全国のドクター9,253人の想いを取材
クリニック・病院 158,515件の情報を掲載(2024年6月02日現在)

  1. TOP
  2. 兵庫県
  3. 神戸市長田区
  4. 新長田駅
  5. 医療法人楠和会 ひらせアレルギー・こどもクリニック
  6. 平瀬 明彦 院長

平瀬 明彦 院長の独自取材記事

ひらせアレルギー・こどもクリニック

(神戸市長田区/新長田駅)

最終更新日:2022/01/06

平瀬明彦院長 ひらせアレルギー・こどもクリニック main

明るく広々とした街並みが広がる新長田駅周辺。「ひらせアレルギー・こどもクリニック」は駅から北東へ徒歩約2分、小さな子どもでも安心して歩ける場所にある。かつて病院の小児科で診療を行ってきた平瀬明彦院長は、「子どもや親がより癒やしを感じる空間で、子どもから大人までアレルギーの治療に力を入れたい」との思いから同クリニックを新設。水族館を思わせる楽しい雰囲気の院内で、新たな研究成果を反映したアレルギー治療に力を注ぐ。「納得した上で治療を始めてほしい」という平瀬院長の診察を支えるのは、確かなデータに基づくわかりやすい資料と丁寧な説明、そして明るい笑顔だ。「アレルギーを防ぐためにぜひ知ってほしい」という知見を中心に、親のストレスにも寄り添う重要性など、アレルギー診療についてじっくりと聞いた。

(取材日2021年12月20日)

海の癒やしを感じる空間で、アレルギーの診療に注力

院内に入ると、まず大きな水槽に目を奪われます。

平瀬明彦院長 ひらせアレルギー・こどもクリニック1

開設前によその病院で水槽を見たことがあって、これは良いなと思っていたんです。水槽で泳ぐ魚を見ていると子どもも大人も癒やされる、それが一つの狙いでした。さらに「水槽があるなら院内を海の中にしてしまおう」となり、水族館のようなイメージで内装を決めました。壁に描かれた大きなトリックアートも、院内を楽しい場所にしようという思いからです。以前は各地の市民病院や同じ法人内の公文病院で小児科診療をしていましたが、もっと子どもが中心になる環境で、アレルギーに特化した治療をしたいと考えるように。そこで、2014年に公文病院のサテライトとして当クリニックを開設しました。

特にアレルギー疾患の患者さんが多いとか。

7~8割はアレルギー関連の受診で、アレルギー治療は子どもから大人まで診察をしています。医院名を「アレルギー・こども」にしたのも子どもだけでなく、大人まで診てあげたいという想いから。普段から通院されているお子さんで発熱や風邪症状があれば、一般の診療も行います。熱があるなど感染性疾患が疑われる患者さんには専用のスペースやトイレがありますし、新型コロナウイルス感染症が始まってからは、一般診療とは別に発熱者専用の時間帯を設け、発熱者用の待合ブースも増やしました。通常の診療とは時間を完全に分け、予防接種や9ヵ月健診も行っています。患者さんはさまざまな目的で受診されるので、誰もが安心して快適に過ごせるようにしています。

対応している疾患と、治療方針について教えてください。

平瀬明彦院長 ひらせアレルギー・こどもクリニック2

乳児ではアトピー性皮膚炎や食物アレルギー、じんましんでの受診が多く、少し年齢が上がると気管支喘息、また花粉症を含めたアレルギー性鼻炎のお子さんも増えてきます。最近では、カバノキ科の花粉アレルギーがあるために特定の食べ物で口の中で症状が出る「花粉関連食物アレルギー」のお子さんも増えています。症状はそれぞれに異なりますが、子どものアレルギー疾患に共通する課題があり、それは「いかに早い段階からアレルゲンの侵入を防ぐか」、そして「発症後にはいかに発作や症状の悪化を抑えて、成人期まで持ち越さないか」ということです。この2点を非常に重視しています。

乳児期の皮膚感作を回避し、発症後は症状の軽減を図る

どのように、アレルゲンの侵入を防ぐのですか?

平瀬明彦院長 ひらせアレルギー・こどもクリニック3

以前は経口感作、つまり食べた物からアレルギーが起こると考えられていました。しかし実は、皮膚から入ったアレルゲンが免疫細胞と反応を起こす「経皮感作」がアレルギーの契機になることが、研究で示されています。生後6~7ヵ月頃から「アトピー性皮膚炎になった」という受診が増えますが、それよりも前、特に生後2ヵ月以内に重い乳児湿疹があると、口の周囲で皮膚のバリア機能が破壊され、母乳の飲みこぼしのようなアレルゲンが繰り返し付着して、経皮感作が起きています。ですから重い乳児湿疹ではケアだけでなく、ワセリンなどで皮膚をガードしてアレルゲンの侵入を防ぐことが大切です。さらに、医師の指導のもと、アレルゲンを含む食品を排除するのではなくごくわずかずつ摂取していく、これが現在のアレルギー診療です。ともかくも、健康な皮膚を保つことが最初にできるアレルギー対策ですので、生後2~3ヵ月の赤ちゃんの受診をお勧めしています。

アトピー性皮膚炎の診療について教えてください。

アトピー性皮膚炎では、ステロイド薬による治療や丁寧なスキンケアを続けていても再発を繰り返しがちです。このため、診察ではお子さんの全身の皮膚を手で触り、見た目だけでなく肌ざわりから状態を細かく確認します。そして症状の強い部分があればその理由を推測し、原因の除去をめざします。例えば肘や膝、首周りなどが荒れていれば、汗が影響しているかもしれません。衣服の洗剤や柔軟剤が原因になっていることもあります。原因を取り除くことで、症状が落ち着くことにつながることもありますよ。アトピー性皮膚炎に関しては新しいメカニズムの治療薬が次々に開発されていますし、多くの方は大人になれば症状がかなり軽減に向かいます。だから、治療では症状が悪化しない期間をなるべく維持して肌の過敏性を抑え、大人のアトピー性皮膚炎へ移行しないように努めています。

喘息や花粉症など、他のアレルギー疾患についてはいかがですか。

平瀬明彦院長 ひらせアレルギー・こどもクリニック4

まず気管支喘息は、乳児では受診のタイミングや診断が難しいです。発作が起きる時期やお薬後の様子などから診断をつけます。また発作が起こりやすい6歳頃まではとにかく発作を繰り返さないよう、診療ガイドラインに従って適切なお薬を使ったり、ダニアレルゲンの除去など発作の起こりにくい環境づくりをアドバイスします。救急受診や入院の回避が重要な目標ですね。それから、花粉症などのアレルギー性鼻炎に対しては舌下免疫療法を積極的に行っております。舌下免疫療法は根本的な治療ではなく症状を和らげるための治療ですが、炎症のない期間が長ければ悪化を防げます。大人より子どものほうが症状が強いので、成長するまでの期間をこの治療で乗り切れれば大きなメリットになると考えています。

親子のストレスを取り除ける治療をめざして

なぜ、アレルギー疾患の治療に注力されるのでしょう?

平瀬明彦院長 ひらせアレルギー・こどもクリニック5

病院勤務でアレルギーや喘息の外来を担当してきたこともありますが、僕自身が子どもの頃からアトピー性皮膚炎であったことも大きいでしょうね。肘や膝は特に荒れていて、「かいてはいけない、たたいて」と言われ、缶で患部をよく冷やしていたものです。だから、かゆみのつらさはよくわかります。生後2~3ヵ月の赤ちゃんでもかゆみで身をよじらせるほど大きな苦痛ですし、その姿を見る親にとってもストレスです。さらに子どもは親のストレスを感じ取り、症状がより悪化するのですね。治療で深夜のかゆみや喘息発作を改善して、親子のストレスを減らしたいと願っています。「夜、寝られるようになりました」という一言が、とてもうれしいんですよ。

診療の際に心がけていることは?

アレルギー疾患に限らず、症状や治療について、親御さんに納得して帰ってもらうことです。だから診察室では僕と一緒に喉の中を見てもらったり、聴診器でお子さんの呼吸の音を聞いてもらったりもします。イラストや図、写真も必ず使いますし、さまざまなスライドを作成して、それを見てもらいながら説明します。話を聞くだけでなく目で見る、音を聴く、触ることで、より具体的に実感してもらえる。喘息ならご自宅で吸入をしたときに、楽になったのか、または救急を受診したほうがいいのか、判断できれば良いですよね。ただ、こういう診療をしていると時間はどうしてもかかります。アレルギー疾患の初診であれば、専用の時間帯に予約してもらえればいいですし、他の病気でも気になることをまとめてから受診してもらえると、診察がスムーズに進められます。

メッセージをお願いします。

平瀬明彦院長 ひらせアレルギー・こどもクリニック6

繰り返しになりますが、アレルギーの道へ入らない、つまり経皮感作を防ぐためには、生後2ヵ月以内で乳児湿疹がある赤ちゃんへの治療や指導がとても大事だと考えています。しかし、その時期は日々の子育てに精一杯で、親御さんも情報を収集したり積極的に受診する余裕がないでしょう。ですから、できれば妊婦さんの時期からこういったお話をしたいですし、より多くの方に、現在のアレルギーの治療の考え方を知ってほしいと願っています。また、アレルギー疾患の経過は長く、ご本人、親御さんとの信頼関係も大事です。人間同士のことですから相性もあるかとは思います。実感できる説明を心がけ、なるべく多くの方に納得してもらえればと思います。

Access