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独立行政法人地域医療機能推進機構 JCHO 千葉病院 院長 室谷 典義 先生

こちらの記事の監修医師
独立行政法人地域医療機能推進機構 JCHO 千葉病院
院長 室谷 典義 先生

じんふぜん 腎不全

概要

腎不全とは、腎臓の機能が低下した状態をいいます。腎臓は、血液をろ過して尿を作り、老廃物や余分な水分、酸・電解質を体の外に排泄する役割を担っています。また、血液を作るホルモンを出したり、骨を維持するのに必要なビタミンDを活性化したりする働きもあります。腎不全になると、これらの働きが悪くなり、全身にさまざまな影響が出てきます。病気の進行パターンによって2種類に分かれ、急激に症状が進行する反面、適切に治療すれば回復可能な急性腎不全と、徐々に悪くなり、回復が見込めない慢性腎不全があります。腎機能が極端に落ちてしまうと、透析療法または腎移植を受けないと生存できなくなってしまいます。早めに医療機関を受診し、適切な治療や生活指導を受けてください。

原因

急性腎不全をもたらす原因には、下痢、出血、やけどなどによる急激な脱水、さまざまな原因による血圧低下、重症の感染症、腎結石をはじめとする尿が出なくなる病気などがあります。一方、慢性の腎不全をもたらす病気を慢性腎臓病(CKD)と呼びます。慢性腎臓病を引き起こす原因として最も多いのは糖尿病で、慢性腎臓病の35~40%を占め、次が高血圧で30%近くを占めています。ほかには、糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)、多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)などの腎臓の病気、加齢による腎臓の変化、尿路結石前立腺肥大などによる排尿困難、薬物性の腎障害、小児では慢性の腎盂腎炎や逆流性腎炎なども原因になります。7~8割の慢性腎臓病はもともと糖尿病、高血圧などの生活習慣病がベースとなっているため、腎臓の治療だけでなく、これらの治療や生活習慣改善が必要となります。

症状

急性腎不全の症状は、それを引き起こした原因による症状と腎機能低下による症状があります。原因による症状は出血、下痢、発熱などで、腎機能低下の症状として尿量の低下、むくみ、体重増加、食欲不振、吐き気などがあり、重症例では息切れ、胸の痛み、けいれんなどが出ることもあります。慢性腎不全は重症度によって症状の出方が違い、初めは無症状のことが多いのですが、だんだんと食欲低下、吐き気、疲れやすい、むくみ、体重減少、高血圧、蒼白、不眠、かゆみ、頻尿などの症状があらわれます。進行してさまざまな合併症が出ると、呼吸困難や著しい血圧上昇、激しい嘔吐、衰弱、けいれん、意識障害、致死的な不整脈など命に関わるような状態になってしまいます。

検査・診断

急性腎不全は血液検査の血清クレアチニンと血中尿素窒素の数値、尿量測定、尿検査、超音波検査などで診断します。慢性腎臓病は、老廃物を除去する糸球体という部位で1分間にどれぐらいの血液をろ過できるかを示す糸球体ろ過量(GFR)を目安として診断します。GFR測定は1日のうちに何度も飲水、点滴、検尿、採血を繰り返す大変な検査が必要でしたが、日本では血清クレアチニン値と年齢、性別、身長・体重から計算で推定する方法が確立したため、現在は血液検査だけで済むようになりました。この数値と、尿検査で測った尿中のタンパク質の量との組み合わせによって、慢性腎臓病になっているか、その進行度はどの程度であるかを診断します。また、急性、慢性にかかわらず、必要に応じて腎臓に針を刺し、組織を採取して調べる腎生検を行う場合もあります。この検査でわかるIgA腎症という病気は、扁桃腺の摘出手術とステロイド投与で改善する可能性があります。

治療

急性腎不全は適切に治療すれば、通常は腎機能が回復します。原因を特定し、薬物治療や食事療法を行い、場合によっては回復するまでの間、透析療法を行うこともあります。慢性腎臓病の治療は、大きく分けて2段階あります。できるだけ腎機能を落とさないように、薬による治療と食事療法を行う段階と、極端に機能が低下した腎臓に代わり、透析療法または腎移植によってその機能を肩代わりする段階です。進行予防治療では、血糖値や血圧を薬で厳格にコントロールするとともに、タンパク制限食を行うことが基本です。腎機能が健常人の15%を切った段階を末期腎不全といい、透析導入か腎移植を検討すべき時期です。透析には、透析施設で受ける血液透析と自宅で患者自身が行う腹膜透析があり、最近では施設の透析装置を自宅に設置する在宅血液透析という方法もあります。腎移植にも死体腎移植と生体腎移植があります。それぞれの方法には一長一短がありますので、病状だけでなく、ライフスタイルや価値観、家族のサポートなども総合的に判断して選択することが重要です。

予防/治療後の注意

まず、腎臓病にならないために、適度な食事と運動、血圧測定、肥満予防、こまめな水分補給などを心がけてください。慢性腎臓病になってしまったら、タンパク摂取量の制限のほか、食塩、カリウム、リンの摂取量、水分摂取量にも気を配らなければいけません。治療では腎機能に対する影響を考えながら薬を選び、血圧や血糖値を管理していきます。腎機能が悪化するとむくみやすくなりますが、大半は塩分の摂取過多が原因です。安易に利尿剤を使用するとかえって腎臓に負担がかかり、腎臓の寿命を縮めてしまいます。そのため、健康診断などで腎機能の悪化が指摘されたら早めに医療機関を受診してください。かかりつけ医から、病院の腎臓を専門とする医師を紹介してもらい、病院で精密検査や食事指導を受け、普段はかかりつけ医に診てもらう形が理想的です。

独立行政法人地域医療機能推進機構 JCHO 千葉病院 院長 室谷 典義 先生

こちらの記事の監修医師

独立行政法人地域医療機能推進機構 JCHO 千葉病院

院長 室谷 典義 先生

東京大学薬学部製薬科学科卒業後、千葉大学医学部進学過程入学。卒業後、千葉大学医学部第二外科に入局。消化器外科において手術などを担当する。1991年に当時の千葉社会保険病院(現・JCHO千葉病院)に赴任後は、透析・外科にて手術と管理を担当している。日本透析医学会透析専門医、千葉県透析研究会会長も務める。