全国のドクター9,229人の想いを取材
クリニック・病院 158,508件の情報を掲載(2024年5月29日現在)

医師会活動レポート 神戸市医師会の取り組み インタビュー&医師会活動トピックス 医師会活動レポート 神戸市医師会の取り組み インタビュー&医師会活動トピックス

(公開日2020年11月6日)

1956年4月、神戸市内の各区医師会が統合され、設立した神戸市医師会。市民の健康と医療を守る中心的な役割を担っています。行政や地域の医療機関、諸団体と連携を取りながら、健康増進や疾病予防、子育て支援の対策も積極的に実践する、同会会長の置塩隆先生と副会長の村岡章弘先生に話を聞きました。

スペシャルインタビュー

神戸市医師会長
置塩 隆 先生

神戸市生まれ。1976年徳島大学医学部卒業。神戸大学医学部附属病院、三木市立三木市民病院、公立日高病院などを経て、1987年より置塩医院を継承。2006年神戸市中央区医師会長、2014年より現職。

神戸市医師会副会長
村岡 章弘 先生

大阪市生まれ。1987年神戸大学医学部卒業。1994年同大学大学院医学研究科修了。同大学医学部附属病院、加古川中央市民病院、須磨赤十字病院などを経て、1998年開業。2006年神戸市医師会理事、2016年より現職。

市民の「笑顔と健康」を支えるため
行政との討議を重ね医療の向上を図る

神戸市医師会では行政とタイアップした数多くの事業を手がけています。

置塩会長: 神戸市は誰もが健康になれるまち「健康創造都市KOBE」を推進しています。神戸市医師会も行政と協働し、積極的に小児救急の充実化や認知症対策、介護予防などさまざまな活動を行っています。新型コロナウイルス感染症への対応では、医師会からの働きかけに応える形で行政から委託を受けて「神戸市新型コロナウイルス検査センター」を開設しました。地域の診療所で感染が疑われた患者がいた場合、保健所を通さずに診療所の医師が医師会へ申し込みをすることでPCR検査が可能になったのです。このように、医師会と行政がタッグを組んで地域に必要な対策をスピーディーに実現してきました。それはこれまで築いてきた行政との関係性があってこそできたことだと思っています。市民の健康を思う同志として、行政とは活発な意見を交わせる間柄です。素早い決断と対処の実行や、市民が安心できる医療の提供の実現にもつながっています。

超高齢社会における対策についてはいかがでしょうか?

村岡副会長: 認知症になっても安心して暮らせるまちをめざし、神戸市では新しい認知症支援「神戸モデル」がスタートしました。当会も全面的に協力するこの取り組みの大きな特徴は、診断助成制度と事故救済制度です。地域の医院で診察を受け、認知症の疑いがあれば専門の医療機関で精密検査を行う2段階の診断スタイルを採用しています。65歳以上の神戸市民なら自己負担なく受診でき、認知症と診断された場合は賠償責任保険の保険料を神戸市が負担。認知症の方が事故などで賠償責任を負った際には、最高2億円の補償が受けられます。認知症の早期受診の促進に加え、巨額の損害賠償を求められた家族が苦しむことがないようにしたいですからね。神戸モデルが全国の基本になればうれしいです。

災害医療体制の整備も積極的に行っていますね。

置塩会長: 25年前に阪神・淡路大震災を経験し、当会はまちの復興とともに歩んできました。2009年には神戸市内で国内初となる新型インフルエンザ患者が確認されたこともあり、常に高い危機管理意識を持って災害医療対策、感染症対策に取り組んでいることが特徴。今後も起こり得る大規模災害に備え、「東南海・南海地震における津波等への災害対策会議」を定期的に開催し、行政、各区の医師会、歯科医師会、薬剤師会などとともに災害救急医療マニュアルの整備も進めているところです。また市内だけでなく、大災害発生時には全国の医師会同士が支援し合うシステムを当会が提案しています。JMAT(日本医師会災害医療チーム)においても、さまざまな面で阪神・淡路大震災の教訓が生かされています。

最後に、今後の展望について教えてください。

置塩会長: 今の時代は、徹底した医療を受け続けるか、もしくは最期までその人らしく生きるか、人生の最終段階における医療の選択肢は多様化しています。これからの医療は命を守ると同時に、その人の尊厳を守ることにつながる意思決定の支援も求められており、そこに向けた法整備を進めていく必要があるのです。当会から神戸市に、神戸市医師会「神戸市意思決定支援プロジェクト」を提案するなど、人生の最終段階における意思決定支援の在り方について活発に議論しながら、この重要なテーマに向き合っています。

置塩会長からのメッセージ

現在、神戸市医師会には2,700人を超える会員が在籍しています。皆さんのお住まいの地域で自分のかかりつけ医を見つけていただき、病気のことだけでなく、医療制度や介護制度でわからないこと、困ったことがあれば気軽に相談してほしいですね。

取材を終えて。取材に同席してくださった、神戸市医師会の岡田先生(右)、是則先生(左)と撮影

医師会活動トピックス

神戸在宅医療塾

同会は在宅医療の裾野を広げることを目的に、「神戸在宅医療塾」を主催。同会内に地域包括ケア委員会を立ち上げ、これから在宅医療を始める医師や在宅医療を担う医師を対象に、在宅医療の現状を学ぶことを目的にした特別講座を、神戸大学との合同主催で定期的に開催している。在宅医療の経験が豊富な医師を招き、在宅医療の現場の知識を講演してもらい、各領域の専門医師によるレクチャー会が行われる。地域全体で在宅医療に関するスキルアップを図っている。緩和ケア、摂食・嚥下、小児在宅医療、神経疾患など、毎回異なるテーマを設定。貴重な情報や経験談が聞けるとあって、毎回多くの医師が参加している。

市民健康大学講座

健康に関する知識を深め、健康増進を図ることを目的に、市民を対象とした「市民健康大学講座」を実施。18 歳以上の神戸市在住または在勤の人なら誰でも受講でき、一定数の講座に出席すると修了証が授与される。場所は神戸市医師会館本館4階ホールで、受講料は1人2000円。申し込みは神戸市医師会へ電話で。

小児救急対応

夜間・休日の子どもの急な症状に対応するため、西部エリアに「神戸市医師会西部休日急病診療所」を設置し小児科の初期救急医療を実施。東部エリアではHAT神戸に、同会と神戸市、神戸大学などが共同運営する「神戸こども初期急病センター」があり、365日24時間の救急外来に対応している。また夜間や休日の一次救急の対応として、各診療科の医師会員が交替で急病診療所での診療にあたっている。

感染症対策

2020年1月末に「新型コロナウイルス感染症対策本部」を立ち上げ、新しい情報を医師会会員に発信している。同年6月には「神戸市新型コロナウイルス検査センター」を開設。医師がボックスの中から患者の検体を採取するウォークスルー方式のPCR検査を開始し、迅速かつ安全性の高い検査体制を整えた。検査は医師会員が交代で実施。今後、検査ブースの増加や唾液検査の導入も視野に入れていくという。

ドクターズ・ファイル トップページへ戻る