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独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター 副院長/認知症疾患医療センター長 松下 幸生 先生

こちらの記事の監修医師
独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター
副院長/認知症疾患医療センター長 松下 幸生 先生

あるつはいまーがたにんちしょうアルツハイマー型認知症

概要

認知症の中で、最も患者数の多い病気。脳神経細胞が減少し、脳が萎縮していく過程で発症します。症状としては、物忘れから気づくことがほとんど。ただし、本人に「忘れている」という自覚症状があれば、認知症ではなく加齢による物忘れの可能性もあります。たとえば、「朝ご飯で食べたもの」ではなく「朝ご飯を食べたこと」を忘れるといったように、出来事すべてを思い出せなくなると、認知症が疑われます。その他の症状の種類や程度は、人によってさまざま。病気が進行すると、少しずつ日常生活に支障を来すようになります。60代以降に発症することが多い一方、20代後半から50代に発症することも。65歳未満の場合、若年性アルツハイマー型認知症と診断されます。なお、日常生活に影響はなくても、軽度認知障害が見られる場合、その約50%は5年以内に認知症になる恐れがあります。早めに専門家による診断を受けることが大切です。

原因

脳の中に、アミロイドβタンパク質が異常にたまることが原因です。これによって脳神経細胞がダメージを受けて、脳の全体が少しずつ萎縮していくことでアルツハイマー型認知症が引き起こされます。中でも、大脳辺縁系の一部である記憶に関わる海馬から萎縮が始まるため、初期症状として物忘れが多くなることに。若年性アルツハイマー型認知症も脳の中に同様のタンパク質がたまることで症状が引き起こされますが、頭頂葉の萎縮が強いのが特徴です。なお、アルツハイマー型認知症の発症には加齢のほか、生活習慣や遺伝的要素も関連していると考えられています。

症状

初期症状として多いのは物忘れです。数分前の出来事を忘れてしまうなど、新しく経験したことを覚えられなくなります。また、時間や季節がわからなくなったり、簡単な計算や料理ができなくなったりすることも。人によって症状の種類や程度は異なりますが、緩やかに進行していくことがほとんどです。中期症状としては、自宅やトイレなどなじみのある場所がわからなくなるという症状が代表的。他には、「ものを盗まれた」といった妄想の出現をはじめ、ぼーっとしていたり、夜中に徘徊したりといったことがしばしば見られるようになります。中には、道に迷ってしまい警察に保護されるというケースも。抑うつや興奮、いらいら、暴力などの症状が出てくる人もいます。さらに悪化すると、言葉がわからなくなって会話が難しくなり、歩行困難など身体能力も奪われていきます。最後は寝たきりとなり、肺炎などの合併症を発症することも少なくありません。

検査・診断

まずは、問診による神経心理学検査を実施。患者本人への簡単な質問を通して、認知機能や記憶、実行機能などに異常がないかをチェックします。日常生活の様子など、患者家族からヒアリングした情報も診断材料の一つです。何らかの異常が疑われる場合は、CTや頭部MRIによる脳画像検査が行われます。アルツハイマー型認知症で強い萎縮が見られる海馬や頭頂葉をはじめ、脳全体に萎縮がないかを確認の上、診断していきます。さらに、必要に応じて脳の中の血流や代謝の機能を確認するための検査も実施。症状が進行している場合、それらの機能の低下が見られるためです。

治療

現時点では、アルツハイマー型認知症の根本的な治療法は見つかっていません。病気の診断がついたら、できるだけ症状を軽減し、進行を遅らせていくことが大切です。必要に応じて、脳の働きを改善させる抗認知症薬をはじめ、睡眠薬や精神安定剤、漢方薬などが処方されます。その他、ウォーキングや体操などの運動療法、音楽鑑賞や簡単な楽器演奏などの音楽療法が行われることもあります。

予防/治療後の注意

アルツハイマー型認知症の患者は「自分が病気である」ということを認識できず、日常生活でできないことが増えて、ストレスや不安を感じてしまうことも少なくありません。患者家族や周囲の人たちはできないことを指摘したり、責めたりするのではなく、患者を尊重し、その心に寄り添っていくことが大切になります。また、若年性アルツハイマー型認知症の場合、病気の発覚までに時間を要することも。周囲の人たちがいち早く気づいてあげることが症状の進行を遅らせることにもつながります。もし気になる症状があれば積極的に医療機関を受診しましょう。

独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター 副院長/認知症疾患医療センター長 松下 幸生 先生

こちらの記事の監修医師

独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター

副院長/認知症疾患医療センター長 松下 幸生 先生

1987年慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部精神神経学教室に入局。1988年国立療養所久里浜病院(現・国立病院機構久里浜医療センター)勤務。1993年米国国立衛生研究所(NIH)などでの勤務を経て、2011年より現職。専門は、認知症、アルコール依存症、ギャンブル障害。