薬や抗がん剤治療による目の副作用
眼科検診と他科との連携が重要
もろおか眼科
(京都市左京区/神宮丸太町駅)
最終更新日:2023/06/02
- 保険診療
薬の服用や抗がん剤治療において、見過ごされやすいのが目の健康への影響だという。高用量の治療薬を長期間、内服し続けることで、副作用として視力低下や視野障害などを引き起こし、場合によっては失明に至るケースも報告されていると「もろおか眼科」の諸岡諭院長は話す。同院は京都市左京区の神宮丸太町から徒歩8分、京都大学医学部附属病院のすぐ目の前にあることから、がんやさまざまな病気の治療を受けている患者が眼科診療で訪れることも多いため、薬による眼科的な合併症には特に注意して診ているそうだ。目に影響する薬の副作用について豊富な知識を持つ諸岡院長に、病気の治療と並行して目の健康を守るためにはどうすればいいか、具体例を挙げながら説明してもらった。
(取材日2020年4月10日)
目次
内科や皮膚科などの処方薬にも緑内障や網膜症につながるリスクが。眼科の検診で合併症がないことを確認して
- Q眼科疾患を引き起こす薬の副作用についてお聞かせください。
-
A
一般的に処方されるお薬の中には、服用期間や用量などによって、眼科的な副作用が出現するものもあります。多くはないものの、視力低下、視野欠損、色覚障害ほか、発見が遅れたために失明に至るケースはゼロではありません。こうした眼科の合併症は、若い人に多い病気の治療に用いられる薬でも起こり得ます。若年で視力低下などの合併症が出てしまうと、その後の長い人生のQOLが大きく低下してしまいますから、目に症状が出るリスクがある薬を服用している人は、定期的に眼科検診を受けることが大切です。また、患者さんの目を守りながら病気を治していくためにも、薬を処方する医師・薬剤師と眼科医師の連携が重要となります。
- Qステロイドにも眼科に関連する副作用があるそうですね。
-
A
関節リウマチやアトピー性皮膚炎など、さまざまな病気の治療に用いられるステロイドですが、白内障や緑内障に対する注意が必要です。白内障に関しては、一般的な加齢性の白内障に比べて視力低下が急激に起こりやすく、見えにくさから気づくことが多いのですが、緑内障の症状である視野狭窄は自覚しづらく、重症化してからわかるケースも。一度欠損した視野は元に戻せないことも緑内障の特徴です。特にアトピー性皮膚炎の治療では顔に塗布することが多く、若年層の方に眼圧が上がりやすいというデータも出ています。使用しているステロイド量にもよりますが、2ヵ月から半年に一度視力検査や眼圧検査をし、合併のチェックすることをお勧めします。
- Qガイドラインに眼科検査の必要性が明記されている薬もあるとか。
-
A
ヒドロキシクロロキンは全身性エリテマトーデスの治療に有用なお薬で、最近では米国にて新型コロナウイルス感染に対する臨床試験が行われたことで注目を集めています。ただ、このお薬はまれにクロロキン網膜症を発症し、進行すると失明に至る恐れがあり、服用にあたっては半年から年に1度、眼科検査を行うようガイドラインで示されており、眼科の合併症に注意しながら処方されているお薬です。私のほうでもヒドロキシクロロキンを処方される科の先生に向けて、具体的にどのようなことに注意が必要かを伝え、患者さんに眼科の受診を促してもらうようメッセージを送っています。
- Q副作用は早い段階で気づくことが大切だそうですね。
-
A
エタンブトールは肺結核の治療薬ですが、副作用として視神経に障害が起こり、急激な視力低下、視野狭窄、色覚異常などの症状を来すことがあります。発見が遅れると視力が戻らないこともありますが、即座に服薬を中止することで視力が回復につながる可能性があり、実際に当院の患者さんでも、すぐに薬を止めたところ視力が戻った方がおられます。その方は見えにくさを自覚し、薬局で服薬指導を受けた際にそのことを相談されたそうです。対応した薬剤師が「薬のせいかもしれない」と思い、すぐに当院を紹介されました。医師や薬剤師、患者さんご自身が目の合併症の知識を持っておくことで、早期発見と適切な対処につながるケースは多いといえます。
- Q抗がん剤による眼障害にはどのようなものがありますか?
-
A
消化器系がんや乳がんの治療に用いられることの多い飲み薬の1つに、涙が止まらないといった涙道障害が起こるものがあります。また、ノーベル生理学・医学賞で脚光を浴びたニボルマブでは、投与後にぶどう膜炎が生じた事例が報告されるなど、抗がん剤の投薬が目に影響する可能性のあることを知っておいてほしいと思います。眼障害を食い止めるには、投薬を中止することが1番ですが、抗がん剤治療を止めてしまうと、命に関わる恐れも出てきます。治療に関しては、お薬を処方する担当医と直接情報を共有し、炎症や副作用を抑えていきながら抗がん剤の服用を続けたり、投与回数を減らしたりして、慎重に管理していくこともあります。