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東 英子 院長の独自取材記事

あずま在宅医療クリニック

(守口市/滝井駅)

最終更新日:2023/05/08

東英子院長 あずま在宅医療クリニック main

京阪本線滝井駅から徒歩1分、落ち着いた住宅街のマンションの1階に「あずま在宅医療クリニック」はある。院内は医療機関を感じさせないアットホームな空間。患者や家族が在宅医療についてじっくり話をする姿が目に浮かぶ。温かい笑顔と声が印象的な東英子院長は、2004年から在宅医療に携わり、2011年に同クリニックを開業。人生の最終段階を迎える患者の診療を行っている。モットーは「患者ファースト」。密なコミュニケーションを通して患者の思いや希望を聴き取り、最期まで自らの人生を全うしようという姿をサポートしている。誠実に患者に向き合う東院長に、在宅診療のこだわりや思い、今後の展望などについて話を聞いた。

(取材日2023年2月7日)

頑張る患者や家族を手助けしたい

開業の経緯を教えてください。

東英子院長 あずま在宅医療クリニック1

1993年に近畿大学医学部を卒業した後、勤務医として泌尿器科で働き2004年から在宅診療に携わり始めました。泌尿器科で働いていた頃から、緩和医療と高齢者医療に興味を持ち、在宅診療に関わり始めてからは、在宅緩和ケア、摂食嚥下支援、認知症ケアに力を注いできました。2011年には、在宅医療のクリニックである当院を開業。前職時代、この土地で診療する機会があったのですが、最期まで自宅で人生を全うしたいと考える方がとても多い印象を受けました。頑張る患者さんやご家族を手助けしたく、この地での開業を決めました。

どのような患者さんがいらっしゃるのでしょうか。

ご高齢の方がほとんどです。病名はがんや脳梗塞などさまざまですが、病院で治療を受けたものの改善が難しく自宅での治療を望む方、クリニックへの通院が難しくなった方など、人生の最終段階を迎えている方が多くいらっしゃいます。また、最近は認知症の方もいらっしゃいます。当院へいらっしゃるきっかけとして、昔は病院から紹介を受ける「病診連携」が多かったのですが、現在は診療所の医師からの紹介を受ける「診診連携」が増えてきました。診療所の医師とも患者さんの情報を共有するため、密に連絡を取り合います。患者さんを介し、周囲の診療所との信頼関係も育ってきました。

周囲との連携を大事にされているのですね。

東英子院長 あずま在宅医療クリニック2

振り返れば、勤務医時代から周囲とのつながりや連携を大事にしていました。泌尿器科に籍を置いていたものの、他の外科はもちろん、内科、リハビリテーションにも携わり、それぞれの場所で求められる緊急対応、要点などを積極的に学んでいました。役職や役割は関係なく、どんな人とも関わりを持つようにしていましたね。

患者ファーストで、コミュニケーションを重要視

日頃、診療をされる上で心がけていらっしゃることを教えてください。

東英子院長 あずま在宅医療クリニック3

患者さんファーストでコミュニケーションをとることです。中にはお話をするのが難しい方もいらっしゃいますが、決してご家族のみと話し合って診療方針を決めることはしません。患者さんの目を見てあいさつをした後、「では、次は家族さんとお話ししますね」と声をかけるようにしています。また、コミュニケーションツールは言葉だけではありません。基本的に1人で診療に行くので、通常、看護師が行う血圧測定や脈拍測定も私自身が行っています。手に触れた時に冷たさを感じれば、「今日は寒いですね」と話しかけますし、手をさすって温めることもあります。返事が返ってこなくても、時間をかけてスキンシップすることでさまざまな情報を感じ取ることができます。

お一人で診療をされているのですね。

前職は看護師、運転士と同行者がいました。現在も訪問看護師、デイサービス、リハビリテーションスタッフ、歯科医師、薬剤師などチームで患者さんを支えていますが、自宅には1人で伺って診療しています。数人で伺うと、他のスタッフのスケジュールも気にしなければなりません。1人の場合は患者さんのペースに合わせてじっくり時間がとれるので、個人的には今のスタイルが合っていると感じています。やはり診療では、コミュニケーションを大事にしています。人生の終盤を迎えている方だからこそ、最期までどのように生きていきたいかなどの思いを、時間をかけて聴きたいと思っています。また、在宅医療で大切なのは「私といつでも連絡が取れる」と思ってもらうことです。いつでも相談できる状態が、患者さんの安心につながります。私は、患者さんと友達の境目が少ないタイプ。患者、医師以上の関係性があると考えていることが伝わると、ホッとされるようです。

在宅医療の魅力を教えてください。

東英子院長 あずま在宅医療クリニック4

先日、ある薬剤師から「先生は、長く生きるのが難しく死を意識した患者さんに対して、正面から向き合って話をされますよね」と言われました。あまり意識していませんでしたが、確かに患者さんやご家族に対して、「今後、歩くのが難しくなるかもしれない」「トイレに行けなくなったらどうするか」など具体的な話をした上で、「最期まで、家で過ごしたい」「ギリギリまで家にいて最期は病院で過ごしたい」などさまざまな希望を聞き取ります。患者さんそれぞれの歴史、こだわり、生き方を大事にしたいと思っています。型にはまって進めていくのではなく、患者さん自身と家族、私たち医療側がチームになって患者さんの希望を実現し、喜ぶ姿を見られたらうれしくなります。家族と一緒にご飯を食べたり、外出をしたり、結果論ではありますが自宅にいればさまざまな思い出がつくれるチャンスもありますよね。

人材育成にも注力

どのような経緯で医師になられたのでしょうか。

東英子院長 あずま在宅医療クリニック5

もともと、父が医師で研究者として働いていました。しかし、私自身は幼い頃から医師をめざしていたわけではなく、バイオ研究に取り組みたいと思い農学部を志望していました。今、振り返ると「バイオ」という言葉に漠然と憧れを抱いていたのだと思います。転機となったのは、父が働く研究室に行き、研究のためにホルマリン漬けにされた脳を目にした時です。当たり前のことではありますが、生物の教科書で目にした脳が目の前にあることに衝撃を受けました。そして人体に対して大きな興味が湧き医師をめざすことになります。高校3年生の夏から秋に移り変わる頃でしたから、両親も驚いていました。

その後、なぜ泌尿器科を選ばれたのでしょうか。

医学部に進学してから興味は転々としていましたが、医師になる時、移植医療に惹かれ泌尿器科を選択しました。現在は、内視鏡を使いほとんど体に傷をつけない手術が主流ですが、以前は、ダイナミックな手術が多かったんです。医師になった当初は、「外科医の女医は必要ない」と言われることもありました。「男性には負けたら駄目」と思い、人一倍救急当直や緊急手術をこなしました。当時は、男性以上に働かないと認めてもらえないと必死でしたが、見てくれている人は見てくれていました。「頑張っている」とかわいがってくださる重鎮の先生も多かったですね。コツコツ誠実な思いで取り組んでいれば誰かが見てくれているとわかりました。それが今の診診連携にもつながっているのだと思います。

今後の展望を教えてください。

東英子院長 あずま在宅医療クリニック6

今後は人材育成にも力を入れたいと思っています。人材育成といっても技術指導ではなく、生き方の軸を伝えたいんです。今は、生き方の軸がなく、メンタルが弱ってしまっている人が少なくありません。現在、「メディカルカフェ」と称して行っている患者さんとの対話活動や、歴史上の人物の一生涯を通して人の生き方や考え方を学ぶ寺子屋活動をしています。いわゆる大人の学びです。新型コロナウイルス感染症の流行前は、カフェのメンバーと歴史上の人物やテーマに沿って旅をする「歴史散歩」をしていました。また、メディカルカフェの活動を通して考え方が変わっていく人を多く目にしてきました。いろいろな迷いがある中で、現在のデータばかりに目を向けるのではなく、生き方や考え方という哲学的な基軸があったほうが考え方がしっかりするのでしょう。人の心が成長し、変化していく姿はいいですね。

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