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東京都済生会向島病院 脳神経内科部長 大野 英樹 先生

こちらの記事の監修医師
東京都済生会向島病院
脳神経内科部長 大野 英樹 先生

ずいまくえん髄膜炎

概要

頭蓋骨と脳の間には髄膜という膜があり、脳を包み込んで保護する役割を持っている。この髄膜に細菌やウイルス、結核菌、真菌(カビ)などが感染し、炎症を起こした状態を髄膜炎という。時にリウマチや膠原病などの自己免疫疾患や、がんが原因で起こることもある。種類は大きく分けて2つあり、細菌感染によるものを「細菌性髄膜炎(化膿性髄膜炎)」、それ以外の要因によるものを「無菌性髄膜炎」と呼ぶ。細菌性髄膜炎は無菌性髄膜炎に比べて死亡率が高く、治癒したとしても後遺症が残りやすいといわれる。特に小さな子どもは注意が必要な病気だ。

原因

細菌性髄膜炎の原因となる菌は年齢や、発症のきっかけとなる疾患、合併症によって異なり、B群レンサ球菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、リステリア菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌、髄膜炎菌などさまざまである。別の臓器器官での感染を素因として、血液を通して髄膜に炎症を起こすことで発症することが多い。新生児の場合は、生まれてくるときに母親の産道から感染する可能性も考えられている。無菌性髄膜炎の原因としては、手足口病を発症させるエンテロウイルス、プール熱の原因となるアデノウイルス、マイコプラズマ、寄生虫、がんなどがある。中でもエンテロウイルスによるものが多く、幼児期から学童期にかけての子どもに多く見られる。ウイルスや寄生虫の場合、感染経路は原因ごとに異なり、接触感染、飛沫感染、食べ物、動物との接触などが挙げられる。

症状

頭痛、発熱、嘔吐、首の硬直などが特徴的な症状で、炎症が脳まで達すると意識障害やけいれんが起こる。また、炎症が起きている脳の部位によって、言葉が出にくくなる、空間を把握する能力に障害が出るといった症状が見られることもある。新生児や乳児の場合は、不機嫌になったり、母乳やミルクの飲みが悪くなったりすることもある。髄膜炎の症状は出始めの様子が風邪と似ていることから、見極めが難しい。しかし、迅速に治療を行わないと命に関わることもあり、特に細菌性の場合は症状が急速に悪化することが多く、救急疾患の1つである。

検査・診断

まず診察で血圧や脈拍、呼吸、意識、手足の状態などを確認するほか、髄膜炎の特徴的な症状である首の後ろの硬直がないかどうかを調べる。確定診断は、血液検査と髄液検査をもとになされる。髄液検査は、腰の背骨の間に細い針を入れて髄液を取り出す腰椎穿刺という方法で行われ、髄液中の細胞の数、タンパク質、糖などの成分を調べることで、髄膜に炎症が起こっているかどうかや、細菌性、結核性、真菌性、ウイルス性の判別を行う。ただし、脳浮腫や脳圧迫病変がある場合などは行えないため、あらかじめ頭部のCT検査やMRI検査を行う。

治療

原因が細菌である場合は、種類に応じた抗菌薬が使われる。ウイルス性の場合は、HIVウイルス、ヘルペスウイルスなど抗ウイルス薬が効くものに関しては薬物療法を行い、それ以外のものは水分補給などで体力の回復を促しながら症状が軽減するのを待つ。また、結核性の場合は抗結核薬、真菌性の場合は真菌の種類に合わせた薬を使用する。自己免疫疾患によるものに対しては、免疫を抑制する効果があるステロイドホルモン、免疫抑制剤を投与する。そしてがんが原因の場合は、薬で症状を緩和しながら、同時にがんの治療も進めていく。

予防/治療後の注意

細菌やウイルスの種類によっては、ワクチンを接種することで予防できる。肺炎球菌やHib(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型)、インフルエンザウイルスに関しては定期接種として行われており、おたふく風邪の原因となるムンプスウイルスや髄膜炎菌は任意接種で受けられる。海外出張や留学などで髄膜炎の原因となる細菌やウイルスが流行している地域に行く場合や、人がたくさん集まる場所での活動を控えている場合は、予防接種を受けたかどうか確認し、不安がある場合は医師に相談する。

東京都済生会向島病院 脳神経内科部長 大野 英樹 先生

こちらの記事の監修医師

東京都済生会向島病院

脳神経内科部長 大野 英樹 先生

脳神経内科を専門分野とし、脳卒中診療のスペシャリストであるとともに、末梢神経疾患にも精通。日本神経学会神経内科専門医、日本内科学会総合内科専門医。