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東條 惠 院長の独自取材記事

発達クリニックぱすてる

(新潟市江南区/亀田駅)

最終更新日:2021/10/14

東條惠院長 発達クリニックぱすてる main

玄関前の大きなキリンのオブジェが迎えてくれる「発達クリニックぱすてる」は地域に根づいたクリニック。大学病院等や障がい児の療育センターで研鑽してきた児童精神科、神経小児科を専門とする東條惠院長が2016年に開業した。院内は広々とし、個室やリハビリスペースが設けられ、子どもや家族が落ち着いて過ごせるよう清潔に整えられている。医師、リハビリスタッフ、言語聴覚士、作業療法士、臨床心理士、看護師、受付など複数の専門スタッフが患者をゲストと呼び、高いホスピタリティーをめざした接遇を心がける。「病気ではなく発達の凸凹と捉えてほしい。環境調整をはじめとする支援が大切」と語る東條院長から、クリニックの特徴やポリシー、今後の展望について話を聞いた。

(取材日2021年8月23日)

地域に根づき、発達凸凹の子どもやその家族を支援

まずはクリニックの特徴を教えていただけますか?

東條惠院長 発達クリニックぱすてる1

一般的な小児科診療ではなく、発達に特性のあるさまざまなお子さんの診療に特化しています。発達障がいのことを「発達の凸凹」と最近では言いますが、落ち着きがない、マイペースで自己中心的といったお子さんが多く来院されますね。親御さんの多くは「何でこんなに親や周囲に反発するの?」「なぜこんなに動きが多いの?」と子育ての中で戸惑っています。また、親御さんだけでなく、お子さん本人、そしてそのお子さんの養育を担っている保育園や学校の先生、皆さんがご苦労されたり悩まれたりしています。そんな方々を支援し、自分の長年の知識や経験を社会に少しでもお返ししたいという想いでつくったクリニックです。

「発達クリニックぱすてる」の名前の由来は何でしょうか?

沖縄の小児科の先生が「健常と病的状態の間を表す言葉として、グレーゾーンではなくパステルゾーンを使おう」と言っておられたんです。いい言葉だなと思い、そこからヒントをいただいて「発達クリニックぱすてる」と名づけました。緑や赤といった原色ではなく、少し白みがかかったファジーな色合いがあるパステルカラーのように、発達凸凹や発達障がいと呼ばれるお子さんたちも、それぞれの色合いを持っていますからね。私たちが支援するのは発達の特性で悩む、お子さんやその親御さんたちです。おこがましいかもしれないけれど、私たちの経験を精一杯還元できたらと思っています。

地域医療においてどんな取り組みをされていますか?

東條惠院長 発達クリニックぱすてる2

地域への啓発活動は、私たちの使命だと思っています。以前は地域で勉強会を開いていましたが、新型コロナウイルスの流行拡大以降はオンラインで勉強会をするようになりました。また、主に新潟市内を中心に民間ベースでの発達凸凹支援体制をつくりたいという考えから、協力医療機関と連携し「クモの巣作戦」を実践しています。それまでの支援で安定した日々を送ることが可能となったお子さんに、近くの小児科クリニックなどでの継続処方や支援を行って頂ける体制づくりをめざしています。クモの巣を張っていくイメージで、地域の先生方と一緒に協力をしながら継続処方や子育て支援をお願いし、半年ごとに当院に来て頂き、方向性を検討しています。

ホスピタリティーを重視し、患者をゲストとして迎える

こちらでは患者さんのことをゲストと呼んでいるのですね。

東條惠院長 発達クリニックぱすてる3

患者という言葉はあまり好きではありません。医師と患者という言葉には、上下関係のイメージを感じるのです。当院では、受診される人のことを「ゲスト」と呼んでいます。スタッフとしては、ホテルマンのようなホスピタリティーを持ちたいと思い、ゲストに対しての自分たちを、「ホスト」「ホステス」であろうと意識するようにしています。立派なホテルではない訳で、アットホームさを持っているペンションが近いイメージでしょうか。

どんなゲストさんが多いですか?

メインは、就学前から小学生低学年のお子さんです。その頃は、集団に入ったらうまくいかないわが子を見て、親御さんが最も戸惑う時期と思います。または、うつ気味で学校に行けない、不安が強いなどと問題がかなり大きくなって行く小学生高学年や中学生のお子さんも多いですね。青年期以降の方は少ないですが、来院されています。当院は、青年期以降のうつ病、統合失調症を主に診療する立場ではなく、その方達は他院の精神科の先生方にお願いしようとは思っています。しかし、お子さんは段々と成長されていきますので、ある程度ここでも治療しています。あとは、お子さんが注意欠如多動症で、親御さん自身も「私もそうではないか」と親子で受診されるケースもありますね。

どんなきっかけで来院されるのでしょうか?

東條惠院長 発達クリニックぱすてる4

集団の中で行動が落ち着かない、ほかのお友達とうまくいかないなど、対人関係での問題がきっかけで来られる方が多いです。診療から離れた場所での啓発活動として、親御さんや支援者を対象に勉強会をしており、参加された支援者側の保育士や教師の方々からのご紹介も多いです。

親御さんにどんなアドバイスをしていますか?

家庭生活でのポイントは2つです。1つは虐待手法の子育てをやめる「虐待手法よ、さようなら」。もう1つは「四角い窓よ、さようなら」という、さようなら作戦です。四角い窓というのは、スマートフォンやDVD、動画映像やゲームなどのデジタルなもの。今の時代、もちろんゼロにはできないので、いかに制限できるかが大切です。親は良かれと思って善意で叱っても、子どもは親の姿から学び、周囲への挑戦的な態度が育ち暴力的になってしまう例も多々あります。デジタルに関しては、戦闘ゲームの影響で言葉や態度が乱暴になることもありますし、勉強よりもゲームがしたい、動画が見たいとなり、いずれ不登校、昼夜逆転、ゲーム依存、家庭内暴力などにつながってしまう例も出てきます。本来の発達凸凹をどうするかといった前に、まずはこの2つに気をつけてほしいのです。

気持ちに寄り添い、親たちの良き理解者に

先生のお考えや診療スタンスに影響を与えたものの一つは、愛犬と過ごした日々だそうですね。

東條惠院長 発達クリニックぱすてる5

生後2ヵ月から飼っていたコーギー犬は、落ち着きがなく攻撃的で、人の気持ちを読めず、私と目が合うと飛びかかってくるようなワンコでした。幾度となく私に噛みつくので、そのたびに力づくで押さえ込んでいたんですが、「虐待手法ではだめだ」と気がつき、接し方を変えました。ある日、私に飛びかかってきた時に妻がワンコの名前を呼んだら噛むのを止め、許しを請うようにしっぽを振りつつ私の膝に乗ってきました。うれしかったです。普段仕事で愛着や心の問題について親に話し、虐待手法を止めるように話しつつ自宅に帰るとできていない、それを地でいっていたと愛犬に気づかせて貰いました。大切なのは親御さん自身が「子どもって面白い、親を引き寄せるためにこんなことをするんだな」と思えるかどうか。子育ては楽しいもののはずなのに、つらい子育てになってはもったいないです。そう思え、虐待手法を止めるべしと本気で思えたのはこの経験のおかげです。

今後の展望をお聞かせください。

夢は、教育界などと協力しながら、学習困難な子どもたちのための塾を開いたり、引きこもっている青年たちにいろんな教育の場や居場所を提供したりすることです。現在日本では、学校の授業にスマートフォンやタブレット型端末、パソコンを導入する教育のデジタル化を推進しています。しかし私は、それによって子どもたちが大変な状況にさらされるのではと危惧しています。社会に適合する優秀な人材を育てる目的でしょうが、そこに適合できない子どももたくさんいるはずです。すでに「子どもたちがスマートフォン、タブレットにはまって、やめられなくて」と頭を悩ませている親御さんは多く、そういう話を聞くたびに胸が痛くなります。だからこそ私たちは、社会においておかしいと思うことに異を唱えつつ、子どもたちの心や発達の問題への解決方向を少しでも提案できる、そんなクリニックでありたいです。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

東條惠院長 発達クリニックぱすてる6

さまざまな特性を持つ方がおられますが、病気と思わずに発達の凸凹、特性との認識を持ってほしいのです。発達凸凹が目立つ場合、脳のシステムがうまく動いてないと認識すべきです。お子さんの「根性が足りない」訳ではないので「何でできないの」と責めないでほしいのです。子どもの環境調整は、医療や教育機関そして親が、ともに一緒に考え、具体的支援策を考えることで、親御さんもお子さんもハッピーで前向きになれるはずです。お子さんのことで気にあることがありましたら気軽にご相談ください。

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