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国家公務員共済組合連合会 大手前病院 脳神経内科部長 脳神経センター長 須貝 文宣 先生

こちらの記事の監修医師
国家公務員共済組合連合会 大手前病院
脳神経内科部長 脳神経センター長 須貝 文宣 先生

じすきねじあジスキネジア

概要

ジスキネジアとは、自分の意志とは関係なく、体の一部が勝手に不規則で異様な動きする現象(不随意運動の一種)を指します。主に口唇や舌、顔、手足など特定の筋肉に出現し、自分の意志で止めるのは難しく、止めてもすぐにまた起きてしまうことが特徴です。脳や神経の病気の一症状として出現する場合と、薬の副作用として出現する場合がありますが、多くは薬の副作用で出現するとされています。初期のジスキネジアは日常生活に大きな支障を来すものではありませんが、だんだん重症化して、仕事や生活に不自由を生じることもありますので、気づいたら早めに主治医に相談するようにしましょう。

原因

ジスキネジアは、脳内の神経伝達物質であるドパミンによる運動の調節機能がうまく働かなくなって起きると考えられています。その原因は主に薬の副作用と脳・神経の疾患です。原因となる薬では、ドパミンと関連する抗精神病薬、ドパミンを補充するパーキンソン病治療薬(レボドパ製剤など)が知られています。抗精神病薬の副作用で起きる場合は、ある程度長く服用してから起きるため、「遅発性ジスキネジア」と呼ばれます。統合失調症てんかん双極性障害などで抗精神病薬を服用している人でも、3割程度ジスキネジアが見られるという報告もあります。一方、パーキンソン病患者もジスキネジアを発症する頻度が高く、治療薬を飲み始めて半年から4年ほどで発症することが多いとされています。また、パーキンソン病や精神疾患がなくても、高齢者や糖尿病患者などではジスキネジアが多く見られますが、その原因は解明されていません。

症状

ジスキネジアの症状でよく見られるのは、繰り返し口をすぼめる、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせる、口を突き出す、歯を食いしばる、目を閉じてなかなか開けない、顔をしかめる、などの口腔の中や周囲、顔の表情筋に関する症状です。また、手が勝手に不規則に動く、手指を繰り返し曲げ伸ばしする、立ったり座ったり同じ動きを繰り返す、足指がくねくね動く、体幹がくねくね動いてじっとしていられない、といった四肢や体幹に症状が見られることも。激しい動きが長時間に続くと疲労も激しくなり、無理に抑えようとすると悪化する場合もあります。

検査・診断

パーキンソン病治療薬や抗精神病薬を服用している場合は、ジスキネジアに似た症状も含めて、どのような運動障害の症状がどのようなタイミングで出ているのかを、問診や症状観察によって詳しく調べます。必要に応じて血液検査で血液中のドパミンの濃度を測定し、症状の出方と比較して原因を探っていきます。パーキンソン病患者では、血液中の薬の量が多いときにジスキネジアが起きるのか、薬の効き始めと切れかけに起きるのか、薬が切れてから起きるのかという症状出現時期からタイプを見極めることが重要で、そのタイプによって対応が異なります。

治療

薬が原因である場合は、それぞれの患者の病状や副作用を総合的に判断し、原因となる薬の中止、用量や服用回数の調整、別の薬に変更、別の薬と併用して用量を減らすといった対策を実施します。特に若年で発症したパーキンソン病では、早期から薬剤性ジスキネジアを併発することが多いため、標準的な治療であるレボドパ製剤の使用をできるだけ避けたり、少量に抑えたりすることも考慮します。このような薬の調整でコントロールしきれない症例には、脳手術(電気刺激による深部脳刺激療法など)を併用してジスキネジアを抑制する方法も行われるようになっています。また抗精神病薬では、非定型抗精神病薬と呼ばれる薬が、ジスキネジアが出現しにくいとされています。さらに近い将来、遅発性ジスキネジアの適応を持つ新薬の登場も期待されます。

予防/治療後の注意

ジスキネジアは軽症のうちは見過ごされていることも多いので、パーキンソン病治療薬や抗精神薬の副作用でこのような症状が出る可能性を意識し、患者や家族は疑わしい症状に気づいたらできるだけ早く主治医に相談し、必要な場合は脳神経内科の医師の診察を受けましょう。症状出現時に動画を撮影し医師に見せるのも有用です。自己判断で薬を中断すれば病気の症状が悪化することもありますから、必ず主治医に相談してください。

国家公務員共済組合連合会 大手前病院 脳神経内科部長 脳神経センター長 須貝 文宣 先生

こちらの記事の監修医師

国家公務員共済組合連合会 大手前病院

脳神経内科部長 脳神経センター長 須貝 文宣 先生

1995年大阪大学医学部卒業後、同大学の神経内科へ入局。関西労災病院や大阪大学医学部附属病院にて豊富な臨床経験を積む。大手前病院では脳神経内科部長、脳神経センター長、パーキンソン病センター長を兼任する。脳卒中からパーキンソン病まで、脳神経内科疾患全般に幅広く対応。日本神経学会神経内科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医。医学博士。