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酒井 寛 先生の独自取材記事

浦添さかい眼科

(浦添市)

最終更新日:2021/10/12

酒井寛先生 浦添さかい眼科 main

浦添市宮城の「浦添さかい眼科」は2009年の開院以来、高い専門性で良質な医療を提供することをモットーに診療を行っている。同院では、加齢黄斑変性が専門の酒井美也子院長と、緑内障が専門の酒井寛先生が、それぞれの得意分野を生かしながら二人三脚で診療。今回は大学に長く勤務し、臨床と研究の両面で多くの経験を積んできた寛先生に、同院のことや専門の緑内障のこと、患者との向き合い方についてなど、語ってもらった。

(取材日2021年2月2日)

2人の医師による高い専門性を特徴とした眼科診療

こちらの医院は2009年に開院されたのですね。

酒井寛先生 浦添さかい眼科1

開院から10年は妻の美也子院長が中心の診療体制で、私は大学で臨床と研究を続け、開業医でも高い専門性を持って診療できるようにと、院長と二人三脚でやってきました。異なる専門を持つ医師が2人いるというのは、互いの意見を聞くことができるのでとても有益です。私は緑内障、院長は加齢黄斑変性が専門で、この2つは失明に至る原因としても重要な疾患です。また、2人で診療することで、状況に応じて、患者さんをお待たせしないよう柔軟に対応することができます。大学病院ほど長く待つことはまずないと思いますが、それでも眼科は検査も多く待ち時間が長くなることも多いので、できるだけ患者さんをお待たせしないためにも2人体制は役立っていますね。手術に関しても、日帰り白内障手術に加えてほとんどの緑内障手術も行えるようになり、緑内障診療において診断、薬物治療に加えて手術加療までカバーできる体制が取れるようなりました。

なぜ緑内障を専門に選ばれたのですか?

大学卒業後、大学院に入ったのですが、当時の大学院は臨床にも携わることが多い時代でした。4月に入局して外来を行いながら7月頃から閉塞隅角緑内障の患者さんの研究を始め、休みもなくデータ解析を行いました。医師になって1年目の研究が、そのまま私の研究テーマになりました。その頃は原発閉塞隅角緑内障で失明する人が非常に多かったですし、治療方法もまだ十分に確立されておらず大きな問題がある時代でしたから、緑内障を研究したいというより、本当に必要だったから研究を始めたという経緯です。その後、閉塞隅角緑内障の興味深いメカニズムを発見し、その研究をきっかけに世界中の緑内障の専門家と交流するようになりました。

緑内障の分野で長く活躍されてきたのですね。

酒井寛先生 浦添さかい眼科2

大学では、臨床や研究、指導者として准教授も務めました。緑内障の外来を担当しながら患者さんを診る、手術する、勉強会等で研究発表を行うなど多方面の仕事にも携わりました。大学に籍を置いてイリノイ大学に2年半留学していた時は、また違うタイプの緑内障や分子生物学などの研究を行うことができ、とても有意義でしたね。久米島での疫学調査にも参加し、その後は臨床にシフトして主に白内障と緑内障手術を担当してきました。眼科に限らず、医学の世界ではわかっていないことが数多くあります。それらを解明するために研究を行うわけです。診療では、患者さんと話をして、その中からヒントをもらっていく。診療を行うことが研究にも結びついていくことになります。また、新しい機械を導入して診療に活用していくことでも病態の理解が進みます。こうした臨床現場における観察と考察を地道に積み重ねる診療を行うことを大事にしていきたいと思っています。

タイプによって発症時期が異なる緑内障

緑内障という病気について教えてください。

酒井寛先生 浦添さかい眼科3

どんな病気でも早期発見、早期治療が大事だと言われますが、緑内障はそれがとても難しい病気です。実は、われわれには、実際に見ている世界がそのまま見えているのではありません。目には盲点がありますが、通常はその盲点を脳が補っているため自覚することはできません。視野が欠けるという症状のある緑内障でも、欠けた視野を脳が補おうとするのですね。しかし、あるところで情報が足りなくなって破綻してしまいます。そうなると視機能の低下を自覚できるようになるのですが、その時にはもう遅いのです。脳が補ってくれるという素晴らしい機能があるために発見が難しい。これが開放隅角緑内障です。この開放隅角緑内障は近視の人に多いのが特徴で、一度なった近視性の変化は治すことができません。

緑内障には種類があるのですか?

主に3つあります。先ほど話した近視の人に多い開放隅角緑内障。そして逆に目が良い人、遠視の人で、中高年を過ぎて出てくることの多い閉塞隅角緑内障。この閉塞隅角緑内障は沖縄にたいへん多い病型で、女性に多いといわれています。薬物治療でなく手術加療が原則で、予防的な手術により完治がめざせます。他の病型との鑑別が重要で診断が難しいため、UBMや前眼部OCTがとても役に立ちます。3つめは近視や遠視に関係なく、年齢を重ね主に60代以降で出てくる落屑緑内障。これに関しては、遺伝的要因があるといわれていて日本は全国的に多く、特に九州・沖縄には多いです。若い時に浴びた紫外線が影響するともいわれます。他の緑内障に比べ、落屑緑内障は圧倒的に予後が悪いとされるため注意が必要です。一方で、家の中でゲームなどをしている子に近視が多いということもあるので、過度に紫外線を気にせず2時間くらい外で遊ぶことも大切だと思います。

早期発見のために、どのようなことに気をつければよいのでしょうか?

酒井寛先生 浦添さかい眼科4

特に遠視が強い場合、年を取ってから発症することが多いため、視力に自信がある人は、ある程度年齢がいったら注意が必要です。一方で、近視が強い人は若くても注意しなければいけません。10代でも緑内障になることがあります。近視でも、遠視でも定期的に検査を受けることで早期発見につながるでしょう。

患者が安心して暮らせるように、力の及ぶ限りの医療を

眼科の世界は医療機器の進化が早いそうですね。

酒井寛先生 浦添さかい眼科5

改良された新しい機器が数年毎に出ますので、その都度導入するのは大変なのですが、やはり得られる情報が違います。今は目の血流も見ることのできる機器まで出てきています。医療機器はそれぞれできることが異なりますので、当院で前眼部はOCT(光干渉断層計)、UBM(超音波生体顕微鏡)の両方を導入しています。機械は多いに越したことはありませんが、どの機械を入れて、どう使っていくのかは、それぞれのクリニックの哲学が詰まっているのではないかと思います。しかし、機械があれば完璧な診断ができるというものでもなく、それでも迷うというのが本当のところです。ですから、常に突き詰めて診療をすることが大事です。「無知の知」ではありませんが、医師がわかっている範囲というのは多くないということを肝に銘じて診療しなければいけないと思っています。

患者さんとどのように向き合っていますか?

病気というものはわからないことが多いので、力の及ぶ限り全力で診療しています。緑内障は完治できる病気ではなく、進行を抑えることが治療の目的です。ですから、当たり前ですが、患者さんの一生を考えて診療しています。「緑内障は進行しますか?」とよく聞かれるのですが、その質問は「私は年を取りますか?」と一緒なのです。緑内障は進行しますが、70歳の人ならば「あと40、50年は大丈夫。進行したとしても、そんなペースでいけばいいんじゃないの」と話しています。そうすると、ご本人も「その年まで生きていないなあ」と考えて、少し肩の力が抜けるのではないでしょうか。人間は年を取っていくのは当たり前ですが、そのことばかりを若い時から毎日考えているのは無駄ですよね。ですから、「普段はあまり病気のことは考えないほうがいい」ということを伝えるようにしています。

読者へのメッセージをお願いいたします。

酒井寛先生 浦添さかい眼科6

病気とは何か。なぜ病気になり、なぜ悪くなるのか。どうしたら治せるのか。どうしたら予防できるのか。そのように皆が心配なことを考えていきたいと思って医師になりました。われわれは医師としてできる限りのことに力を尽くします。患者さんは当院にいらっしゃったときは、不安や心配事を話してください。私たち医師ができるアドバイスをしますので、それを聞いていただきたいですし、お薬も使ってもらいたい。治療のためにしてもらいたいことはあるのですが、それ以外のときは、あまり病気にとらわれないで暮らしていってほしいと思っています。大学では、眼科の中でも治療の難しい患者さんを診ることが多くありました。だからこそ、特に重篤な問題のない患者さんについては、普段は病気のことを心配しないで暮らせるお手伝いができたらと思っています。

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