患者一人ひとりに合わせた診療を
チームで行う訪問診療
若葉クリニック
(船橋市/船橋法典駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
訪問診療は、物理的又は精神的に通院が難しい場合に利用できるもの。2週間に1度の定期訪問が基本で、一般的な診察室の中で行う検査や治療については、おおむね同じ内容を受けることが可能だ。若月冬樹先生が理事長兼院長を務める「医療法人社団麒麟会 若葉クリニック」は、まだ近隣に在宅療養支援診療所が少ない時から、高齢者はもちろん小児の訪問診療も行ってきたクリニック。若月院長と同法人立ち上げからともに動いてきた同法人理事の一人で社会福祉士の吉橋准子さんに、訪問診療におけるチーム医療の重要性や同法人の特徴を聞いた。
(取材日2020年7月2日)
目次
患者を中心にチームを編成。生活とのバランスを考えた上で、自宅で暮らすための医療を提供していく
- Q訪問診療を行う上で大切にしていることは何ですか?
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A
【若月院長】僕自身も常に心がけ、先生たちにも必ず伝えているのは、訪問先の家庭や施設の方針・ルールをよく聞きだして、それを尊重することです。例えば、糖尿病の患者さんに対し、毎食前のインスリン注射に加え、寝る前にも注射するのが医学的には最善だとしても、その患者さんが入居する施設に、夜間に看護師さんがいなければ寝る前の注射はできません。血糖値も日に4回も測れない、ということもあります。訪問診療を続けていく上では、「医療上望ましいこと」を押しつけるのではなく、まずしっかりお話を聞き、頭をやわらかくして正しい医療の実践と現実の妥協点を探していく姿勢が、とても大切だと思っています。
- Qスタッフへの教育にも力を入れていると聞きました。
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A
【吉橋さん】月に一度の全体会でヒヤリ・ハット事例を共有し、どういうふうにするのが望ましかったか事例検討会を開いたり、感染症対策など知っておくべき知識について、医師からレクチャーしてもらうことで現場に取り入れています。また組織の運営としては何でもトップダウンではなく、「こういうふうにしてほしい」という到達点を示して、方法は個々人に提案してもらうことが多いでしょうか。また、悪い結果が生まれてから報告するのではなく、結果が発生する前段階でまず相談してもらうことも、大事にしています。ヒヤリ・ハット事例でも自己報告でも、報告した人は偉いし、「誰が」ではなく「何が」悪かったかに重点をおいて対処しています。
- Q円滑なチーム医療を行うために工夫していることはありますか?
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A
【吉橋さん】私たちは患者さんを真ん中に、医師、看護師、理学療法士といった医療従事者とご家族そして地域のケアマネジャーさん福祉関係者で、一つの支援チームだと思っています。最初に患者さんに会い、どんな医療を望んでいるのかリサーチし、チーム内の情報共有がうまくいくように橋渡しをするのは、社会福祉士である私の仕事ですね。情報の共有はより良い医療を提供する上でとても大切です。直接患者さんに会ったことがないクラークも、その患者さんからの電話を受け取るその時に「〇〇さんですね。昨日熱が出たと聞きましたが、今日はどうですか」の一言があると、気にしてくれる人の存在を感じられ、生きる支えになりますからね。
- Q若月院長が組織をまとめる上で大事にしていることは?
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A
【若月院長】恥ずかしながら、僕は診療のプロではありますが、リーダーシップを取るのが本当に苦手で、経営や人事、スタッフの教育・指導といったことに関してはまったくできません。そこは、常務理事として支えてくれる小林容子さんや理事の吉橋さんなどが活躍してくれていてとても助けられています。チームを運営する上で最も重視しているのは、メンバーにとって働きやすく、長く働きたいと言ってもらえることです。一般企業でも、最初に会う受付や電話口の方がギスギスした雰囲気だったら、それだけで嫌なもの。働きやすい環境で存分に力を発揮してもらうことが、結果として、患者さんへより良い医療を提供できる環境をつくるのだと思います。