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大野 耕策 院長の独自取材記事

おおの医院分院・こども発達クリニック

(米子市/富士見町駅)

最終更新日:2021/11/10

大野耕策院長 おおの医院分院・こども発達クリニック main

米子市西福原のメイン道路から1本入ってすぐの場所にある「おおの医院分院・こども発達クリニック」。道を挟んですぐ隣にある「おおの小児科内科医院」の分院で、発達障害や不登校など、子どもたちの心の問題に長年取り組んできた大野耕策院長が、「学校と連携して、子どもたちの発達への不安を解消していきたい」という熱い思いで開院したクリニックだ。小児の脳神経疾患の豊富な診療経験と、これまでに地域の学校と築いてきた信頼関係をもとに、子どもたちの声に耳を傾けながら、「一人でも多くの子が健康な心で社会に出られるように」と温かな支援を心がける。穏やかな笑顔で迎えてくれた大野院長に、クリニック開業への思いや子どもの発達障害について話を聞いた。

(取材日2021年6月2日)

子どもたちが学校でも家庭でも笑顔で過ごせるように

先生が医師をめざされたきっかけを教えてください。

大野耕策院長 おおの医院分院・こども発達クリニック1

私が6歳くらいの時に、妹が激しい咳の続く百日咳という病気にかかりました。妹を診察してくださった小児科の先生が、当時はまだ新しかった抗生物質を処方するなど手を尽くしてくださった様子を見て感激し、「この先生みたいな小児科医になりたい」と思ったのがきっかけでした。そして、鳥取大学医学部に入り、私が3年生だった1971年に小児神経疾患の専門診療科として脳神経小児科が鳥取大学医学部に開設されました。新しい領域だったことと、担当されていた教授の穏やかな人柄に惹かれて、脳神経小児科を専攻しました。

小児の脳神経疾患にはどのようなものがありますか?

てんかん発作などの神経疾患や代謝異常、筋疾患、脳血管障害、発達障害などがあります。脳神経小児科が日本で開設された当時は、治療が難しい症状や病気が多かったのですが、その後の研究によりいくつかの遺伝病は治療が可能になりました。私も九州大学医学部附属癌研究施設やアメリカのノースカロライナ大学「脳と発達研究所」で遺伝病に関する研究に携わり、原因遺伝子を探すなどして治療法の確立に貢献しました。その後は、鳥取大学医学部附属病院の脳神経小児科教授や、山陰労災病院の病院長勤務を通して、主に発達障害を専門として地域の子どもたちを診てきました。

おおの医院分院・こども発達クリニックはどんなクリニックですか?

大野耕策院長 おおの医院分院・こども発達クリニック2

授業中に席を立ってしまう不注意な子や、やってはいけないとわかっていてもつい手が出てしまう多動衝動性のある子、こだわりの強い子、対人スキルが未熟な子、不登校など、子どもの発達に関することを専門に診るクリニックです。山陰労災病院に勤務している時に、地域の学校と連携してたくさんの子どもたちを診てきました。2014年からは鳥取県のいじめ・不登校総合対策センターで取り組んでいる専門の医師による教育相談会を担当し、不登校の子どもたちも多く診てきました。そうした活動を通して、普段の生活で困っていることや苦手なことのある子どもたちを受け入れる場所が必要だと感じました。山陰労災病院を退職した70歳の時に、発達障害や不登校の人のためのクリニックを開業し、現在は病院時代に築いた地域の学校の先生たちとの連携体制を生かし、家庭からの教育相談にも応じて、子どもたちが学校でも家庭でも笑顔で過ごせるように支援しています。

症状を「障害」ではなく「個性」として生かす

どんな症状で来院されることが多いですか?

大野耕策院長 おおの医院分院・こども発達クリニック3

落ち着きがなかったり、特定分野の勉強が極端に苦手だったり、集団生活になじめなかったり、学校の勉強に遅れが出やすかったり、生活の中でトラブルが起きやすかったりする子どもたちが、学校からの紹介で来院することが多いです。症状の現れ方によって、自閉症スペクトラム症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害などの発達障害と診断されることもありますが、症状があったとしても、学校や社会生活において何も問題なく過ごせればそれは「障害」ではなく「個性」になります。発達障害と呼ばれる人の中には、好きなこと、自分が興味のある分野、領域に対して高い集中力で取り組んで、ものすごい才能を発揮する人もたくさんいます。一人ひとりの子どもに丁寧に関わって、その子の症状が「障害」ではなく「個性」として生かせるように支援しています。

学校の先生からの紹介で来院するケースが多いのですね。

家ではわからなくても、学校などの集団の中に入った時にわかる症状もあります。特に学校の先生はたくさんの子どもたちを見ておられるので、先生が気づいて保護者に「病院に行ってください」と言っても、お母さんやお父さんが戸惑われて拒否反応を示されることも以前はありました。しかし、これまでの連携から私と学校の先生方との信頼関係が構築され、専門の医師による診療を受ける意義や、診療を受けた場合の可能性について先生が保護者に説明してくださることで、保護者の皆さんも抵抗なく来てくださるようになりました。

不登校の子どもたちの支援も継続してされているのですか?

大野耕策院長 おおの医院分院・こども発達クリニック4

はい。不登校になる子は、真面目で優しくて人一倍敏感で、一生懸命に頑張ってしまう子が多いです。周囲の人に心配をかけたくないから学校で明るく振る舞うけど、心の中はいつも不安でいっぱい。その不安が大きくなって、ついには学校に行けなくなってしまうのです。子どもが不登校になったとき、いじめなどの具体的な理由がない場合は、一度専門の医師に診てもらって、不安の背景にあるものを探り出すことが重要です。診療では本人や家族から話を聞いて、不安を少し和らげるための薬を処方します。そして、ずっと家に引きこもるのではなく、放課後に学校に行ってみようとか、先生に連絡帳だけでも渡しに行こうとか、できるところから外に出かけて少しずつ自信を積み重ねていくことが大切です。家族だけで悩まずに、学校の先生や専門のクリニックなど、第三者にも相談されることをお勧めします。

気持ちに寄り添い、自己肯定感を高める

こちらのクリニックではどんな診療や治療を行いますか?

大野耕策院長 おおの医院分院・こども発達クリニック5

まず、学校の先生や保護者の方に、子どもの学習の苦手さや不注意・多動衝動性、こだわり・対人スキルのチェックリストを記入してもらいます。チェックリストから、その子は何が得意で何が苦手なのかを見つけ出し、その結果をもとに今後の治療方針などを本人と保護者、先生にしっかりと説明します。不注意・多動衝動性がある場合や、イライラが強く興奮しやすい場合などには薬物療法をすることもあります。そのときも、子どもに「なぜ薬を飲むのか」「障害があるからではなく、あなたの実力がちゃんと出せるようにするために薬を飲むんだよ」と伝えて、本人に納得してもらうようにしています。子どもたちの症状が落ち着いて集団や社会で問題なく過ごせるようになり、周囲から評価されるようになると、本人も「認めてもらえた」と自己肯定感を高めることにつながります。

普段の診察で心がけておられることは何ですか?

落ち着いた雰囲気で、子どもの話に耳を傾け、たくさん褒めるようにしています。否定しないことが大事だと思っています。否定されて自己肯定感が下がると暴言を吐いたり、反抗的な態度をとったりするようになります。家族には、子どもの自己肯定感が高くなるように接してもらうよう説明しています。例えば、何か悪いことをしたときには、「○○するなんて、あなた、駄目でしょう」とその子を否定するのではなく、「そんなことをしたら、お母さんは悲しい。だから、○○をしたら駄目だよ」と、気持ちを共有してから正しい行動を教える伝え方に変えてあげると、自己肯定感は下がりません。一人の人として大切に接することで、子どもたちは自己肯定感を高め、将来、自信を持って社会に出ていけるようになります。また、心と体だけでなく、学校と連携して、机の周りを整理するなど、勉強に集中しやすい環境と指示の出し方の工夫をするという対策もとっています。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

大野耕策院長 おおの医院分院・こども発達クリニック6

「手のかかる子」と思われる子も、上手に関われば必ず穏やかに育って、無事に社会に出られるようになります。気になることがあっても、「学校の先生には相談しにくい」という方もいると思います。そういう場合は直接クリニックに来てくださっても大丈夫なので、気兼ねなく受診してください。子どもが引きこもると親もつらいはずです。元気で長く診療を続けて、発達障害で学校に行けない子が減り、つらい思いをする親子が少しでも少なくなるように、これからも努力していきたいです。

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