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順天堂大学医学部附属順天堂医院 麻酔科・ペインクリニック 井関 雅子 先生

こちらの記事の監修医師
順天堂大学医学部附属順天堂医院
麻酔科・ペインクリニック 井関 雅子 先生

まんせいとうつう慢性疼痛

概要

慢性疼痛は、3ヵ月以上続く痛みのことです。けがや病気をしたとき人間は痛みを感じますが、通常は傷や病気が治るにつれて痛みも改善されます。これを急性疼痛といいます。しかし、もともとのけがや病気が治っているのに痛みが続いたり、一度痛みが引いた後でぶり返したりすることがあります。また、関節炎、糖尿病線維筋痛症などの慢性疾患や治らないけがに伴う痛み、がん治療に伴う痛み、直接的な原因がわからない痛みが長く続くこともあります。それらの痛みを総称して慢性疼痛と呼びます。身体的な要因だけでなく、心理的・社会的要因も加わって痛みが長期化すると考えられています。

原因

慢性疼痛には、直接的な原因がわかっているものと、いないものがあります。慢性疼痛を引き起こす直接の原因には、外傷、手術による傷、神経障害、骨や筋肉の変形や炎症、糖尿病や血管の病気などがありますが、身体的な組織損傷がなくても、あるいは損傷は治っていても慢性的な痛みを感じることがあります。痛みは、損傷した組織から出た信号が神経を介して脳に伝わり、脳が認識することで感じるものです。そのシステムのどこかに障害が起き、さらに人間関係や仕事、学業などのストレスが加わることで、脳がいつまでも痛みを感じたり、過去の痛みを思い出したりするのではないかと考えられています。また、少し専門的になりますが、局所で発痛物質が産生されて痛みや刺激を受け取る、侵害受容器という部位が興奮して、脊髄や脳へ痛みが伝わる「侵害受容性疼痛」、侵害受容器が関与せず、神経の損傷や変性が発生する病態や疾患による「神経障害性疼痛」の他に、現在では、原因不明とされてきた痛みを「痛覚変調性疼痛」として定義するようになり、線維筋痛症もその一部ではないかと考えられています。

症状

慢性疼痛に共通する症状は3ヵ月以上にわたって続く痛みや、再発を繰り返す痛みですが、痛みが出現する部位や程度は人によってさまざまです。腰痛、関節痛など運動器の痛みをはじめ、頭痛、顔面・口腔痛、神経痛、内臓痛などが代表的ですが、局所的な痛みだけではなく、睡眠障害、食欲減退、味覚減退、体重減少、抑うつ、不安などの症状を伴うこともあります。線維筋痛症では、全身の広い範囲の痛みとこわばりが出て、激しい疲労感、不眠、頭痛やうつなども伴います。

検査・診断

慢性疼痛の診断では、まず、直接的な原因となった外傷や疾患があるのかどうかを問診や病歴により確かめ、痛みの出ている部位を視診、触診、聴診で診察した後、痛みの評価を行い、画像検査、血液検査などで身体組織に異常が見られないかを調べます。この段階で、患者自身が気づいていない、新たな原因疾患が見つかる場合もあります。それに加えて、心理的・社会的要因が慢性疼痛悪化の要因となることも多いため、うつや不安感などの心理状態、睡眠や食事、運動などの日常生活、家族、仕事など社会的な背景も把握して総合的に診断します。

治療

慢性疼痛に対する治療には、薬物療法、神経ブロック療法、心理的アプローチ、リハビリテーションなどがあります。薬物療法では、非ステロイド性消炎鎮痛薬やアセトアミノフェンといった一般的な鎮痛薬のほかに、各種抗うつ薬、抗てんかん薬、漢方薬などの薬、強い痛みには適切な対象の患者に期間を限定した上でオピオイドと呼ばれる鎮痛薬が、痛みのある部位や程度に応じて使用されます。脊椎、腰椎などの痛み、帯状疱疹後神経痛などには神経ブロック療法が用いられることもあります。また、心理的要因が痛みの長期化や再発に影響していると判断された場合は、心理教育、行動療法、認知行動療法などを実施することもあります。さらに、慢性腰痛、変形性膝関節症、慢性頸部痛などには運動療法が有用となるため、整形外科、内科、麻酔科、精神科、リハビリテーション科などが協力して、各種の治療を総合的に行う集学的治療も実施され始めています。

予防/治療後の注意

慢性疼痛では、痛いからといって体を動かさなくなると、筋肉が衰えて身体機能が極度に低下します。痛みを気にしすぎると心理面にも悪い影響が出てくることもあります。痛みがあっても、ある程度のことができるという経験をすると、今後の生活に向けて自信が持てるようになるでしょう。医師の指示に従って、睡眠、食事、運動などを規則正しく行う生活を心がけてください。

順天堂大学医学部附属順天堂医院 麻酔科・ペインクリニック 井関 雅子 先生

こちらの記事の監修医師

順天堂大学医学部附属順天堂医院

麻酔科・ペインクリニック 井関 雅子 先生

日本専門医機構麻酔科専門医、日本ペインクリニック学会ペインクリニック専門医、日本ペインクリニック学会事務局長、日本疼痛学会理事、日本慢性疼痛学会理事、日本運動器疼痛学会副理事長、日本ニューロモデュレーション学会理事、日本麻酔科学会代議員。患者を第一に考えた痛みに寄り添う治療をしている。