30回続けています。食事もジャンルを問わず、楽しんでいます。将来のことをあれこれ考えると不安な気持ちになることは、誰しもあると思います。大切なのは、今日1日をどう過ごすかではないでしょうか。人の命ははかないからこそ、1日1日を積み重ねていくことが大切だと思います。

今後の展望をお願いします。

遠藤英俊院長 いのくちファミリークリニック6

今年で69歳になりますが、あと10年は走り続けたいですね。そのためのモチベーションは、地域の方にいい医療を提供したいという思いです。患者さんやご家族に喜ばれることは、医師として何物にも代えがたい喜びです。その実現のためには、社会全体で取り組まないといけない課題もあります。最近では、地域の方向けに近隣のお寺で寺子屋を開き、「健康寿命の延ばし方」についてお話ししたり、民生委員向けの講演も行いました。オンラインでケアマネジャー向けの講義をしたときには、80人ほどの参加者が集まりました。当院での診療に軸足を置きつつ、今後もこういった活動にも取り組んでいけたら、と思っています。

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