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福本 素由己 院長の独自取材記事

今川クリニック

(大阪市福島区/福島駅)

最終更新日:2023/12/12

福本素由己院長 今川クリニック main

昔から心理面から何かを分析することに興味があったという「今川クリニック」の福本素由己(もとゆき)院長。研修医時代、恩師、大阪大学名誉教授の武田雅俊先生との出会いを経て精神科の道を志したという。大阪大学大学院の博士課程で論理的な思考を身につけ、数々の現場で研鑽を積んできた。院長就任後は、認知症、発達障害、睡眠障害、リワークプログラム、適応障害、不登校、思春期の問題、抑うつなど、患者のさまざまな要望や悩みに対応する毎日を送っている。常に患者と同じものに興味を持つべく周囲にアンテナを張り、会話の引き出しを用意するなど、患者を思いやり、心を寄せる福本院長に、診療方針や心がけていること、忘れられないエピソードなどを聞いた。

(取材日2023年1月16日)

認知症、不登校、不眠、発達障害、うつ、言葉なき叫び

22年前に独自の研究結果をもとに開業された今川正樹先生から継承され、福本院長が発展された治療法とは?

福本素由己院長 今川クリニック1

今川正樹先生は、20年以上前から認知症予防に注力し、特に抗認知症薬に頼らない診療に注力されていました。アルツハイマー型認知症の原因物質であるといわれるアミロイドβを脳の中で増えないようにするにはどうしたらいいのか? という観点から、脳の血管の炎症、栄養不足などへの注目とともに、芸術と精神の関係にも着目し、患者さんへのアプローチにも取り入れるなど芸術にも造詣が深い方でしたね。継承後は私独自の視点も生かし、ぬり絵や計算、漢字の練習なども認知症へのアプローチの一環で組み込んでいます。当院独自の脳力トレーニングは、比較的易しいものだけでなく難しいものまで用意し、ご家族と一緒に辞書を引いたり検索したりと家族間のコミュニケーションツールとしてもご活用いただいています。

認知症に特化した外来から福本院長独自の色が加わり多種多様な要望に応える形になったと伺いました。

前院長時代の診療も受け継ぎつつ思春期を専門に診る外来や働く世代のうつや発達障害の治療など、この激動のアフターコロナ時代、見えないストレスを数多く抱える昭和、平成、令和世代の人たちの「言葉にできない叫び、悲鳴」に応えるべく幅広く取り組んでいるのが私が院長になってからの特徴です。特に思春期の子どもたちを診るにあたっては、普段からSNSや動画サイトを閲覧・視聴したり、若い世代に人気のゲームを楽しんだり、ネットで話題の曲や、K-POPを聞いたり、常にアンテナを張りつつさまざまなことを体験しています。「同じものへの興味」から始め、少しでもお話のきっかけになればと。加えて、思春期の方にはどんなに些細なことでもその日あった出来事を書いてもらうことで言葉にできない想いを他人に伝える「1行日記」にも取り組んでもらいます。

ご多忙の中、さまざまな分野の情報収集に取り組む意欲はどこからくるのですか?

福本素由己院長 今川クリニック2

根本にあるのは、とにかく人が好き、お話が好き、そして責任感だと思います。人と接するのが好きだから、プライベートでも自然と会話が盛り上がる麻雀やボードゲームをお勧めしています。思春期の外来であれば、子どもたちが何を見て何を考えているのか、教科書を机で見て「勉強する」のではなく、主体的に興味を持って「知る」ことが「人を診る」第一歩だと考えます。人を診ることができて初めて「心が診れる」。そこから最新のエビデンス、論文を踏まえた診断ができ、治療薬や精神療法がようやく生きてくると私は考えています。患者さんの一つの質問に対して、話し方の引き出しを10個あるのと1000個あるのでは答え方に大きな違いがあるはず。多様な心理検査、定期的な血液検査、睡眠検査などと同様、さまざまな話題をその方が興味あることに焦点絞って提供できることが、オーダーメイドの治療に必須であり積み重ねが信頼を生むと考えています。

睡眠障害の克服、社会復帰プログラムにも注力

認知症の治療方針について教えてください。

福本素由己院長 今川クリニック3

当院では軽度認知障害(MCI)の段階から治療を開始します。MCIの自覚が出てから1年間で10~30%の方が認知症に進むといわれており、MCI診断から5年で約半数の人が認知症になる可能性があるという報告があります。ですから早めの対応でMCIレベルを維持する取り組みと、認知症になってから進行速度を緩やかにするための取り組みの両方が重要と考えています。介護を続けるのは大変なことなので、その期間を短くすることはご本人やご家族にとっても非常に重要です。血液検査からの高血圧、糖尿病、脂質異常症などの治療や、運動、栄養指導や、芸術によるアプローチなど幅広い観点から、治療するだけでなく、ご家族さまが介護の負担を減らし、ご自分の人生を楽しんだ上での、無理ない介護をめざし、専門のスタッフが公的資源の活用の仕方まできめ細かく指導していくのが当院の特徴となっています。

睡眠障害への対応はいかがでしょう?

睡眠の問題は、多くの場合よく寝れているつもりが睡眠の質が悪くてしっかり寝られていないというもの。 主な原因は2つあって、1つは特に30代~60代に多い睡眠時無呼吸症候群。もう1つは今、動画配信など24時間退屈しない社会状況が整っていることです。本当は寝る1時間前には準備をして、眠くなってから布団に入るのが理想の睡眠には必要です。だけど今は布団の中でSNSをさわっている方も多いと思います。その意識を変えていかないといけません。睡眠時無呼吸症候群には適切な医療機器を用いた治療を、それ以外の方には、時には漢方など副作用が少ない薬剤を患者さんに応じて処方していきます。

復職に向けたリワークプログラムの方針を教えてください。

福本素由己院長 今川クリニック4

コミュニケーションが得意でない方が人間関係にエネルギーを費やしたら、仕事に使う集中力が不足してミスが増えてしまいがちです。それで怒られて緊張して余計に精神エネルギーを使う悪循環になっていくこともあるでしょう。会社がおっくうになる原因は大きく分けて3つあると考えられ、人間関係、仕事の質、仕事の量のどれかが苦しくなっていることです。そこを理解して、適切なアプローチをしないといけません。適応障害が長く続くとうつ病になりやすいので、それを防ぐためにも、まずは家でゆっくり休むことが目標です。その後は、家で好きなことができる、そしてさらに外に出たりできる状態に持っていけるようにお手伝いをします。

他の人には言えないことも相談できる場でありたい

スタッフの皆さんも親切で優しい方ばかりですね。

福本素由己院長 今川クリニック5

現在当院では10歳くらいから、中高生・大学生、社会人、100歳までの患者さんにご来院いただいています。幅広い年代の診療をして認知症、思春期、ワーキングパーソン、スポーツ精神医学など複数を専門としているかなり珍しいクリニックなので、スタッフにも大きな負担がかかっていると思うんです。その中で看護師・公認心理師・社会福祉士・事務スタッフの笑顔を絶やさない対応には、いつも感謝しています。またぬり絵を掲示する展覧会なども、院内で催して明るい雰囲気づくりをしてくれていて、自慢のスタッフです。

診察の中で忘れられないエピソードは?

特に忘れられないのは、家族関係に問題のあった思春期の女の子です。深刻でつらい体験をしたことから歩道橋から飛び降りて骨折してしまいました。入院時に担当したのですが、親御さんには頼れる状況でないことがわかり、祖母や市役所の方を呼んでご協力をお願いしました。当時まだ、16歳でしたが、退院後も外来で担当しました。その後、バイトから認められて正社員になり、職場の方と結婚され、かわいいお子さんも今はいらっしゃいます。その子と一緒に今も当院に来られますが、お子さんはスタッフたちのアイドルです(笑)。あの時もし、そのまま家に帰していたら、またトラブルに巻き込まれていた可能性が高いと思います。そうした複雑な状況は理論だけでは解決できませんし、周囲の人たちを動かすほどの熱意を示せてよかったなと、そのかわいいお子さんの顔を見るたびに今でも思います。

読者へのメッセージをお願いします。

福本素由己院長 今川クリニック6

まず、来ていただいた患者さんには他の人には言えないことも、診察室ならなんだか言えると感じてもらえるようになり、こちらはきちんとくみ取るということを積み重ねていきたいです。当院の「心の病は体の病がないことの確認から始まる」という考えを知っていただき、困った時に身近で頼れるかかりつけ医として、地域の皆さまに信頼され愛されるクリニックになりたいですね。

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